週刊アクセス
 
 
平成15年2月26日 第147号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
ハウステンボスが会社更生法申請へ
大阪府信用保証協、定借地の建物を担保と認める
      ──府の産業団地、進出融資受けやすく
マンション建替え円滑化プログラム作成        
      〜国交省、国や地方公共団体の取組み提示
過去鑑定の難しさ---当時の“通常人”とは?
 
     
ハウステンボスが会社更生法申請へ
  (Yomiuri On Line H15.2.26)  
   長崎県佐世保市の大型リゾート施設「ハウステンボス(HTB)」(森山道壮社長)は26日午前、臨時取締役会を開き、役員全員の辞表を取りまとめたうえ、長崎地裁佐世保支部に会社更生法適用を申請する。
 HTBは旧日本興業銀行(みずほグループに統合)出身の経営陣主導で経営再建中だったが、約1800億円の借入金残高が重くのしかかっていた。メーンバンクのみずほフィナンシャルグループからの借り入れは約1000億円を占め、同グループによる不良債権処理が加速しているのを受けた措置とみられる。営業は継続する見通し。
 HTBは1992年3月開業。152万平方メートルの敷地に中世オランダの町並みを再現し、最盛期の1996年度には入場者が425万人を記録した。
 しかし、バブル崩壊と重なって当初意図した長期滞在型の観光は衰退し、2001年度の入場者は355万人に落ち込んだ。
 この間、2000年6月に創業者神近義邦社長が辞任。旧興銀出身者が経営の中枢を担い、翌年10月にはHTBの前身「長崎オランダ村」(長崎県西彼町)を閉園したほか、旧興銀は2度にわたり計約530億円の債権放棄を行ってきた。

いわせてんか! 先週、四国最大のテーマパークであった「レオマワールド」(2000年8月に休園)を運営していた日本ゴルフ振興が民事再生法の適用を申請したというニュースがあったばかりだが、今度は九州最大のテーマパーク「ハウステンボス」が会社更生法申請へというニュースが飛び込んできた。九州では宮崎シーガイアや別府の杉の井ホテル(いずれも2001年に破綻)に続く大型観光施設の破綻である。
 私自身も一昨年ここを訪れたのであるが、TDLやUSJのような派手なアトラクションはないものの、園内は落ち着いた雰囲気であり、また、ホテルのグレードも高く、非常に満足した思い出がある。
 しかし、滞在してこそその良さがわかるテーマパークであるのだろうが、日本人にはそもそもリゾートに長期滞在するという概念がない(集団で次から次へと観光地巡りをするのが旅行だと思っている)ことや価格設定がやや高いこと、さらに強力なライバルの出現(USJやTDSの開業)が時流に合わなかったのだろう。
 次々破綻しているゴルフ場でもそうだが、モノは良くても時流に押し流され破綻というケースはままある。レオマワールドとハウステンボスは両方行ったが、前者はニセモノくさく、後者はホンモノっぽい印象があったので、やはりハウステンボスには生き残ってほしかったと思う。
 願わくばしっかりとした再生支援企業(外資?)が現れ、他にはないコンセプトを持ったテーマパークの復活を期待したい。





大阪府信用保証協、定借地の建物を担保と認める
    ──府の産業団地、進出融資受けやすく
  (日経ネット関西版 H15.2.20)  
   大阪府中小企業信用保証協会は4月から府の主要な産業団地で、事業用定期借地の建物を担保として一部認める方針を固めた。府の企業誘致を側面支援する狙いで、担保の要る制度融資が利用しやすくなる。長期の借地と違って定期借地権を設定した土地の建物は一般に担保の対象にはならず、全国の保証協会でも担保を認めるのは珍しいという。
 担保として認めるのは、テクノステージ和泉(和泉市)や津田サイエンスヒルズ(枚方市)など府の主要な産業団地。府は分譲での企業誘致が進まないことから、定期借地権方式の導入を徐々に広げ、企業が進出しやすくした。一方で貸し倒れリスクについて、府は担保に応じて保証協会へ損失補償することを計画している。
 同協会の担保認定を受けて府が利用を見込んでいる制度融資は、工場立地などを資金支援する「産業立地促進資金」。企業が利用する場合には原則として不動産などの担保が必要だが、定期借地の上の建物も担保として認められると、審査を通れば同資金が利用できるようになる。
 同協会はこれまで一般借地に立地する工場などの建物を担保として扱ってきた。ただ定期借地の場合は期間が終わると、建物が取り壊される場合があるため担保価値を認めていなかった。
 府は2003年度にはテクノステージ和泉の事業用定期借地でナノテクノロジー(超微細技術)など先端分野では賃料を無償(5年間)にするなど、定期借地での立地促進に力を入れている。立地企業が増えることも予想されるため、府と協会で定借での担保の扱いを協議していた。

