週刊アクセス
 
 
平成14年11月27日 第135号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
過剰オフィス→マンション構想、国も後押し 都心の「空き」変身
不動産投資信託(J−REIT)における法律上の問題点(その2)
新たなニーズへの対応で専門家等と連携        
      〜国交省、不動産鑑定評価のあり方検討へ〜
土壌汚染対策法施行日 平成15年2月15日
 
     
過剰オフィス→マンション構想、国も後押し 都心の「空き」変身
  (asahi.com H14.11.19)  
   都心の空きオフィスがマンションに変身――。こんな構想が東京都内で動き始めている。オフィスビルが供給過剰になる03年を前に、空きが目立ち始めた事務所を住宅に換える方法だ。「壊して建てる」から「直して使う」へ。国土交通省は来年度から本格的に後押しし、補助制度の拡充や建築基準法の運用の見直しに乗り出す。
 背景には、汐留、六本木、品川など都心の再開発が完成する03年に、超高層のオフィスビルが相次いで完成し、都内で約8%の事務所が空室になる「2003年問題」がある。国交省は、オフィスから住宅へと全面的に転換する「コンバージョン」と呼ばれる方法は今後、増えるとみている。
 オフィスビルは住宅と違い、上階からの音が伝わりやすかったり、窓が小さく建築基準法の採光条件を満たさなかったりするなど、改造する時に配慮すべき点が多い。一方で廃棄物を出さないなどのメリットも大きい。そのため、来年度、改修工事にかかる費用の補助を始めるほか、建築基準法に定めてある日光をとり入れる窓の面積の条件を緩和する方針だ。

いわせてんか! 供給過剰による低利用のオフィスを転換して再生を図るという経済面や社会面のメリットがあり、また、廃棄物を削減できるという環境面のメリットがあるなど、様々なメリットが考えられるが、そのためには、行政的条件が整備されるとともに、有効な再生が図れる計画が必要である。背景や事情は異なるが、諸外国には様々な成功例があり、そのような先例からノウハウを得て、有効な再生が図られればと思う。





不動産投資信託(J−REIT)における法律上の問題点(その2)
  (銀行法務21 H14.11月号)  
   (先週(H14.11.20号)の 続き)

〜税制〜

 不動産投資信託は、投資法人の不動産の取得、配当等にあたり税務メリットがある。
 不動産の取得時の課税は、一定の要件下、(1)登録免許税が5%から1.6%へ、(2)不動産取得税が3分の1へ、(3)特別土地保有税は課税されないこととなっている。
 ヴィークル課税としては、法人課税がなされることを前提に、配当可能利益の90%超を配当すること等の一定の要件下、投資法人の支払配当金が損金算入されるとのメリットがある(いわゆる90%ルール)。ただし、90%超配当要件については、分母である配当可能所得金額が税法上の利益であるのに対し、分子である支払配当が会計上の利益をさすため、かかる導管性否認リスクを投資法人が負うことになるとの問題点が指摘されている。

いわせてんか! 不動産投資信託の魅力の一つは、年利4〜6%という投資利回りの良さである。この利回りを支えている要因として、税務上の「導管性の恩典」がある。これは、投資法人はこの恩典により投資家への支払配当について非課税の取り扱い(損金算入)を受けることができる。一般の会社が同じ物件に投資した場合には、税負担により投資利回りは約半分の2%台になることと比較すると、この投資法人に対する「導管性の恩典」の影響は非常に大きいものである。
 ただ、「導管性の恩典」を受けるためには「一定の要件」を満たすことが要求されているが、「一定の要件」を満たすことについて、現状では不安定な状態に置かれている。つまり、「一定の要件」の1つとして90%超配当要件があるが、ここにおける所得とは「税務」上の利益であり、配当とは「会計」上の利益からの配当をさす。税務と会計では異なった目的において利益の算定を求めているため、税務上の利益が会計上の利益を大幅に上回り、この要件を満たすことができなくなる場合も想定される。
 また、当初、この要件を満たして配当したとしても、その後の税務調査において、否認・更正を受け、税務上の利益が過去の配当(会計上の利益)を大幅に上回ることになり、後になって、この要件を満たせなくなる場合も想定される。これが「導管性否認リスク」といわれるものである。
 不動産動産投信の今後の発展のため、投資家税制に対する改善・整備とともに、投資対象としての器となる投資法人に対する税制の改善・整備が望まれる。





