週刊アクセス
 
 
平成13年12月19日 第87号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
リバースモーゲージ利用低迷 日経調査
家賃高騰制御狙い団結、ブティック集積の立花通り街
「不利益の不遡及」 税制改正の場合
やはりバブルの再来〜カフェーの街 南堀江界隈
 
リバースモーゲージ利用低迷 日経調査
(日経 H13.12.15)
 
 自治体が土地・家屋を担保として高齢者に生活資金を融資する「リバースモーゲージ」の利用が低迷している。日本経済新聞社が制度を持つ全国18市区を調査したところ、現在の利用件数は71件にとどまっている。利用が全くない自治体もある。高齢者が住み慣れた家を手放すことなく、資金調達できるのが特徴だが、地価下落で担保価値が下がり制度が利用しにくくなっている。
 現在の契約件数は東京都武蔵野市の18件、同世田谷区の14件が目立つものの、他の自治体は一ケタ。累計の利用件数も武蔵野市(87件)が突出し、世田谷区(23件)、東京都中野区(14件)が続く。制度施行からほぼ10年経過したが、東京都府中市、調布市と大阪市はいまだに利用ゼロだ。生活費なら月10万円前後、医療費なら月100万円程度の融を受け、死後に不動産の売却などで返済する。多くの自治体は福祉サービスを手がける外郭団体を窓口に各種金融機関から融資している。

いわせてんか!
 来るべき超高齢化社会における福祉政策の一つとして期待されている「リバースモーゲージ」制度であるが、継続的な地価の下落に伴う担保価値の低下等により普及していないのが実状のようである。
 老後に関するアンケート調査等をみると、老後の生活に不安感を持つ人の割合が、特に20〜30代の若年層を中心に高まっている。我が国の年金政策が理念を持たぬまま迷走している状況では、公的年金制度に対する期待は薄れていくのは当然である。このような状況の中で「リバースモーゲージ」制度は、拡がりつつある公的年金制度の不信感に対して、別の選択肢があることを示すという点で理念は非常に有用である。
 解決すべき問題は多い。しかし、制度の理念は有用なだけに、国、地方自治体、金融機関、そして担保不動産の評価を行うべき不動産鑑定士等が連携して制度をより充実したものにしていく必要がある。




     
     
家賃高騰制御狙い団結、ブティック集積の立花通り街
  (日経ネット関西版 2001年12月17日)  
 
 大阪市西区の立花通り。今でこそ若者向けブティックが立ち並ぶファッション街として知られるが、3年ほど前までは道行く人も少ない家具屋街だった。異業種企業の誘致によるまちづくりの成功例として行政も注目するが、短期間に店舗が集まったため家賃の急騰が目立つ。確かに今は「新店効果」で売り上げを伸ばしているが、長続きする保証はない。成長に目を奪われ、管理を忘れたまちづくりの行き先はどうなるか。現状を追った。
 「明らかにバブル価格」。立花通り近くに1999年から事務所を構え、廃業する家具店主にブティックへの店舗賃貸を斡旋(あっせん)してきた不動産会社の社長(37)はあきれ顔で話す。
 同社によると、99年に3.3平方メートルあたり月1万5000円が天井だった家賃が最近は5万円。知名度の向上で出店希望のブティックは後を絶たない。ここ半年は東京資本のブティックが関西進出の足がかかりを築こうと、採算を度外視した家賃でも受け入れられる状況だという。


いわせてんか! おしゃれなセレクトショップやオープンカフェ等が多い南堀江は、ミナミでは南船場に続いて元気な地域であるが、賃料の上昇がこれほどまでとは驚きである。記事では今後アメ村のような小割り賃貸(賃貸店舗の床を不動産会社が賃借し、細かく区分けしてまた貸しする賃貸形式。床面積が小さくなるほど単価が高くなるため、不動産会社はまた貸しによる利益を高めることができる)が増加し静かな街並みが保てなくなるのを恐れていたが、正に同感である。当面は衰退する傾向はなさそうだが、個人的には落ち着いた街並みのままで発展して欲しい。
 ちなみに店の名前は忘れましたが、南堀江にあるベトナム料理はおいしいですよ…(記憶が正しければ外装は黄色です)
〜以下省略〜  






