週刊アクセス
 
 
平成13年9月12日 第73号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
一次取得は容易なマンション・やや難しい戸建て、買い替えは深刻
「43条ただし書」の許可 基準容積率の疑問
高齢者居住安定確保法施行への期待と不安と不動産
大阪・難波再開発でクボタが新本社計画を先送り
 
     
     
  一次取得は容易なマンション・やや難しい戸建て、買い替えは深刻  
  (Housing TIMES 2001.9.11)  
 
 財団法人東日本不動産流通機構(=東日本レインズ)はこのほど、首都圏における住宅取得難易度の推移と現状についてのレポートをまとめた。これは、経済全体のデフレ傾向が進むなかで、サラリーマン世帯の年収や貯畜額の減少とバブル期に住宅を購入した世帯の資産デフレの広がりが、一次取得と買い替えにどう影響しているかを、年収や貯畜、住宅ローンの借入条件や買い替え時の売却損益などを加味した取得難易度を推計し、取得環境の現状を探ったもの。住宅取得難易度は、一次取得では年間返済可能額と年間返済必要額の対比から作成しており、100を上回ると標準的な世帯はゆとりを持って購入できる水準、75を下回るとローンの借り入れ自体が困難になると考えられる。
 それによると、一次取得の難易度は98年度まで上昇傾向にあったが99年度に横ばいに転じ、00年度も横ばいが続いた。ただ、中古マンションの00年度の難易度は、前年度比で4.7ポイント低下したが134.9で取得が容易な状況が続き、新築マンションも108.0とゆとりある取得が可能な状況が続いている。戸建住宅は中古がやや取得しやすい88.6、新築が75を下回る68.2で、ともに100を下回り、98年まで進んでいた改善が頭打ちになっている。地域別では、埼玉・千葉・神奈川で比較的取得が容易だが、東京はまだ困難な状況にある。
 一方、買い替えはいずれの物件も難易度が低下し、さらに難しくなっている。これは、買い替え先の物件価格が下落したものの、築10年の売却物件の取得価格が非常に高い水準で、しかも当時のローン金利も高かったことから、ローン残高に売却価格を充当しても売却損が拡大し、しかも年収の低下が加わったため。中古マンションへの買い替え難易度は61.3、新築マンションでは61.9と、金利や借入期間の融資条件が異なるため、結果として同水準。戸建て住宅は過去9年間、難易度が100を超えたことがないが、97年以降はさらに悪化して75を下回り、00年度は中古が51.7、新築が44.6となり、買い替えがほぼ不可能な状況にある。


いわせてんか! 東日本レインズが首都圏における住宅取得難易度の推移と現状についてのレポートをまとめた。このレポートによると一時取得については、マンションについては新築・中古とも容易、戸建については中古がやや取得が容易、新築については難しく、買い換えについてはマンション・戸建、新築・中古を問わずいずれも取得は難しいとのことである。
上記記事によると、「住宅取得難易度は、一次取得では年間返済可能額と年間返済必要額の対比から作成」しているとあり、すなわち、「年間返済可能額(世帯収入から生活費等もろもろの費用を控除した純収入)÷年間返済必要額(住宅ローンの元利返済額)=住宅取得の難易度」ということである。この数値が100を上回っていれば余裕をもって購入できるが、100を下回ると他の生活費等を削った分を住宅ローンに充てなければならないということになる。
しかし上記のような単純な式にも関わらず、実際にシュミレーションして住宅を購入する人が一体どれだけいるのだろうか。実際のところ、今の賃貸の家賃よりローン支払の方が安いからというセールストークにのったり、親に頭金の援助をしてやるから家を買いなさいと言われて買う人など、自分の人生において不動産がどれだけのウエイトを占めるのかということをあまり深く考えずに買う人が多いのではないだろうか。
個人にとってみても不動産の取得はあくまで「投資」である。先行きが見えない経済情勢の中、個人においても投資採算性の分析が今後ますます重要になってくるだろう。

 




「43条ただし書」の許可 基準容積率の疑問
 
 
   建築基準法第43条(第1項抜粋)
 「建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。次条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。
 上記の如く、建物を建築するには、その敷地が原則4m以上の道路(42条の定めによる)に2m以上接していないといけないが、旧来からの既存の宅地ではこれを満たさない場合も多く、現状の救済措置として後段の「ただし書」が設けられている。
 H11.5.1の法改正以前は、建築主事が任意に判定した上で建築の確認をしていたが、現行は市町村等との建築確認申請における事前協議の後、特定行政庁に許可申請し、特定行政庁が建築審査会に諮問し、その同意を得れば許可がおりる手順になっている。したがって、現在の建物が「ただし書」で建築確認されている場合でも、今再建築するには同申請が必要であり、許可されなければ建築はできないことになる。
 なお、この許可基準は特定行政庁ごとにそれぞれ「許可取扱要領」を定めており、これに則って許可されることとなる。(ちなみに、大阪については(社)大阪府建築士会発行の「建築基準法第43条第1項ただし書許可取扱要領集」にまとめられている)

 先日実務の中で疑問が出た。対象地(建売住宅)の前面道路は4.7mあり一見開発道路にみえたが、当局・担当窓口によると建築基準法上(42条)の道路ではなく、現行の建物は旧の「ただし書」で建築確認を受けているとのこと。再建築するには上記の許可申請が必要で、いまここで許可が下りるかどうかは明言できないとの発言だった。
 ここで疑問は、当該敷地の「基準容積率」であり、

1. 4m空地を原則とする同基準の下、現況4.7mあるのでいずれの幅員に制限(住居系0.4、商業系0.6)を乗ずればよいのか?
2. 当該前面道路が42条2項道路等の4mに満たない道路にしか連続していない場合はどうなるのか?

