週刊アクセス
 
 
平成12年 6月 7日 第9号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
<衆院解散>13日告示 25日投票
贈与税一考 連年贈与はトータル贈与金額で課税される
不動産各社H12.3決算出揃う 本業回復利益で新会計基準前向き処理
 
     
     
  <衆院解散>13日告示 25日投票  
  [日経新聞 6月2日]   
   森喜朗首相は2日午後の衆院本会議の冒頭で、衆院を解散した。続く臨時閣議で第42回衆院選の日程を「13日公示―25日投票」と正式決定、選挙戦が事実上スタートした。
いわせてんか!
 また、騒々しい選挙戦が始まる。首相の言うところの「神の国」はこの先どの方向へ進むのか、この結果によって短期的な方向性は決まる。
 しかしながら毎度の事ながら、この国の政治指導者層の顔ぶれをみると、残念ながら人材の貧困を感じる。今となっては懐かしい「55年態勢」の下で、この国の統治は、実質的に優秀な官僚組織に丸投げしておけば事足りていたが、従来の手法、制度では制御しきれない諸問題―経済再建、保健・年金財政危機、巨額の財政赤字、少子・高齢化等々―を前にして、彼らにこの国の将来を委ねるには、かなり不安を覚えるのは寸評子だけではなかろう。
 かって1980年代中頃のアメリカ経済は、財政、国際収支の巨額の「双子の赤字」に悩んでいたが、その後の冷戦の終結、それに続くIT革命等の「神風」のおかげで現在絶好調を謳歌している。翻ってこの国の現状をみてみると、国だけで360兆円を請える借金を抱え、漸く改善の兆しは見えてきたものの、経済は依然再建途上にあるといった甚だ心もとない状況にある。ただアメリカと異なるのは、基軸通貨国でない分、世界経済への流動性供給に苦労することはないというだけである。
 この閉塞した状況を打開する経路は、巷間いわれているように規制を緩和し競争を促進させ、経済を上昇軌道に乗せた上で財政再建を図るという筋道になるが、その過程においては国民に相当の痛みを強いることが予想される。しかし、いざ選挙となると、与野党とも選挙民の耳障りの良い政策を掲げるだけで、結局根本的な問題は先送りするというのがいつものパターンである。
 J.M.ケインズは為政者の経済政策に関して「ハーヴェイロードの前提」を設け、またK.J.アローは、・・・・・・民主的国家においては独裁的決定等の非合理的前提を設けない限り、社会全般についての最適厚生水準を保証する社会的厚生関数は存在し得ないことを明らかにした。
 この国が果たして真にアローのいう「民主的国家」であるかどうかには異論があるにしても、必要とするのは右顧左眄することなく、問題に立ち向かおうとする強靭な意志と指導力であり、そのため政権担当者には当然ながら指導者としての資質が要求されるのである。それなしには、たとえ「神の国」であっても「神風」は吹かない。
 この国がそのふさわしい「選良」によって、より良い方向に進むことを期待してやまない。


 
  贈与税一考 連年贈与はトータル贈与金額で課税される  
  (週間税務通信 H12.6.5号)   
   1000万円贈与したい場合、年間100万円・10年で贈与すれば、基礎控除60万円を利用して少ない贈与税額で済む。しかし、これが当初から予定されているとすれば(贈与契約あり、毎年100万円きっかり等)、最初の年に1000万円全額の贈与があったものとみなされる可能性がある。この場合、「有期定期金」に準じて(将来の贈与分については割引率を乗じる)贈与金額の評価が行われることとなる。
いわせてんか!
 贈与税率は高い。相続税を逃れて生前に資産移転をするのを阻むためである。子・孫等に毎年こつこつ基礎控除プラスいくらかの金銭贈与をしている人も多い。どの段階で「連年贈与」ととられるかは定かではないが、あまり"キレイな"数字を並べていると当局の目に触れるらしい。一考の余地があろう。
 提案であるが、「結婚20年・妻へのプレゼント贈与」特例は必ず利用したい。基礎控除を含め2060万円まで贈与税がかからない。現居住家屋の贈与が一般的であるが、昨今の中古住宅市場の低迷は強烈であり、特に中高級中古住宅につき固定資産税評価額を下回る物件がある。鑑定士等の評価で節税の余地ありである。


 
不動産各社H12.3決算出揃う 本業回復利益で新会計基準前向き処理
(住宅新報 H12.6.16号)   
 既報「販売用不動産・強制評価減」につき、不動産各社はマンション分譲等の本業回復による利益を活用して前向きに処理を行った。単体決算で特別損失は三井不動産・1432億円を筆頭に、住友不動産・806億円、三菱地所・636億円、リクルートコスモス・377億円、東急不動産・328億円と続いた。
いわせてんか!
 三井不、東急不など大方は「含み損処理にメドがついた」としているが、ごく一部を除き、地価はまだ下げ止まっていない。広大地が多い大手企業にとって、市場放出の困難性からも、評価減は毎年必要になる。引当金、評価減等の計上は有効利用を先送りし、それをする能力がないことを開示しているようなものだ。全不動産棚卸評価は当然として、あらたな市場を創出するぐらいの意気込みで積極的に取り組んでいただきたい。
   
 
   
 

 
   ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。  
 
 
  ―平成12年 6月 7日号・完―  
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