「不利益の不遡及」 税制改正の場合
(税務通信 H13.12.17)
 
 法の効力を過去に遡って発生させることを遡及立法というが、刑法の世界では遡及立法は原則認められておらず、こと刑罰法規については禁止されている(憲法39条)。
 一方、刑法以外の法律の分野では遡及立法を認めてはならないという原則はない。例えば税法においては、過去において二度、遡及立法が行なわれたことがある。一つは、相続財産の延納を物納に切り換えるいわゆる「特例物納」、そしてもう一つは、阪神淡路大震災の際の雑損控除だ。
 このように、税法において遡及立法を認めてはならないという原則はないとはいえ、それが納税者にとって不利益をもたらすとなると話は別だ。上記の特例物納及び阪神淡路大震災の際の雑損控除は、いずれも納税者にとっては有利な取扱いであったため問題にならなかったに過ぎない。これに対し、納税者の不利益となる遡及立法は、租税法律主義(憲法84条)の趣旨である予測可能性や法的安定性の観点から問題があると解されている(福岡高裁昭和48年10月31日判決等)。
 ただ、所得税等については、年の途中で納税者に不利益な改正がなされ、年度の初めに遡って適用されることがある。このような適用が許されるかどうかは、そのような改正が年度開始前に「一般的にかつ十分に予測できたかどうか」によると解されている。

いわせてんか!
 税金は政治の産物であり、その時々の経済状況や与党たる政党の意向を強く反映する。いまであれば「自民党税制調査会」の決定事項がそのまま法律となって納税者の負担となる場合が多い。“朝令暮改”ではないが、正反対のシステムになることもある。
 あたりまえのことだが、法律の施行日以後はそれ以前の税金とは全く違う。上記記事は、納税者の不利益となる(損をする)遡及立法の問題点を指摘しているが、一言「損」といっても、税法には“幅”があり、適用方法は立法の意図せざる用法も容認する。当局に言わせれば“節税”は悪のようだが、これは納税者の当然の経済行為であり、自己の財産を守るのは命同様当り前だ。
 不景気の折、景気浮揚策たる減税と、歳入確保の増税がミックスされて次々立法される。“幅”がコロコロ変わるこの時期、税法改正と適用時期を注視しておかないと、財産を守りきれない。





やはりバブルの再来〜カフェーの街 南堀江界隈
日経ネット関西 2001年12月17日
http://www.nikkei.co.jp/kansai/business/4052.html

 
 大阪市西区の立花通り。今でこそ若者向けブティックが立ち並ぶファッション街として知られるが、3年ほど前までは道行く人も少ない家具屋街だった。異業種企業の誘致によるまちづくりの成功例として行政も注目するが、短期間に店舗が集まったため家賃の急騰が目立つ。

 99年に3.3平方メートルあたり月1万5000円が天井だった家賃が最近は5万円。知名度の向上で出店希望のブティックは後を絶たない。ここ半年は東京資本のブティックが関西進出の足がかかりを築こうと、採算を度外視した家賃でも受け入れられる状況だという。

いわせてんか!
 以前から噂のあった、南堀江界隈であるが、やはりバブルの様相を呈しているらしい。昨今のような右肩下がりの状況(特に関西)の中では喜ばしい例かもしれないが、投資採算ベースの理論価値を超えた価格や賃料水準はいずれ低下し、ひいては街自体が衰退する可能性さえある。ひょっとしたら、もう既にバブルは崩壊しているのでは、と個人的には思うのであるが、当該地域の静かで落ち着いた街並み、他にないこだわりのあるおしゃれなブランドイメージ等末多くの人がその存続、熟成を望む。

 



 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成13年12月19日号・完―  
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