いわせてんか! 平成15年2月12日 第145号 (二色の浜産業用地に種苗の国華園進出──大阪府、20年定借方式で)でお伝えした通り、定期借地権方式による府の企業誘致が徐々に進みつつあるようだ。そのような中で、融資に関して側面からの支援がなされる。これにより、さらに企業誘致が促進されるか、注目したい。





マンション建替え円滑化プログラム作成
    〜国交省、国や地方公共団体の取組み提示
  (日住協「二ュ−スファィル」2003.2.20号)  
   国土交通省は、マンション建替えを円滑に推進するための国と地方公共団体レベルの取組みを示した「マンション建替え円滑化プログラム」を作成した。
 国の取組みでは、NPO法人や業界・居住者・消費者の各団体等で構成する「マンション建替え円滑化推進協議会」を6月をメドに設立するほか、6月のまちづくり月間のイベントとして「マンション建替え新時代」をテーマに全国シンポジウムを開催する。
 一方、地方公共団体の取組みでは、各都道府県毎に、地域の実情を踏まえた具体的施策をまとめると共に、建替えの支援母体となる「マンション建替え円滑化協議会」(仮称)を都道府県毎に設置する。

いわせてんか! マンション建替えに関する“インフラ”が整いつつある。
 法に基づいて、国・地方とも具体の施策の打ち出してきており、現実の「建替え」へ向けて着実に進みつつあるようだ。
 今現在の確認事項としては、以下がある。

 マンションの建替えの円滑化等に関する法律(H14.6.19施行)

 建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案(H14.12.11(未施行))

 「マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル」及び「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」の作成について(H15.1.27)

 マンションの建替えの円滑化等に関する基本的な方針(案)に関するパブリックコメントの募集結果について(H14.12.13)





過去鑑定の難しさ---当時の“通常人”とは?

いわせてんか! 不動産鑑定評価基準(以下、基準)によれば、過去時点の鑑定評価は、以下のことが必須となる。

『過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であり、かつ、鑑定評価 に必要な要因資料及び事例資料の収集が可能な場合に限り行うことができる。 また、時の経過により対象不動産及びその近隣地域等が価格時点から鑑定評価 を行う時点までの間に変化している場合もあるので、このような事情変更のあ る場合の価格時点における対象不動産の確認等については、価格時点に近い時 点の確認資料等をできる限り収集し、それを基礎に判断すべきである。』

 不動産の価格は、“その”価格時点、一点における様々な価格形成要因の結果として導き出されるものであり、当該結果は担当する不動産鑑定士の“意見・判断”として鑑定評価書に記載される。まさしく、当時の市場背景と、そこで生きる“通常人”の判断を合理的に推定・代替して評価額を決定するのである。ここでの“通常人”とは、基準の最有効使用の判定における『良識と通常の使用能力を持つ人』を指す。繰り返すが、評価額は、価格時点“一点”の価値しか担保しない。
 今現在、バブルの後遺症で地価が下がりつつけている事実をもって、遡及的にバブル期やその直後の価格を云々することは間違いである。価格時点当時、通常人たる10人中6以上が「そうだ」と考えていた「近未来の状況」が、鑑定で表現される評価額のベースとなるべきなのである。その6人以上の判断を裏付けるために、各要因・事例資料を収集・分析・記載しておく必要がある。
 具体には、一般的要因たる当時の経済状況をどこまで描き切るか?各種統計、出版本、経済記事などを掘り起こし、売買事例等の事例資料との関連性を分析し、結果としての鑑定評価手法のウエイト付けに至るまで、どれだけ説得力をもって説明できるか?
 困難だが、ここが“要”になると思う。







 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成15年2月26日号・完―  
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