新たなニーズへの対応で専門家等と連携
      〜国交省、不動産鑑定評価のあり方検討へ〜
(日住協・ニュ―スファイル H14.11.22号)
 
 国土交通省は、来年1月1日から新しい「不動産鑑定評価基準」が施行されることに伴い、業界全体として新たなニーズに対応していくため、「今後の不動産鑑定評価のあり方」について検討する。国土審議会土地政策分科会の「不動産鑑定評価部会」が12月半ばに発足し、来年6月をメドに報告書を取りまとめる。
 主な検討事項は、以下の通り。

(1) 多様化しているニーズに的確に応える高度な専門能力の修得方法
(2) 専門能力を効率的に発揮する業務態勢のあり方
(3) 多様化するニーズへの適応能力を高めるための手法
(4) 他の専門家等との連携
(5) 責任分担とマネジメントのあり方
(6) 新たな評価ニーズを広く、早く把握する方策

いわせてんか!
 「不動産鑑定評価基準」の改正に伴って、不動産鑑定士の鑑定評価のこれからのあり方が問われている。
 基準の改正部分をみても、鑑定評価を行うことによる説明責任やその重要性が旧基準よりも、より具体的に記されている。不動産の証券化などにより、異業種の専門家との連携が今まで以上に必要となってくる今日、これからの不動案鑑定士がさまざまなニーズにいち早く対応していくためにも、上記の事項を検討することに加えて、鑑定評価の専門性を高めることや、他の専門分野に対する知識、情報を得ることなども重要である。

鑑定士自らも、“草の根”から、この難題に立ち向かう必要があろう。

 なお、国土審議会土地政策分科会・不動産鑑定評価部会のHP参照。





土壌汚染対策法施行日 平成15年2月15日
(税務通信 H14.11.25)
 
 先の通常国会で成立した「土壌汚染対策法」の施行が平成15年2月15日とされることになった。この土壌汚染対策法の実施によって、有害物質を扱っていた工場や事業所を廃止して用途変更をするような場合、土地所有者には土壌汚染調査と土壌浄化措置が義務付けられることになる。

 土壌汚染土地については、環境大臣の指定を受けた調査機関による調査を行い、土地への立入り制限、覆土、舗装、汚染土壌の封じ込め、浄化などといった健康被害の防止措置が義務付けられることになったわけだが、汚染が判明すれば、その土地については、利用上の制約が大きくなること、浄化対策の費用が生じることなどのほか、汚染に起因する心理的嫌悪感による減価も未知数だが生じることになる。調査・対策費用が必要になるだけでなく、鑑定評価も困難になることから、その鑑定報酬が通常より高額になることも想定されるところだ。

 この点については、今後、実際に同法による汚染土地の調査・指定が行われ、その防止措置が行われる事案についての評価事例などを勘案したうえで、必要に応じて、相続税評価上の取扱いが設けられることになるものとみられる。法律が施行されれば様々なケースが生じてくるため、それらを基に取扱いが検討されるということになってこよう。

 なお、企業にとっても工場の売却や転用の際には土壌汚染調査が不可欠となってくることになるわけだが、土地担保の際の不動産評価や、環境対策への取組を示すうえでも、調査・対策が必要になってくることになる。

いわせてんか!
 上記記事は税務関連専門誌のものである。
 当HPでも何度か取り上げてきた、土壌汚染。その対策法がいよいよ施行となる。記事でも触れられているように、これによる減価は、今の時点では計り知れず、当然鑑定の費用面も上昇するであろう。
 相続税はあくまで課税時点(相続時点=被相続人死亡時)の“静的”な評価であり、取引等時価として価格が実現しないときに、これを査定するものである。ゆえ、鑑定評価が拠り所のひとつとなるわけだが、様々なコストの算定事例はなく、適切な予測ができない状態だ。しかし、同法の施行日が決定された今、その“可能性”だけでも十分減価要因たる。
 税務、その他の経済行為にかかわらず、不動産の価格を査定しなければならない場面は待ってくれない。“今”の評価には、当然「土壌汚染」は関わってくる。
 なお、「土壌汚染対策法施行令」等及び施行期日については環境省HPで。

 
 
 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年11月27日号・完―  
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