週刊アクセス
 
 
平成13年3月28日 第49号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
平成13年・地価公示特集
 
     
     
  地価公示、住宅地−4.2%、商業地−7.5%で10年連続下落  
  (Housing TIMES 2001.3.22)  
 
 平成13年1月1日時点の全国の地価を表す地価公示価格が3月22日、国土交通省より発表された。全国の地価変動率は、住宅地が前年比−4.2%、商業地が同−7.5%となり、ともに10年連続の下落となった。
 同省の発表したデータによると、全国的には下落傾向は続いているものの、大都市圏の下落幅は縮小。利便性、収益性による地価の二極化が進行して、都心部を中心に地価が上昇に転じた地点が増えたのが特徴としている。
 地域別に見ると、東京圏の住宅地は−5.8%(前年−6.8%)、商業地は−8.0%(同−9.6%)、大阪圏の住宅地は−6.7%(同−6.1%)、商業地は−11.0%(同−11.3%)、名古屋圏の住宅地は‐1.9%(同−1.8%)、商業地は−5.6%(同−7.3%)、その他の地方の住宅地は−2.8%(同−2.3%)、商業地は−7.0%(同−7.0%)だった
 住宅地は都心部での職住接近を求めたいわゆる「都心回帰現象」から新築マンションを中心に需要が堅調だった一方で、郊外の通勤遠隔地では利便性の比較感から地価の下落に結びついている。商業地は、特に東京都区部都心部でIT関連、外資系企業などによる根強いオフィス需要が顕在化したこともあり、地価が上昇もしくは横ばいとなった地点が増加した。

                           (詳しくは同省・土地総合情報ライブラリーへ )





いわせてんか!〜 その1 〜

 21世紀になって初めての地価公示が発表となった。蓋を開けてみれば10年連続の下落。ただし東京都区部では住宅地・商業地とも上昇ないし横ばいの地点もみられ、東京と地方及び都心と郊外、さらには都心においても収益を生み出す土地とそうでない土地との地価の「二極化」がキーワードである。
 翻って大阪圏である。大阪圏は、住宅地・商業地とも依然としてすべてのポイントで下落している。住宅地は、奈良県では下落幅が縮小したが、それ以外の地域では下落幅が拡大した。特に総額の張る阪神間の戸建住宅地の下落率が大きい
 また、下落率上位地点には名を連ねていないが、郊外のニュータウンの下落率が大きいのも特徴である。
 だとすれば、郊外のニュータウン等は「価格が下がった今が買い時か?」ということになるが、これは個人の価値観の違い等あるので一概には言えないが、単価ベースで下がったとは云うものの画地規模が大きいニュータウンでは上ものを含めた総額ベースではまだそこそこするので、需要が低迷している今、より需要者サイドの求める価格へと収斂していくのではないだろうか。
 商業地は、半数以上の地域で下落幅が縮小したが、兵庫県ではすべての地域で下落幅が拡大した。大阪圏の商業地下落率トップは大阪市中央区南船場の堺筋沿いの▲21.9%、続いて同区谷町6丁目の谷町筋沿いの▲21.4%となっており、大阪市内商業地の平均変動率は▲13.6%、神戸市内商業地の平均変動率は▲11.5%である。殊に大阪市内の商業地に関しては、供給圧力は比較的強いにも拘わらず、需要は依然として低迷したままであることから、今後とも厳しい状況が続くものと思われる。


 
  いわせてんか!〜 その2 〜   
 今年の地価公示は、JR大阪駅から50キロ圏内の大阪圏で住宅地、商業地とも10年連続の下落となった。大阪圏の商業地でトップの下落率を記録したのは、記事の如く中央区南船場2丁目の▲21.9%で、7位までは大阪市中央区が占める結果となった。
 有名ブランド店が軒を連ね、比較的競争力がある心斎橋周辺の商業地も10%を超える高い下落率となった。一方、東京では銀座などの都心で一部上昇している。大阪圏が厳しいのは、大阪の企業が相次いで首都圏に移転した影響であるとの分析もあるが、今後も金融機関などの企業の合併、リストラなどに伴うオフィスの統廃合等で、さらに下落することが予測される。




いわせてんか!
 〜 その3 〜
 平成13年度地価公示では、地価の二極化をより明確に差し示す結果となった。商業地では収益性、住宅地では利便性、快適性を十分に満足させ得る物件は、首都圏、地方都市の分け隔てなく需要が見込まれることの証である。したがって必ずしも地価下落に悲観し、土地不要論を唱える必要はない。キーワードは有効活用である。不動産を生かすも殺すも、それを活用する人によりけりである。特に、土地は全ての国民の生活と活動とに欠くことのできない基盤であることを忘れてはならない。





いわせてんか! 〜 その4 〜
 地価公示は、全国31000地点につき、土地鑑定委員会が2人以上の不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って毎年1回1月1日時点の定点観測を行っている制度である(地価公示制度の概要平成13年地価公示の実施状況)。土地基本法第16条における「公的土地評価の適正化」の趣旨に沿って、相続税・固定資産税路線価のベースにもなっており、その重要度は高い。
 この公示は、「時系列的」「地域的」「種類別」等様々な切り口で分析することができる。そこからは、新たな傾向を窺い知ることができるだろう。地価を形成する要因は常に変動しており、最近は要因の中心となりつつある「精緻な市場分析」を含め、これを的確に捉えるツールのひとつとして有用である。

 



 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。
           
 
  ―平成13年3月28日号・完―  
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