であった。回答は大阪府の場合であるが、1.については現状(認定された)道路に乗ずればよい(住居系であれば4.7m×0.4=188%)、2.については前面道路幅員でOKとのことであった。
 なお、これは大阪府の回答であり、個別の事例については当該地域を管轄する特定行政庁に問い合わせる必要がある。また、大阪府といえども府下特定行政庁以外の市町村それぞれの道路認定・建築確認の方法があり、さらに、現況幅員がどのような経緯でその幅員に至ったか等の個別事情に大きく左右されることに留意しなければならない。
 ちなみに、「ただし書」は道路以外の空地等の例外規定であり、42条にいう道路ではないので、「43条ただし書道路」という単語はない。念のため。





高齢者居住安定確保法施行への期待と不安と不動産
(Housing TIMES 2001.9.11)
 
 国土交通省は8月5日に施行した高齢者居住安定確保法のうち、一部未施行となっていた規定について10月1日に施行することを決めた。9月11日の閣議で正式決定した。
 今回施行となったのは、高齢者円滑入居賃貸住宅の登録制度、加齢対応構造住宅への改良支援措置、高齢者居住支援センターに関する規定。
 高齢者円滑入居賃貸住宅の登録制度では、高齢者の入居を拒まない民間賃貸住宅の登録・閲覧制度を創設し、登録した住宅に入居した高齢者が何らかの理由で家賃を滞納したときに、高齢者居住支援センターが最大6カ月分の債務保証を行うというもの。
 加齢対応構造住宅への改良支援措置では、高齢者の持つ住宅をバリアフリーにリフォームすることを支援する住宅金融公庫の融資制度を創設する。これは死亡時に住宅資産などを活用して借り入れを一括償還するというもので、高齢者居住支援センターが債務保証を実施する。
 高齢者居住支援センターは、施行後に国土交通大臣が指定する。

いわせてんか!
 今まで高齢者の需要はあるものの、大家の多くが高齢者の家賃滞納等のリスクを考慮し、賃貸を避けるという状況にあったが、この法律の施行により高齢者であっても大家は貸しやすくなる。特に昨今の賃貸住宅経営はペット飼育可能なもの、専用農園付のもの等個性的なものが成功を収めており、この法律の施行により高齢者向け賃貸住宅経営も十分に採算が見込め、1つの選択肢となる。
 ただ、賃貸住宅経営はあくまでも賃料収入があってはじめて成り立つものであり、その土地に何を建てて、誰に、何を貸せば賃料を取れるかということは総合的な知識を有する不動産の専門家に相談するべきであろう。不動産は非常に奥深いもので、そのリスクが計り知れないことは周知の事実である。
 何はともあれ、高齢者の需要に答えられる良好な賃貸住宅が増加する事が望まれる。





大阪・難波再開発でクボタが新本社計画を先送り
(日経ネット関西版 H13.9.6)
 
 難波再開発(大阪市浪速区)を進める主要企業であるクボタが、新本社計画を先送りすることが5日、明らかになった。クボタ本社に一部重なる道路建設が計画されていたが、その事業主体である大阪市難波土地区画整理組合が、クボタの申し入れをこのほど受け入れた。御堂筋と国道25号をつなぐ南北の主要道路建設の規模は大幅に縮小される。関西有数の大型再開発事業も主要施設が次々に抜け落ち、開発全体の意義が失われつつある。
 難波再開発は南海電気鉄道難波駅の南側にオフィス、商業施設などを建設する。現在、大阪球場跡地の西側から南に向かう幅22メートルの道路を建設中。この道路を2002年度完成という計画通りに南進させると、クボタの本社新館や堺製造所浪速分工場の撤去が必要になる。クボタはテナントも一部入居する超高層の新本社ビルを当初計画し、既に基本設計は済ませていた。だが、経営環境の悪化や難波再開発の全体の遅れもあって、本社建て替えは先送りする。
 新しい計画では暫定道路として道路幅を12メートル前後にとどめる。来年初めに着工し、来夏完成の予定。同再開発では御堂筋から南へ向かう主要道路と位置付けられていたが、クボタの本社の建て替えがない限り、狭い道路のままになる。
 クボタにとっては本社新館の建物と地下駐車場、工場の撤去は当面不要になり、本社本館のクボタ創業者銅像の移設などで済む。
 クボタの北側ではニッピがホテル、商業・オフィスビルなどを計画しているが、着工のめどは立たず、事業化は白紙の状態。当面は暫定利用の住宅展示場を継続する。また、大阪府が現代芸術文化センターを取りやめ、南海電鉄の再開発ビルへの進出を手芸専門店「ユザワヤ」が断念するなど、主要施設の脱落が相次いでいる。

いわせてんか!
 突然ですが、難波と梅田とではどちらが好きでしょうか?
 私としては、難波の方が行動しやすく遊びやすいイメージがあるので比較的難波で遊ぶ事が多いが、期待していた再開発計画が中途半端な形で進められることが残念で仕方ない。確かに、最近大型電気店の梅田進出により日本橋の電気屋街の集客数が減少しているとのことを耳するが、この再開発計画が成功すれば南海難波駅周辺(再開発地区)は、北のアメ村・船場・南堀江、南東の日本橋と相互依存関係を保てるはずである。しかし、不況期には無駄な投資を避けたい気持ちもうなずける。

 



 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成13年9月12日号・完―  
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