週刊アクセス
 
 
平成14年5月8日 第107号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
総マンションストック、築30年超の物件急増へ 東京カンテイ調べ
不動産鑑定士の有効活用を!
近畿の公営ギャンブル 不振一段と深刻
減損会計の要求するもの 新しい企業像の再構築
 
     
総マンションストック、築30年超の物件急増へ 東京カンテイ調べ
  Housing TIMES 2002年4月25日  
   東京カンテイは4月25日、全国の総マンションストックを発表した。それによると、総マンションストック数は約460万戸で、このうち、2001年12月時点での3大都市圏のストック数は362万7990戸となった。また、3大都市圏で築30年を超えるマンションは21万5788戸と全体の5.9%となったが、10年後の2012年には5.5倍の約118万戸となり、急速な増加が見込まれている。
 3大都市圏の築30年を超えるマンションのうち、全体の4分の3にあたる16万2830戸が首都圏に集中。さらにそのうちの9万9149戸を東京都が占めており、「建て替え適齢」のマンションの大多数が首都圏にあることがわかる。
 また、4年後の2006年には、築30年超のマンション総ストック数は3大都市圏で50万戸を突破、2011年には100万戸の大台を超える。
 東京カンテイでは「今後、急増する老朽化マンションをいかにして再生して、ストックを有効活用していくかが大きな課題となってくる」と話している。

いわせてんか! マンションの老朽化・建て替え等の問題については当欄でもたびたびお伝えしているが、築30年を越えるマンションの数が増加してきている。今後建て替え等をめぐる紛争等が頻発し、重大な社会問題となることは必至である。また、所有者にとっては、資産価値を守るというスタンスが重要となってくる。これらの点について、様々な角度から第三者的な立場でアドバイスできる我々のような専門職業家との連携も有効となるであろう。




不動産鑑定士の有効活用を!
  NIKKEI NET H14.05.08  
   日銀は金融機関が貸出債権を自己査定する際に不動産担保を厳しく評価しているかどうかを今年度の考査で点検する方針だ。不良債権を外部に売却した場合などに担保不動産の価値が帳簿上の評価額を割り込み、追加損失の計上を迫られるケースが後を絶たないため。是正が必要と判断した場合は銀行に対し引当金の積み増しを求める。

 銀行は融資の見返りに貸出先が保有する不動産を担保にとっている。担保不動産の評価には路線価や公示地価などを活用一部では不動産鑑定士の評価も活用している。担保の評価額が下がればそれだけ無担保貸し出しの部分が増えるので、経営不振企業向けの貸し出しの場合、引当金の積み増しが必要になる。

 日銀の2001年度の考査では、金融機関が評価した価格を下回る価格でしか担保不動産を処分できず、追加の損失計上を迫られたケースが目立った。このため不動産担保の評価を入念に点検していく。

いわせてんか! 時代は、よりいっそう厳格な担保評価を求めている。さて、昨今のごとき、不動産価値の著しい下落傾向の中では、ある一時点の価格のみでは、その後の価値下落リスクまでは担保しきれない。いわゆる価格形成要因の変化に伴い、不動産の価格は常に変動するということは、周知のことであるが、案外盲点となっている。混沌とした経済情勢の中では、刻々と不動産価値も変化していることに留意していただき、不動産の価格の専門家である不動産鑑定士の活用が期待される。





近畿の公営ギャンブル 不振一段と深刻
  (日経ネット関西 H14.05.08)  
   近畿の公営ギャンブルの不振が一段と深刻になっている。西宮・甲子園競輪が2001年度末で廃止になったのをはじめ、事業撤退に踏み切る自治体が増えている。景気低迷による売り上げ不振の長期化に各自治体の財政事情の悪化が加わり、存廃も含めた見直し論議に拍車がかかっている。
 〜一部省略〜
 公営ギャンブル不振の背景には景気低迷、レジャーの多様化という外部要因だけではなく、単年度主義で長期的な展望を欠いた経営という内部要因も絡んでいる。経営感覚を備えた民間人の登用など含めて抜本的に体制を見直す時期に来ている。

いわせてんか! 近年公営ギャンブルは、テレビのコマーシャルなどで健全なイメージをアピールしてきたが、ファンの需要や長引く景気低迷に対応しきれなくなってきた。会計士や学者などと研究会を発足し経営改善にとりこむ自治体もあるようだが、立地条件がよいギャンブル施設は収益性を十分考慮したうえで再開発などを施し、環境改善に努めるべきである。





減損会計の要求するもの 新しい企業像の再構築
(日経 H14.5.6)
 
 日経・社説より。

 会計ビックバンで世界標準に追い付いたと思ったのもつかの間、日本は新たな課題に直面している。欧州連合(EU)が2005年の導入を決めた固定資産に減損会計を適用する国際会計基準への対応だ。工場施設や店舗、オフィスビルなど不動産の現在価値が取得価格を下回った場合に評価損を計上する減損会計は、日本企業にとって特別な意味を持つ。
 諸外国に比べて割高な地価はまだ下落過程にあり、供給過剰の工場や店舗の設備が生み出す収益の低迷は資産の評価を低下させている。減損処理が義務付けられれば、多額の評価損が特損に追加される。比較的体力のある企業が昨年度で期限が切れた資産再評価法を使って不動産の含み損を土地の含み益で相殺し、設備の廃棄や償却不足の解消を急ぐのは減損会計に備えた動きといえる。

 企業会計の究極の目的は合理的な経済計算と整合的な経営によって、持続可能で健全な経営を実現することにある。だとすれば、株式と土地の含み資産を活用して雇用の安定を図った「日本的経営」は否定されざるを得ない。新会計は日本人に新しい企業像の再構築を迫っている。

いわせてんか!
 日本企業の場合、過去の経営が「土地本位」にあったため、これの抜本的な改革を図らないかぎり、現状は打破できない。かといって、土地・建物別個の概念で地価および不動産価格の形成がなされていることも一方での事実である。また、究極的には、「投資採算価値」一本でその企業の価値もしくは企業の経営の主幹たる不動産の価値を査定するしかないとするのも、現下では性急に思える。日本の不動産の価値は今、この狭間をさ迷っているのではないか?

 地価下落が恒常的な現状では、不動産取引自体が少なく、あってもかなりの事情を含み、また、価格形成は主に“買い手”の思惑をベースになされることが多い。たしかに、従来の「取引事例比較法」に偏重した評価法では対処できないが、「収益還元法」および「収益分析法」的アプローチのみでもあやしい。なぜなら、その明確な基準や、企業もしくは企業基幹不動産の“収益”の算定自体が確立されていないからだ。これは、たとえば破綻企業の過年度財務諸表から、対象企業不動産の公正価値を算出することを想定すればわかる。いわゆる“3手法”を試してみて、対象不動産の評価にはどれが適切かを判断することが必要で、いずれかの手法でいずれかの手法を相互に検証することに意義がある。

 関わりを持つ専門家が試行錯誤を繰り返し、「買い手」の納得する企業不動産評価法を編み出す必要が、強く意識されているのではなかろうか。

 
 
 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年5月8日号・完―  
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