週刊アクセス
 
 
平成13年9月5日 第72号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
建物評価続々 デューデリは受託好調
夏休み、USJ効果は都心部に−奈良や和歌山は苦戦
相続・貸家建付地評価 一時的空室の場合の疑問
住宅公庫の廃止・民営化でアンケート ビルダー経営研究所
 
     
     
  建物評価続々 デューデリは受託好調  
  (日経(夕)H13.08.20)  
 
 オフィスビルやマンションなどの建物の価値や費用を診断するサービスが急成長している。「デューデリジェンス」と呼ぶ分析・評価業務で、大手建設会社や設計事務所の受託が好調。今年の受託棟数は竹中工務店が昨年の4倍に当たる500弱、清水建設も3―4割増の300弱を見込む。9月に不動産投資信託(日本版REIT)の取引が始まるのを控え、建物の価値をより客観的に評価するニーズが投資家や金融機関の間で高まっているのを受けた動き。


いわせてんか! 「デューデリ」という言葉は数年前から鑑定業界でもトピックになり続けた言葉であるが、特に建物の評価のサービスいうことで急成長しているようである。オフィス、マンションに限らず、品確法による住宅性能表示や国土交通省の住宅市場整備行動計画に盛り込まれた中古住宅の審査等今後もその需要は増加するであろう。いずれにせよ、需要者は安価で、迅速、かつ、経済的調査、法的調査、建物に関する調査の総合的視点からのサービスを必要とするであろう。ただ、安かろう、悪かろうの形式だけの調査というのは避けて通りたいものである。

 




夏休み、USJ効果は都心部に−奈良や和歌山は苦戦
(NIKKEINET 2001/08/31)
 
 夏休み期間中の近畿のホテルや観光施設は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が開業した大阪市を中心に好成績になったところが目立った。大阪では首都圏などからの宿泊を伴う観光客が昨年より多く、その効果は神戸にも波及している。ただ、USJによる影響や、猛暑で外出を控える傾向も見られ、京都や和歌山、奈良など周辺の観光地、ホテルはやや苦戦した。
 USJは7月20日から8月末までの期間に入場客は百数十万人に達する見通し。3月末からの累計入場客は近く500万人を突破する。7月は入場客がやや伸び悩んだが、8月中旬には1日5万人を突破する日もあったという。
 大阪市内の観光地は軒並み好調。USJ対岸の海遊館は7月20日から8月末までの期間に前年同期比5%増の約50万人、大阪城天守閣は前年比13%増の約14万人が入場する見込み。
 これに対し、枚方市のひらかたパークなどは前年を割り込んだ。神戸市の須磨海水浴場も期間中(7月5日―8月19日の46日間)の人出は約96万7000人と昨年比で約10%も減少した。
 奈良市のあやめ池遊園地は7月20日―8月26日の入場者数が前年比8.8%減の12万4000人、生駒山上遊園地(生駒市)は同24%減の9万9000人と大幅ダウン。滋賀県守山市の犬のテーマパーク、びわ湖わんわん王国は夏休みの入場客は約9万1000人で前年比9%減。
 和歌山県では、ポルトヨーロッパ(和歌山市)やアドベンチャーワールド(白浜町)など県内遊園地の7月20日―8月26日の入場者数は前年に比べ約10%減った。

いわせてんか!
 オリンピックが流れた最近の大阪で明るいニュースと言えば、近鉄バッファローズの大善戦とこのUSJ効果である。周辺のホテルでは、稼働率90%を超えた日もあるらしいし、海遊館・大阪城の観光客が増えたことを考慮すると、どん底の大阪経済を立て直すきっかけのひとつとなったのかもしれない。しかし、USJに行った人に感想を聞くと「まあまあ楽しかった」、「あんなもんちゃう」、「もう一回ぐらいやったら行ってもえーかな」といった愛想のない返事ばかりであり、東のディズニーランドには到底及ばない存在である。
 短期間では一定の成功を収めたといえるこのUSJが、長期的にもその存在をアピールすることができるのであろうか?USJ関係者の更なる経営努力に期待しよう。





相続・貸家建付地評価 一時的空室の場合の疑問
速報税理 H13.9.1号 「資産税閑談」「評価通達上の問題点(D)」
 
 新築マンション(全21室中、課税時期に入居4室、未だ新規募集中が17室)の建物及びその敷地の相続評価につき、最高裁は「相続開始時に、いまだ賃貸されていない部屋が存在する場合は、当該部屋の客観的交換価値はそれが借家権の目的となっていないものとして評価するのが相当である」と判示(最高裁平成10年2月26日、平成8年(行ツ)第202号)。
これをうけて、平成11年7月19日付財産評価基本通達改正で、「継続的に賃貸されていたアパート等で一時的に空室であったと認められる部分」に該当すれば、貸家建付地として評価減を行うとする緩和措置を設けた(通達26)。
判例では、新築ゆえに一時的な空室とはみなされなかったところに通達との差がある。
 しかし、通達の「継続的」判断は空室期間が1ヶ月程度などと現況にあわない基準を設けているほか、空室があることでアパートの価値が下がりこそすれ、上がるのは賃貸物件に対する時価のあり方を無視した極めて形式的な判断とさえいえる。

