週刊アクセス
 
 
平成15年5月7日 第157号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
関学、大阪・梅田に衛星キャンパス──社会人学生 実学に誘う
郊外型の大規模コインランドリーが増加
FRB、政策判断「景気配慮型」に変更〜政策金利据え置き
ディスカッション・ペーパー「土地収益率と地価下落要因の分析」
RCCの「担保評価に関する原則的な考え方」
 
     
関学、大阪・梅田に衛星キャンパス──社会人学生 実学に誘う
  (日経NET関西 H15.4.23)  
   兵庫県西宮市に本拠を置く関西学院大学がサテライト(衛星)キャンパスに力を入れている。サテライトは郊外の大学が本来のキャンパスとは別に都心部などに設けた拠点。会社からの通学に便利な場所を確保し、学習意欲の高い社会人を取り込むのが狙いだ。
 4月17日午後6時。梅田駅前にそびえ立つアプローズタワーの一室で会計学の授業が始まった。集まった生徒は24人。大半が20代から30代のスーツ姿で、いかにも会社帰りといった様子の社会人だ。新学期が始まったばかりとあって、名刺を交換し合う姿も目立つ。
   ◇  ◇  ◇
 「時価会計の凍結は個人投資家の失望売りを増やすだけ」「いや、一定の株価下支え効果はある」――。授業では教授の講義を聴くだけでなく、生徒が自ら事例を調べて報告したり、重要な課題を討論する。「目的意識を持った人ばかり」と白石健治教授は満足そう。

 生徒の1人、近畿経済産業局の井上直樹さん(29)は「仲間から職場の具体的な問題を聞けるため、役人の自分には勉強になる」と話す。
 関学大学院の商学研究科が実務経験のある社会人を対象に経営学修士(MBA)の取得を目指す「マネジメント・コース」を設置したのは1993年度。ただ、本部の上ケ原キャンパス(西宮市)は「働きながら学ぶ人には不便だった」(平松一夫学長)。このため2000年度から授業の中心を大阪・梅田駅前に移し、いわゆるサテライト・キャンパスが動き出した。
 バイエル薬品に勤務する宮田貴裕さん(34)は昨年4月の入学。1年目に履修した科目はマーケティング、経営労務、会計学、ベンチャービジネスなど多岐にわたる。「幅広い知識を身に付けたかった。どの授業も実務的で役に立った」と振り返る。
 とはいえ、社会人と学生の両立は容易ではない。平日の授業は午後6時から9時まで、たっぷり3時間。授業が終わり自宅に戻ると、1時間半程度の予習・復習に加え、持ち帰った仕事をこなす日々が続く。「時間が非常に貴重になるだけに、会社からも自宅からも通学に便利な梅田にキャンパスがあるのは助かる」(宮田氏)という。
 実際、「教室が会社に近いという理由で関学を選ぶ社会人学生も少なくない」(広報室)。03年度入試では募集定員約30人に対し、3倍の90人程度が受験しており、人気がじわじわと広がっている。
 社会人側の意識も変わってきた。01年3月に卒業した末正洋一さん(43)は同年の秋に会社の早期退職優遇制度に応募した。「授業を通じて論理的に問題を解決する力や他人への説得力が高まった。自分に自信がついたこともあり、後のことを決めずに辞めた」という。
 結局、末正さんは米国の大学に論文を提出して行動医学の博士号を取得。02年3月にベルシステム24に入社した。現在は新規事業設立の実務責任者だ。「授業で身に付けた能力を生かせる仕事。MBA取得で人生が広がった」と話す。
 登坂一博さん(44)も「最初の会社で定年まで働くつもりで人生設計をしていた」。実際には、卒業後に2度の転職を経験し、現在は日本ヒューレット・パッカードのビジネスコンサルティング部の部長を務める。雇用の流動化が進むなかで、MBAの取得で中堅サラリーマンが自分の人生を見つめ直す機会にもなっている。
   ◇  ◇  ◇
 関学はすでに次の戦略に動き出した。サテライト・キャンパスを強化・拡充する形で05年4月にも「ビジネススクール」を開設する。延べ床面積は12倍の約1100平方メートルに拡張。夜間中心の社会人向けコースは、定員を70人程度と現在の2倍以上に増やす方針だ。教員も実務家教育にふさわしい人物を選び、専任制に変える。
 平松学長は「ビジネススクールなど専門職大学院の成否は『実学の関学』の浮沈を決める」と言い切る。少子化に対応した経営戦略を見直す上で、社会人教育は重要なフロンティアの一つ。他の有力大学も相次いで、サテライト・キャンパスの設置に乗り出しており、社会人学生の争奪戦が一段と熱を帯びそうだ。

