週刊アクセス
 
 
平成14年12月11日 第137号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
平成14年度不動産鑑定士第3次試験行われる
民都、都市再生に活路
不動産投信に利食い売り
格付けアナリストが見る“鑑定評価書”
 
     
平成14年度不動産鑑定士第3次試験行われる
   
   去る12月8日(日)、平成14年度不動産鑑定士第3次試験が東京都と大阪府にて行われた。

いわせてんか! 午前問は、一時金・賃貸事例比較法絡み、借地権絡み、工→住移行地絡みというわりあいオーソドックスな問題3題と鉄道高架下地について問うやや番狂わせな問題が1題であった。午後問は貸家及びその敷地で、単独の出題としては昭和60年以来となる。いつ出てもおかしくない類型がやっと出たという感じである。ポイントは土地残余法を新手法(r−g)で行うのとジャンボの収益の還元方法であろうか。私の周りでは積算に時間がかかったものの大体最後までいったという声が多かった。しかし時間が経つにつれあそこをミスってしまったとかいうことを思い出してくるので合格発表まではヒヤヒヤもんである。ともあれ受験生の皆様おつかれ様でした。





民都、都市再生に活路
  (朝日新聞 H14.11.29朝刊)  
   土地流動化の切り札とされた国土交通省の外郭団体、民間都市開発推進機構(民都)による土地の買い上げ事業が大幅に停滞している。地価の上昇で採算をとれるというもくろみが、歯止めがかからない地価の下落で崩れた。政府は民都の機能を拡充して都市再生をめざすが、その能力を疑問視する見方もある。

 値下がり取得地「塩漬け」

 民都は94年、政府の保証をつけて民間から資金を調達し、土地を取得する事業を始めた。
 資金力が弱い企業が民都に土地を売却。その代金で企業が開発を進め、10年以内に売却価格に金利や固定資産税などの経費を上乗せして土地を買い戻す。企業は開発資金を調達でき、民都もリスクを負わずに済む―――そんな仕組みだった。
 しかし、これまで民都が約9,500億円を投じて取得した206件330haの土地のうち着工以降まで進んだのは6割。都心回帰が進む中、一部では地価が上昇し、東急百貨店日本橋店の跡地(東京都中央区)や旧松竹本社ビル跡地(同)など再開発が進んだケースもあるが、周辺地域、特に地方では「塩漬け状態」の土地が少なくない。
 事業化後や未開発のまま企業が買い戻したのはまだ全体の3割。民都に土地を売り、買い戻しを迫られる企業には、熊谷組や長谷工など主取引銀行から債権放棄を受けて再建中の企業や、マイカルやそごうといった倒産企業も名を連ねる。
 民都の城野好樹専務理事は「国に損害を与えるなというのが至上命令」と、破綻企業にも買い戻しを求める姿勢を強調するが、企業が買い戻せない場合は民都が自力での開発や買い主探しを迫られる。長期的に土地を抱え込むとなると、最終的に国民負担となって跳ね返る可能性もある。

 低利融資事業で機能拡充

 民都による買い取り件数自体、98年度には92件あったが、01年度には8件、02年度には4件に激減。事業の必要性を疑問視する見方もある。
 そんな民都に、政府は新たに低利資金の供給などの役割を担わせ、機能を拡充させる考えだ。
 国土交通省は27日、官民が共同出資して設ける都市再生ファンドを通じて、民都が全国各地の都市再生緊急整備地域の再開発事業へ低利融資などができるよう、今年度補正予算に700億円を要求した。事業の初期段階で民間の金融機関が二の足を踏む事業に対し、積極的に融資し、呼び水になることをめざす。「都市再生の柱の一つ」(国交省)というわけだ。
 だが、民都の役員には不動産や建設、金融業界の首脳が名を連ね、これまでに出身企業の土地を取得した例もあり、不透明感が漂う。

いわせてんか! 政官財の癒着、ブラックボックスなど、その不透明感から批判的に取り上げられることが多い民都。未利用地が発生することによる地域の衰退を考えると存在意義があるように思えるが、地域の実情を無視した開発がなされることも多いようで、仮に開発が実現しても必ずしも地域に好影響を与えているわけでもないようだ。長期的に土地を抱え込んだ場合に最終的に国民負担となる可能性があるなら、公共性や開発の見込みの度合いなどを十分に考慮して進めるべきだと思う。





不動産投信に利食い売り
  (日経 H14.12.10)  
   9日の東京株式市場では不動産投信がさえない値動きで、値上がりは東証第1部に上場する6ファンドのうち1銘柄。配当課税の見直しなどを背景に買われてきたが、最近は上昇が目立っただけに、利益確定売りが優勢になりつつある。
 不動産投信は配当利回りが5%前後と高いのが魅力。そのため自民党税制調査会で配当課税の税率を時限的に10%に引き下げる案が浮上しているとの報道などを受けて11月下旬から動意付き、前週末は軒並み高となる場面もあった。
 不動産投信の上昇率はここ2、3週間で4%前後。個別株などと比べ値動きはさほど大きくない「ミドルリスク、ミドルリターン」の商品として設計されているため、小幅の上昇でも利食い売りが出てしまうようだ。

いわせてんか! 不動産市場の活性化が期待される不動産投信。しかし、市場原理とはいえ、このように相場の値動きに精通した機関投資家のみがキャピタル・ゲインを得て、一般の個人投資家はキャピタル・ゲインどころかロスが発生し得るとなれば、投資家心理が冷え込むことも考えられる。
 そもそも「土地は、土地基本法に定める土地についての基本理念に即して利用及び取引が行われるべきであり、特に投機的取引の対象とされてはならない」のであって、不動産投信についても「投機」(短期的な裁定取引によって利益を得ようとすること)ではなくて、「投資」(長期的な運用)の対象とされることが望まれる。





格付けアナリストが見る“鑑定評価書”
(H14.12.10 鑑定協会セミナーに参加して)
 
いわせてんか! (株)日本格付研究所・アドバイザーである三國仁司氏のセミナーが開催された。
 「不動産鑑定評価にもの申す」と題して、不動産投資ファンドにおける資産評価での鑑定を題材に、鑑定書に対する様々な“注文”を語られた。
 要諦は、クライアントに対して、決定した鑑定額の妥当性・合理性の根拠をキチンと提示することができているか?という点である。たとえば、ファンドの鑑定で、“ピンポイント”の評価額を出して、合理性を確保できるのか?その鑑定額に対して最終的な責任をとることができるのか?ここでの責任とは、期間終了後に、予定された取り分をつけて投資額を返すことができるか、ということである。
 合理性が担保できるなら、いかなる手法を適用しても良いし、そもそもある手法だけで説明しきれるほど現在の不動産価値は単純ではない。さまざまな方法で、ある“レンジ”で価格を示すことが、結果的には責任を果たすことになるのではないか、と語られた。
 不動産価格の専門家として、よくよく咀嚼しなければならない事柄だと感じた。





 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年12月11日号・完―  
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