週刊アクセス
 
 
平成14年6月26日 第114号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
マンション建て替えは築何年ならOK?
〜日弁連が区分所有法改正の意見書を発表〜
デフレ対策に生前贈与枠拡大
 
     
マンション建て替えは築何年ならOK?
   〜日弁連が区分所有法改正の意見書を発表〜
  (ISIZE住宅情報 平成14年6月19日号)  
   マンションの建て替えをめぐる議論が活発化してきた。
 日本弁護士連合会(日弁連)はこのほど、先に法務省が発表した建物区分所有法の改正中間試案に対する意見書をまとめた。中間試案では管理組合の理事長などが区分所有者の代理として訴訟を起こせるとしているが、意見書では住宅品質確保促進法(品確法)に基づく修理の請求や敷地の境界トラブルなど具体的な訴訟内容を加えることを提案。分譲会社が敷地内駐車場の専用使用権を特定の区分所有者に分譲するといったケースで使用権の存続期間を規定するなど、規約の効力を明確化する内容も盛り込んだ。
 焦点となっている建て替え決議の老朽化要件については、「築50年以上」とすべきだと提案した。中間試案で採用されている「築30年または40年以上」という案については、「法律がマンションの寿命は30年あるいは40年であると認めたという誤った認識を持つ可能性が極めて高い」と指摘。より長い築年数を要件とすることを求めている。
 法務省では今秋までに正式な法案をまとめ、次期通常国会に提出する予定だ。
 老朽化したマンションの建て替えは大きな社会問題だけに、家を買う人も情報をチェックしておきたいところだ。

いわせてんか!  老朽化したマンションの建て替えの問題は、マンションの構造・施工の質・利害関係者との利益調整など個別的な問題を抱えているため、修繕費用の額や築年数をその一定の要件とすることは時代のニーズであるといえる。今後建て替えをめぐる争いは多発すると思われるので早急に議論をつめていかなければならないが、鑑定業界としても日弁連に任せっきりにするのではなく、日頃の経験を生かし積極的になんらかの意見をすべきである。





デフレ対策に生前贈与枠拡大
(税務通信 H14.6.24号)
 
 政府はこのほど、いわゆる第2次デフレ対策として、先端産業での投資減税や生前贈与の活発化等をメインとした減税を来年1月1日から適用する方針を固めた。このうち投資減税は、今後の経済発展の基軸となるような試験研究費に係る税額控除制度の拡充や同様な趣旨の設備投資に対する投資減税を実施するもの。一方の贈与税については、現行の相続税非課税限度枠(5,000万円+1,000万円×法定相続人数)を生前贈与に割り振って非課税贈与を活発化させることになるようだ。ただし、これらの細目は今後検討されることになる。

 相続・贈与税に関しては、相続税の最高税率を引下げることや、高齢化社会の到来に伴う生前贈与の社会的要請を踏まえ、将来的には相続・贈与税を累積課税化し、両者を一体化する方向で検討するとしている。ただし、累積課税化を実施する場合には、納税者、執行当局の双方に財産を長期管理する仕組みが必要とし、その仕組みが確保されるまでは、累積課税方式の完全な実施はできないとしている。政府税調は、その仕組みとして納税者番号制度などを例示しているが、その導入にはある程度の時間を要することになる。この点を踏まえれば、上記に述べたデフレ対策の中でも提案されている贈与税の生前贈与枠拡大も限定的なものとなりそうだ。

いわせてんか!
 現在、相続税に関して、上記の如く基礎控除5000万円、法定相続人一人につき1000万円の非課税枠があり、資産の評価額がこれ以下であれば相続税はかからない。今回の提案は、この非課税枠を生前に先行して利用できるようにするものである。先取りした非課税は相続時に利用できないため、そこで清算されることになり、贈与税と相続税の一体化が図られる。現在、資産保有の多い高齢世代から、その子供の世代への資産移転を促し、もって経済活性を狙う。

 いままでは贈与税の非課税を拡大する過程だったが、今回はより合理的な制度へ転換する。これで、資産移転の“時期”を考慮する必要が出てきた。従来は贈与税の非課税が少額だったため、大きな資産の生前贈与はなかったが、案が通れば比較的大きな額の資産移転が可能となる。例えば、問題は不動産の評価額である。中長期で考えれば金融資産もインフレ・デフレで価値が異なるが、現在の不動産の価格変動ほどではない。“いつの時点で移転するか”を吟味する必要がある。生前贈与はあげたい人にできるという利点を持つため、その点でも活用し甲斐があろう。

 ただ、今回は「納税者番号」を条件に出していることもあり、導入の程度は不明である。しかし、制度は一瞬にして変わる。動向をちゃんと観察することが肝要だ。

 

(訂正とお詫び)
 H14.6.19 第113号「鑑定基準改正の行方〜実務と理論のすりあわせ〜」にて、

 「AIは実務の中の問題点に焦点を当て、毎年“USPAP(Uniform Standards of Professional Appraisal Practice)”なる実務集を発刊しており

との記載がありますが、これはAIではなく“Appraisal Foundation”(アメリカの複数の鑑定団体が共同で組織する団体)の発刊するものでした。訂正してお詫びいたします。

 
 
 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年6月26日号・完―  
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