いわせてんか!
 来年の不動産鑑定評価基準改定に向けて国土交通省、鑑定協会本部とも実質的な協議に入っているが、その中での目玉は収益物件の収益還元法での評価の充実であると聞く。当判決は取引・鑑定の実態とも相反し、おかしい。
 収益物件の評価は、収益還元法で実際徴収されている賃料をベースに試算される。賃料を徴収できない空室はこれから入居者を募集するので、賃料の未収期間が発生する上、地価が下落し、近隣地域に空室が多く発生している現況では、新規の賃料等も低く設定しなければならないリスクも発生する。判例の事例でも、新築だが当初より全体を賃貸に供する目的で建設されたものであり、実際課税時期後も順次入居していたわけで、自用に供する余地は殆どなかったものと思われる。
 記事も指摘しているが、時価は課税時期の現況によるわけだから、貸家建付地の認定は現況把握をベースとした事実認定の問題であり、判例・通達はあるが、申告時に一考の余地があるようにもおもわれる。





住宅公庫の廃止・民営化でアンケート ビルダー経営研究所
(Housing TIMES 2001/09/04)
 
 インターネットを通じて住宅産業に関する情報を各地の中小工務店に発信する「ビルダー経営研究所」 は、住宅金融公庫の廃止・民営化についてアンケートを行い、4日その結果を発表した。アンケート期間は8月8日〜31日の24日間。回答総数は836件。
 まず特殊法人改革方針については「賛成」が64%、「反対」が14%、「どちらとも言えない」が21%で、改革自体には賛同を示す傾向が強い。しかし「全ての特殊法人を廃止か民営化を含めて見直す」との方針に対しては、「横一線で見直すべき」が15%、「政策の重要性を考慮して要・不要を見分けるべき」が81%だった。「住宅公庫の実質廃止と民間への委託」は「反対」70%、「賛成」16%、「どちらとも言えない」13%、「住宅公庫の長期・固定・低利の融資」は「必要」83%、「不要」7%、「どちらとも言えない」8%と住宅公庫支持が圧倒的だった。
 「長期・固定・低利融資は民間金融機関で可能を思うか」との問いについては、「不可能」55%、可能「23%」、「どちらとも言えない」19%。「住宅公庫の民業圧迫論」については、「そうは思わない」57%、「そう思う」18%、「どちらとも言えない」23%と、改革の根拠に対して否定的な回答が多い。「住宅公庫が廃止になった場合、悪い影響を与えると思うか」との問いに対しては、「悪い影響を与えると思う」79%、「思わない」12%、「どちらとも言えない」7%で、「住宅公庫は必要と思うか」については「必要」80%、「不要」9%、「どちらとも言えない」10%となった。
 なお回答者の内訳は、工務店・ハウスメーカーが70%、その他住宅産業関連企業が13%、一般消費者が9%などとなっている。

いわせてんか!
 当HPでも住宅金融公庫の存廃問題についてたびたび触れているが、良くも悪くも多くの国民の生活に大きな関わりがあるものなので、様々な意見が飛び交っている。
 上記記事にあるアンケート結果によると、回答者のほとんどが供給者サイドであることもあり、住宅金融公庫の必要性を肯定しているものが大勢を占めている。総論賛成、各論反対とはよく言ったもので、この国の危機的な財政状況を考えれば、国民の税金を吸い取るヒルのような特殊法人改革は待ったなしと多くの人は思っているはずであるが、いざ自分の利害に絡むことになると途端に反対を唱え出すのはこの手の問題にはつきものである。
確かに今後の住宅ローン融資の主体が住宅金融公庫から民間金融機関に移行することにより、担保力を重視する民間金融機関では融資基準が厳しくなり低所得者や自己資金が少ない人に対して影響が出るのではないかという意見もある。しかし、不動産って、そもそも買うべきでない人まで無理して買うべきものなのだろうか?(こう書くと「おまえは何様やねん」と突っ込まれそうなので言っておくが、私はまともな不動産を買えるような所得もないし貯蓄もない。だから買うべきではないし買おうとも思わない。)本来ならば不動産を買うべきでない人に30年、35年ものローンを組ませ(しかも「ゆとり返済」などのまやかしを使って)、借金漬けにしている国の政策は果たして健全といえるのだろうか(勿論国の政策だけが悪いのではなく、それを是としている我々国民の側にも問題があるのだが・・・。)。
住宅金融公庫の存廃問題はある意味で今までの常識が覆ることでもある。われわれも今までの常識である持ち家一辺倒の考え方からそろそろ脱却してもよいのではないだろうか。

 



 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成13年9月5日号・完―  
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