週刊アクセス
 
 
平成14年11月20日 第134号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
都市再生へ「混合用途地域」 住宅容積率緩和盛る
不動産投資信託(J−REIT)における法律上の問題点
住宅リフォーム市場 10年前の1.3倍
 
     
都市再生へ「混合用途地域」 住宅容積率緩和盛る
  (朝日H14.11.17)  
   政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)が年末にまとめる答申のうち、「住宅・土地・公共工事」分野の原案が明らかになった。都心部の住宅の容積率を緩和・撤廃するための「混合用途地域」の創設や不動産取引価格の開示など、「都市再生」を促す規制緩和に重点を置いている。政府は都市型の公共事業を一つの柱とする02年度補正予算を検討しており、景気刺激策としての「都市再生」論議に拍車がかかりそうだ。
 「住宅・土地・公共工事」分野の原案によると、都心での居住を進めるため、住宅や店舗の容積率制限を緩和・撤廃する「混合用途地域」を創設する法案を来年度に提出するよう求める。オフィスの住宅転用を促すために住宅の採光に関する規制も緩和する。また、市街地再開発事業の組合設立要件の緩和や道路内の建築制限の緩和も盛り込んでいる。
 また、不良債権処理の加速に有効な不動産証券化市場の形成や不動産の流動化を進めるためには不動産取引価格の開示が不可欠だとして、不動産登記に取引価格を記載するよう義務づけることを早急に検討し、来年度に結論を出す。通勤電車の時間差料金制の導入や、道路の掘り出し期間の短縮なども検討項目にあがっている。

いわせてんか! オフィスの住宅転用の促進も内容に盛り込まれているが、都心マンションの人気ぶりからも、都心オフィスビル等の転用も一つの都市再生の手段かもしれない。そのためには、採光等の規制がネックの一つになる可能性があるだろうから、今回の答申を機に規制が緩和され、コンバージョンという都市再生がより実効性のあるものとなり、都市再生が図られればと思う。

 
いわせてんか! 不動産で景気を良くするため、過去必ずといって「容積率」を多くしてきた。コンバージョンは現状の資産を損なうことなく有効活用する手段であるため歓迎されるが、容積率については多少疑問が残る。
 特に中心市街地は高度利用することがいいようにいわれるが、“ハコモノ”投資に負担が多く、実際そこに入るテナントの負担もキツい。人が集まり栄えてこそ中心商業地といえるのであって、キレイな高層ビルでも空室が多いのでは困る。大阪では、アメリカ村や北堀江など最初は賃料が安かったが、それが出店の容易さとなって魅力的な店舗が集積し、結果としてにぎわうことにより、賃料が高くなってもペイできる。都市再生を景気浮揚策に使うにしても、まず“街”ありきのように感じられるのである。今回は住宅を中心部に・・ということだが、これもまず建替えが必要なことに変わりはない。

 今の都市に魅力があるだろうか?また、新たな「都市再生プラン」で描かれている未来都市はそれ以上に魅力的だろうか?目先の景気だけではなく、人が生きていく“街”をどうするかも十分議論する必要があると感ずる。

 なお、登記の取引価格記載義務付けは早急に望まれる。これにより、不動産市場はもっと分かりやすいものになるだろう。





不動産投資信託(J−REIT)における法律上の問題点
  (銀行法務21 H14.11月号)  
   不動産投資信託には、投資法人を利用して行われる会社型と、投資信託を利用して行われる(信託)契約型がある(上場されたケースではいずれも会社型が選択されている。例えば、日本ビルファンド「投資法人」)。不動産投資信託における法律上の問題点としては、i) 投資法人とその資産運用を行う投資信託委託業者との間での利益相反の問題、ii) 情報開示の問題、iii) 税務上の問題等が挙げられる。
 投資法人は、会社という形態をとった「器」にすぎない。そのため、自ら資産運用業務を行うことができず、不動産の取得、売買、賃貸等の資産運用業務を投資信託委託業者に委託しなければならない。さらに投資法人は、資産の保管業務を資産保管会社に、その他の業務を一般事務受託者にそれぞれ委託しなければならない。
 とりわけ、投資信託委託業者の裁量権限は投資法人の業務のほぼ全般に及ぶ広範なものであるため、(1)情報流用の可能性、(2)複数の投資法人から資産運用業務を受託することが可能であることから生じる双方代理の問題、(3) 投資信託委託業者が不動産賃貸の代理、媒介業務を行う場合のテナントリーシングの競合やテナントの引き抜きの問題、(4) 投資信託委託業者の保有する不動産を投資法人に売却する取引における自己契約の問題などによる投資法人の利益侵害がとくに生じる可能性がある。
 このような利益相反の可能性については、投資信託法は、忠実義務・善管注意義務の他、個別の規定を設けることにより、投資法人の利益侵害の防止を一般的に図っている。
 また、不動産会社は自己の子会社を投資信託委託業者とし、自らは不動産管理会社として不動産投資信託のスキームに登場することがある。この場合にも、同様の問題が生じ得るが、投資信託上とくに規制がないため、不動産管理会社で自主ルールを設ける等の事実上の規制に頼らざるを得ない。投資家の信頼を得るためには、投資信託法上利益相反を防止する何らかの規制がなされるのが望ましい。

いわせてんか! 実際には、現在上場されている不動産投信において、投資法人、投資信託委託業者、管理会社等は資本関係、関連・子会社の関係にあり、また、収益性の高い優良物件を多く組み込んでいることもあり、大きな問題は起きていない様に見受けられる。しかし今後は、2003年問題が懸念されているとおり、賃貸物件の収益性の低下が予想され、また上場数が増加すれば投信間の競争が激化することも考えられる。とすれば、限られた優良物件と収益をめぐって投資家含む利害関係人間でのトラブルも発生し、我々も鑑定評価を通じてこれに関わることになる可能性がある。
 そのため、鑑定評価基準改正の趣旨に鑑み(特定価格の再定義、物件調査の拡充、市場分析の重視、収益還元法の体系的整理、説明責任の強化等)、より精度が高く、より公平妥当な鑑定評価を実践し、鑑定評価に対する信頼を高めるよう努めなければならないと考える。





住宅リフォーム市場 10年前の1.3倍
(ISIZE住宅情報News H14.11.13日号)
 
 (財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターがまとめた統計から、2001年の住宅リフォームの市場規模が5兆2300億円だったことが判明した。10年前の91年は4兆600億円だったので、10年間で約1.3倍に拡大したことになる。
 リフォーム市場は89年から96年にかけてほぼ毎年拡大してきたが、97年、98年と前年を下回り、99年以降は5兆円強でほぼ横ばいだ。不況の長期化などの影響で2002年以降も大幅な変更はないと見込まれるが、「住宅の着工戸数が減少しているなどがあるものの、住宅リフォーム市場はわずかなながらも着実に成長している」(同センター)としている。
 さらに長期的にみるとこの市場は右上がりの傾向にあるという。全国には人が居住している住宅が98年10月時点で約4400万戸あり、そのうち約半分は築20年を超えているからだ。また、築15年前後の「リフォーム適齢期」を迎える住宅も多く、今後の市場を支えると考えられる。

いわせてんか!
 リフォームは、今の日本の住宅環境や感覚にマッチしてきている。
 なぜなら、長期的な収入の減少が見込まれる中、建替えには多額の資金が必要だが、リフォームは資金的にも手ごろで、最近は技術も進んで工事期間が短いため、手軽に住環境を改善できるからだ。
 不況の続く日本。このブームは当然の成り行きだろう。

 
 
 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年11月20日号・完―  
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