週刊アクセス
 
 
平成26年1月31日 第686号
 
     
  今週のヘッドライン  
  日本の土地の権利感覚には、固有の歴史あり
 − 税金が所有を反映? 借地権や固定資産税統一化の背景とは?
 
     
日本の土地の権利感覚には、固有の歴史あり
 − 税金が所有を反映? 借地権や固定資産税統一化の背景とは?

   
 

いわせてんか!  不動産鑑定士は、何かと忙しい時期、今回は、知り合いの税理士さんと行政書士さんから別々に、興味のある関連した話を聞いた雑感である。税理士さんからは日本の「借地権」について、行政書士さんからは「日本法制史」についてであった。
 気になったきっかけは、本コラムでご紹介した固定資産税の最高裁判例である。“統一的な評価基準で公平な評価をうけるのが、地方税法の趣旨である”と述べた判例。一方で、市町村の基幹税である固定資産税は、地域住民のくらしのための原資である。税金を納める、いや、“とられる”とよくいうが、地方独自の税源を、地方税法という国の法律で規定しているのも、なにか不自然である。
 「借地権」はバブル期に大きな交換価値を持った不動産の権利。相続税の「借地権割合」が国税局によって指定され、これを更地価格から控除したものが貸主の「底地」として課税資産となる。税理士さん曰く、最近この権利自体があるのかないのかわからないが、そもそも、これはどうやってできてきたのか?という疑問だった。
 それを考えている最中に、行政書士さんの「日本法制史」の話にぶつかる。古来、日本では税金を支払う代わりに土地の所有権を認めてもらっていたフシがある。もちろん、これを売買することはあまりなく、田畑や武家屋敷、商家といった用途は厳しく守られており、そこでは利用権としての性格が強い。地租改正が混乱なく行われたのも、諸外国から見れば驚きだし、その感覚は日本人固有なのかもしれない。
 そうすると、長年の土地の税金支払いと所有の関係を基礎として、明治以後の急速な工業化による都市への人口集中、土地の不足、戦後の農地解放、高度成長の列島改造、一億総不動産屋化…どうも「借地権」や固定資産税の全国統一化は、このあたりに不思議がありそうだ。
 不動産(土地)の価格形成をみるのが生業の鑑定士だが、案外、その土地に埋まっている歴史は見過ごしているのかもしれない。もう少し、掘り下げてみたいと思っている課題である。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成26年1月31日号・完―  
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