いわせてんか! 学生時代に全然勉強しなかったことを反省しつつ、社会人としての経験をしてから再度“学びたい”という意欲に駆られる人は意外と多いのではないだろうか。とりあえずは、独学で本を読むとか、大学の公開講座に出席するというところから始まるのであろうが、本格的に“学びたい”と思うのであれば、社会人向けの大学院に進学するという道を辿ることになるだろう。
 しかし、社会人が仕事と勉学の二足のわらじを履くためには、相当の覚悟と努力がいる。具体的には、いかに時間をコントロールし、両者を両立させるかということであろう。この点で、社会人向け大学院が都心にサテライト・キャンパスを開設することは、時間の節約という面で非常にメリットがあり、今まで無理と諦めていた社会人を再び学問の世界へと誘う効果がある。
 来るべき大学全入時代を前に、関学のような名門大学でさえあれこれと生き残りに必死である。逆に、本気で“学びたい”と思っている人にはいい時代になったのかもしれない。





郊外型の大規模コインランドリーが増加
  (日経ネット関西版 H15.4.28)  
   駐車場を備えた郊外型のコインランドリーが増えている。単身者に加えて、週末などに車で出向いてまとめ洗いするファミリー需要が高まっているためだ。各社とも布団の丸洗いや従業員の常駐などきめ細かいサービスを打ち出し、顧客開拓を競っている。
 京都インターナショナル(京都市、平井孝樹社長)の大型コインランドリー「洗濯館本店」(同)は様々な洗濯物に対応。布団など最大32キログラムまで洗える大型の洗濯機や背広や和服も洗えるドライクリーニング機、スニーカー用洗濯機などをそろえた。

いわせてんか! 従来型のコインランドリー(インドアタイプ)は家庭用洗濯機(コイン仕様に改造)を数台並べたものが多く、洗濯の手順や手間はほとんどの家庭で行うのと変わらず、時間と手間がかかるものであったが、大規模コインランドリーでは、プロ仕様の機械をベースにした一般ユーザー用のシステムなので大物(こたつ布団、毛布、カーテン等)を、一度にまとめて安く、早く洗うことが可能となった。利用者の大半は、土日に利用しており、大物のまとめ洗いの利用が多いという。また、コインランドリー独立店舗のほか、クリーニングの取次店、書店、CDなどのレンタルショップ、コンビニ、スーパー、ファーストフード、ガソリン・スタンド、スポーツ施設などとの併設・複合店舗が増加しているという。
 学生時代に下宿生活でマンションに備え付けられているランドリーを利用した程度であるが、洗濯物がたまったときに何回かに分けて洗濯をしなければならないことに面倒を感じたことはあったように思う。そういう意味では、まとめ洗いが可能であること、他の店舗が隣接していれば、何かの用事があれば一緒に用事が済ませられる点、また、待ち時間を潰せるなどといった利点は良いように思う。





FRB、政策判断「景気配慮型」に変更〜政策金利据え置き
  (NIKKEI NET H15.5.7)  
   米連邦準備理事会(FRB)は6日の定例連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を現行の年1.25%に据え置くことを決めた。当面の政策運営方針については3月のFOMC以降の「判断留保」を変更し、景気の下振れリスクに重点を置く「景気配慮型」とした。0.5%の利下げに踏み切った昨年11月以前は「配慮型」だった。

