週刊アクセス
 
 
平成14年3月27日 第101号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
「2002年 地価公示価格」 発表
鑑定士受験・「大阪」基本演習〜参加レポート
デフレ下の固定資産税 有効利用の一助となるには・・・
大阪船場にSOHO相次ぐ−地価下落を追い風に企業
 
 
「2002年 地価公示価格」 発表
 
 国土交通省が25日発表した今年1月1日時点の公示地価は全国平均で前年比5.9%下がり、11年連続の下落となった。景気低迷に地方の大型店や工場閉鎖が重なり、下落幅は2年ぶりに拡大した。東京都心部では下げ止まり傾向も出てきたが、地方では下落が一段と進み、利便性による土地の選別が鮮明。資産デフレは止まらず、企業や銀行の経営を圧迫する要因になっている。
 全国平均で住宅地は5.2%、商業地は8.3%の下落。公示地価がピークを記録した1991年に比べ、住宅地は36.0%下落し、バブル以前の87年の水準となり、商業地は62.0%下落し、80年の水準まで落ち込んだ。東京、大阪、名古屋の3大都市圏では、住宅地は91年比で52.1%、商業地は76.1%下落した。

→詳しくは国土交通省土地総合情報ライブラリー

いわせてんか!
 某国会議員の進退問題のニュースに隠れやや扱いが小さくなった感もあるが、平成14年の地価公示価格が発表された。
 地価公示制度は、地価のいわば定点観測であり、時系列的なデータとして有用であるとともに、他の公的評価(相続税・固定資産税)等のベースにもなっておりその役割は大きい。
 一方、同制度で公示される価格はあくまで更地1m2当たりの価格であり、複合不動産一体としてのポテンシャルまでは反映するものではない。不動産の金融化が進み、また、取引も複雑化・高度化する現在、更地ベースの価格だけで果たしてニーズに応えうるのか、今後の公的評価のあり方はどうなっていくべきか、評価に携わる者としても考えるところもある。
 なお、これらについての細かい話は4月に予定しているコラムに譲りたい。




     
     
鑑定士受験・「大阪」基本演習〜参加レポート
  (H14.03.21〜03.23中之島、大阪国際会議場にて)  
   
いわせてんか! 不動産鑑定士試験・第三次試験を受験するための要件の一つである基本演習(大阪)に参加した。
 これは、昨年までは東京で2回に分けて計4週間程度の講義中心の研修(実務に関する講義)であったものを、本年よりその一部を東京、大阪の2会場に分け、演習中心の研修としたもので、不動産鑑定士史上のものである。三日間かけて、実際に現地調査に赴き、対象不動産を確定、確認し、鑑定評価書の作成、署名押印を行った。
 普段の実務ではパソコン等が利用できるのだが、研修では「手書きの手計算」というのがほとんどで、鑑定評価書の一語一句、数字一つ一つの重みをあらためて感じることができ、大変有意義だった。
 明日を夢見る不動産鑑定士の卵達が、初心に立ち戻り、大阪基本演習第1期生として、将来に羽ばたくことを願う。





デフレ下の固定資産税 有効利用の一助となるには・・・
  (日経 H14.03.11)  
   日経コラム「税をただす」〜5〜から。

 不動産協会(東京・千代田)は「住宅地と違って商業地の実効税率は高く、収益のかなりの部分が固定資産税に持っていかれる」と嘆く。
 土地税制に対する重税感が強まっている理由をたどると不動産価値の評価の問題に行き着く。
 固定資産税や登録免許税、不動産取得税の課税ベースとなる固定資産税評価額はバブル封じを理由に、94年度に公示価格の7割の水準に引き上げられた。それまでは公示価格の1、2割というところもあったから、急激に税負担が増えないような手立てはとられた(負担調整等)。だが、実際の地価が下落するなかで、徐々にではあっても「7割」を目指して税額が増える仕組みは、納税者の負担感を強めた。

 土地保有課税については、重くしたほうが税金を払えないような未利用地や低利用地を持っていられなくなるので、土地取引が活発になるとの見方もある。ただ、建物も含めた税負担が収益に比べて重過ぎるのであれば、高い流通税と同様、買い手の購入意欲をそいでしまう。

