週刊アクセス
 
 
平成13年5月30日 第58号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
都民の地価意識、8割がなお下落希望
相続税「借地権割合」 地価下落で見直しの機運
生まれ変われるか大阪高度商業地域
     リバー産業 「無印マンション」販売
 
     
     
  都民の地価意識、8割がなお下落希望  
  (住宅新報 2001.6.8号)  
 
 不動産デフレの歯止め策を求める声が高まるなか、東京都民の8割が地価下落を支持していることが民間調査機関の三友システム不動産金融研究所(東京都新宿区、井上明義代表)の意識調査で分かった。
 「まだ高すぎる」「税負担が軽減される」などが地価値下がりを支持する理由。「所有不動産の資産価値が高まる」「経済を活性化する」などを理由とした値上がり支持は2割にとどまった。
 同調査は4月に実施、調査対象を20〜60歳代の5段階に分け、男女500人ずつ(合計1,000人)に地価の「値上がり・値下がり希望」を二者択一形式で聞いた。回答者の構成は、持ち家45%、賃貸34%で、将来相続を受ける予定を加えた「広義の持ち家層」は63%。
 値下がり希望は79%で、1年前より1ポイント増えた。女性の80%、男性の78%が下落を支持。賃貸居住者の97%、持ち家層でも66%が値下がりを希望。年代別では30代までの若い層の90%強、年収別では500万円未満の93%が下落を支持した。
 値下がり希望の理由(以下、複数回答)は「まだ高すぎる」(23%)、「相続税・固定資産税・取得税が軽減される」(17%)、「安い方がよい」(17%)、「土地が購入しやすくなる」(16%)、「賃借料の負担が軽減される」(11%)など。
 一方、値上がり希望は21%。男性の22%、女性の20%、持ち家層の34%、年代別では50代の37%、年収1,500万円以上の82%がそれぞれ上昇を支持した。 値上がり希望の理由は「所有不動産の資産価値が高まる」(39%)、「所有不動産の資産価値が下がるのがいや」(18%)、「経済が活性化する」(15%)、「金融システムを救済できる」(13%)など。
 なお、職種別で値上がり希望が高いのは個人経営45%、金融・不動産業40%。



いわせてんか! 将来の地価動向を正確に予測することは、我々不動産鑑定士等にとっても至難の業であるが、地価が上昇してほしいか、下落してほしいかの希望を持つことは個々人の自由である。この地価動向に対する東京都民の意識調査の結果がまとまり、8割が更なる下落を支持していることがわかった。
 傾向としては、若年層かつ収入が低いほど下落を支持し、高年層かつ収入が高いほど上昇を支持しているようである。単純にいうと「持たざる者」のほとんどが地価下落を支持し、「持てる者」のうちの一部が上昇を支持しているといったところであろうか。
 理由もそれぞれ面白い。例えば、「賃借料の負担が軽減される」とあるが、元本価値がこれだけ下がっているにもかかわらず、その果実である家賃にはなかなか反映されないという現実の前では地価下落も希望的観測に過ぎなくなるし、「安い方がよい」、逆の「所有不動産の資産価値が下がるのがいや」などは正直な意見であると思う。
 いずれにしろ、地価は右肩上がりに上がるものという戦後の我が国における常識が覆り、土地も他の財と同じく価値が上下する財であるということが認識された今、土地の値段が上がった下がったと一喜一憂するのではなく、各個人がそれぞれ「自分は土地とこのように接したい」というスタンスを明確にすることが必要となってくるのではないだろうか。

 




相続税「借地権割合」 地価下落で見直しの機運
(エヌピー通信社 H13.5)
 
 借地権や貸宅地の相続税評価額を算定するときに欠かせない「借地権割合」を見直そうという機運が当局サイドで高まっている。借地権割合は、一般的には取引慣行などが共通する地域内の借地権などの取引事例などを参考にして求めることになっている。ただ、「最近の不動産市場の変化で、商業地などで借地権割合が以前と比べ低下したケースが見られる」(不動産鑑定士)という。
 そのためもあってか、当局サイドでは「借地権などの取引実態に明らかに変化が見られるのであれば、実情に則して借地権割合などの見直しを行う」としており、貸宅地の相続税評価同様に、見直しに柔軟な姿勢を示している。
 商業地などの借地権割合の比較的高かった地域で見直しが進められるとすれば、借地権者の相続税に大きく影響するだけにH13.8に公表される相続路線価、借地権割合に注意が集まりそうだ。


いわせてんか! 現行借地権割合は、各国税局管内の借地権取引実態調査に基づき決定されているが、長期間見直しがされておらず、実態と乖離しているのではないかといわれていた。特に、地価下落が恒常化し、不動産(土地)取引の減少が顕著となり、これに大きく左右される「借地権」の価値は相対的に低下しているといえる。
 そこで実態にあわせ見直すことになったわけだが、"借地権割合が下がる"ということは、底地としての「貸宅地」の評価が上がり、借地権評価額が下がることを意味する。相続に関して、地主の負担上昇、借地人の負担軽減となり、それぞれの対応が必要だ。特に、地主さんは地価下落のあおりで地代収入の頭打ち、納税資金の捻出困難性等が深刻化しており、借地人への借地買取などを強力に進める必要があるだろう。
 なお、慣行的借地権割合の実態調査は、不動産鑑定士等の精通者意見を参考にして行われる。





生まれ変われるか大阪高度商業地域
(日経夕刊 H13.5.23)

 繊維産業が集まる大阪市中央区のビジネス街、本町が変わり始めた。昨年あたりから同区鰻谷(うなぎだに)や西区堀江など「おしゃれな町」で営業中のレストランやバーが本町に新店を出したり、移転したりするケースが増えている。どれも、その町が注目を集める前に出店し、町の個性づくりに一役買った店ばかり。心斎橋や堀江に近いのに低家賃という立地のため、ヒットメーカーたちは本町に新たな可能性を見出している。
 どの店も新しい価値観を提示することで、無名の町に人の流れを作り出してきた。繊維産業の衰退に伴い空洞化が進む本町だが、一連の出店をきっかけににぎわいを取り戻す可能性もありそうだ。

いわせてんか!
 
 地価下落継続中の大阪圏商業地であるが、ピンポイントでは活気を取り戻しつつある地点もあるようだ。ただし、これは、ヒットメーカーたちの知恵と工夫の賜物で、はやりに過ぎないかもしれない。果たしてこのような経営者はピンポイントの地点の潜在的価値を見出したのか、それとも、いわゆる場所(土地)はそれほど重視されていないのか。土地に対する相対的価値も下がっているこの現状のなかで、商業地域の市場動向の把握はますます困難にならざるを得ない。





リバー産業 「無印マンション」販売
(日経 H13.5.29)

 住宅地開発のリバー産業(大阪府岸和田市、河啓一社長)は生活雑貨専門店「無印良品」を展開する良品計画と組み、大阪市淀川区に自然を売り物にしたマンション「加島駅前エコヴィレッジ」を販売する。中庭や広場などに小川や池、約150本の樹木を植え「自然の森をイメージした」(リバー産業)という。再生パルプなどを使った良品計画の家具も使う。良品計画が関西でマンションを手がけたのは初めて。


いわせてんか! 最近では、都会の生活に飽き、好んで田舎暮らしを始める人が増えてきている。今回の開発はこのような実態を反映させるとともに都市に近いという条件を売り物にしている。特に大阪は東京などに比べると緑が少ないし、セカセカした人ばかり(人の事は言えないが)なので、自然の癒しを求めている人が多いと思われる。その販売成果に期待したいものである。

 



 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成13年5月30日号・完―  
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