いわせてんか! 記事には、「土地税制に対する重税感が強まっている理由をたどると不動産価値の評価の問題に行き着く」との記載があるが、評価と納税額は違う。
 「公示価格の1、2割」の評価に何らかの理由や正当性があるだろうか?
 “安いから文句はなかろう”というのでは、他の税目の納税者から見ると不公平だ。例えば、ある市の歳出を100として、現在の歳入が住民税(60)と固定資産税(40)と仮定しよう。固定資産税が本来なら60とるべきなら、現在、住民税の納税者が20余分に負担していることになる。不動産持ちの税金をサラリーマンが肩代わりしているともいえる。
 税額は、課税客体(固定資産税であれば土地・建物など)の評価額に税率をかけて算出される。税収は、市町村の財政を賄うため、予算額は必要になるもので、必ず確保されなければならない。いずれの税目からそれを賄うかは政策の問題で、評価にこれを負担させるのはお門違いだ。本来なら、地方議会において、必要な税収に見合う税率を決定したり、特定の産業を伸張したいなら非課税を設けるなどしたりして、納税者の審判をうければよいのであり、これが地方自治にもかなっている。有効利用に生かすためには、地方の特色を生かして、住民・地元企業の意見を最大限取り入れられる議会に“実効性”をもたせることが必須条件となる。
 問題は、課税権が国に多く握られていることで、地方は「評価」に税収の調整機能を持たさざるをえないところにある。例えば、固定資産税の税率は国に勝手には変えにくいシステムになっている。
 評価はあくまで適正に「時価」で行われるべきで、そのことが法的にも実務的にも確実にされなければならない。

 税金の問題は、目先の現象だけを追っていると本筋を見誤る恐れがある。





大阪船場にSOHO相次ぐ−地価下落を追い風に企業
(日経ネット関西 平成14年3月26日)
 
 大阪では地価下落により過去1年で5%前後オフィス賃料が低下した。これを受け市内中心部で起業家向けにSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)を造る動きが出てきた。大阪・船場地区の中央区南本町のビルの12階にはSOHO向けの貸しオフィスが集まった「アルファ・デジタル・ボックス」が3月1日に開業。床面積7.49―27.89平方メートルの30区画が設けられている。
 管理・運営するSOHO技術研究所の畑真八郎社長は「オフィス賃料の下がった船場にSOHOを多数造って起業の拠点にしたい」と抱負を語る。
 このオフィスに入った企業の1つがアレイ(関根紀代美社長)。同社は開業したい医師に開業までの支援やノウハウを提供する医療コンサルタントだ。同社では入居している起業家に医師の開業までの支援システム構築を手伝ってほしいと呼びかけたところ、「すぐさまアイデアが持ち込まれた」(金森和英取締役)と迅速さに驚く。
 畑社長は「集合オフィスの利点を生かして起業家が互いに知恵を持ち寄り、互いの問題解決に役立てて相乗効果を狙いたい」と話している。

いわせてんか!
 船場には今、“船場デジタルタウン構想”というものがある。
 これは(財)日本SOHO協会が、大阪市、都市公団、その他関係諸機関と協力して、船場を中心とした大阪都心地域に、『デジタルBOX』とよぶSOHOビルを増やし、SOHOという新しいワークスタイルをもったIT、デザイン、専門サービス等の新産業を集積させ、SOHOビレッジを作り出そうというプロジェクトである。都市公団が、1号館『デジタルBOX南船場』(安藤忠雄氏設計10階建)を皮切りに2号館『デジタルBOX瓦町』、3号館『デジタルBOX淡路町』を建設し、さらに民間のSOHO事業『パートナーデジタルBOX』計画も応援し、すべての『デジタルBOX』をつなぐ強力なSOHO支援システムを構築することによって、オール大阪での成功を目指すものらしい。
 SOHOは東京でも注目されており、明るい話題のない大阪経済の活性化につながること を期待したい。

 
 
 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年3月27日号・完―  
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