<FOMC声明の全文>

「FOMCは本日の会合で、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を現行の年1.25%に据え置くことを決めた。
 生産や雇用の経済統計は、戦争終結前になされた判断を反映しているが、失望させられるものだ。だが、地政学的な緊張感が緩和されたことで、石油価格や消費者心理、株式が回復しつつある。これらの進展は(景気の)現状に適応している金融政策の方針と進行中の生産性の伸びと相まって、今後経済状況の改善を促進するはずだ。
 景気回復の時期と期間は依然不透明のままだが、当委員会は向こう2〜3四半期は持続的な成長を達成する上昇リスクと下降リスクはだいたい同等だと認識している。半面、歓迎できないインフレの実質的な低下が、わずかではあるが、すでに低水準にあるインフレの上昇を上回っている。当委員会は予測できる将来において、(インフレを抑制し景気後退を回避するという)両方の目標を達成する観点から、リスクは経済が弱含みになる可能性があることに重点が置かれると認識する。」

<用語>米国のFF金利と公定歩合とは

 フェデラル・ファンド(FF)金利は日本の無担保コール翌日物金利に相当する。日米とも民間銀行は預金残高に応じて中央銀行に準備預金を預け、そのために必要な資金を短期市場から調達する。FF金利や無担コール金利はその際の金利。
 中央銀行は準備預金の集まり具合のほか、政府からの資金の出入りなどを判断し、日々の市場の資金の需給関係を適当に調節しながら金利を誘導する。この手法は日米でほぼ同様だ。
 公定歩合は中央銀行が民間銀行に資金を貸す際に適用する金利。米連邦準備理事会(FRB)は市場金利を誘導する対象としてFF金利を活用しており、公定歩合による貸し出しは極めて限定的な場合にしか使わない。

いわせてんか! 2001年1月のブッシュ大統領就任時には6.0%であったFF金利。その後の世界的な景気後退・同時テロ等の影響により、急激に低下していた。が、イラク戦争の一応の終結もあり、グリーンスパンFRB議長は、先の議会証言で、「年後半に向け回復基調にある」との判断を変えていないことを明らかにしていた。FOMCもこれに追認するかたちで、当面はもう一段の利下げは不要との判断である。

 割引率・還元利回りの算出において、各種金利・指標等の動向を把握しておくことが必要であることは言うまでもない。重要なことは、その金利・指標等が不動産の利回りとどのような関連があるかを意識して、その動向を把握し分析することである。
 例えば、10年国債の利回りにしても、不動産の利回りと(1)正の相関にある要素、(2)負の相関にある要素及び(3)あまり関連のない要素が複雑に絡み合って変動(下落)している。リスク資産からの資金の流入によって、利回りが低下していることを考えると、どちらかと言えば不動産の利回りとは負の相関関係にあるのではないかと思われる。積上げ法を適用する場合には、この点に留意して適用すべきであろう。
分析・判断が不十分であれば、投資家への説明責任を果すことが困難となる。





ディスカッション・ペーパー「土地収益率と地価下落要因の分析」
  (内閣府 H15.4.30)  
   内閣府では政策統括官(経済財政―景気判断・政策分析担当)による、上記研究成果を公表した。
 試算された土地収益を土地資産額で割った直接利回りを計算し、さらに収益還元モデルによる地価下落要因を分析している。さらに、地価に好影響を与えるには、土地の有効利用を一層進めることと、土地保有リスクを軽減させ、買い手を拡げることが重要で、そのためには経済の活性化と、不動産流通市場の信頼を高め、市場育成・規模拡大が必要としている。

いわせてんか! 不動産市場はオープンでなく、不明瞭であるがため、一般人が下手に手を出すと損するイメージがないだろうか。不動産に関する情報公開を進めて、クリアーな市場にならなければ、土地が一般に広く有効利用されることはありえない。土地は持っていれば価値が下がり続ける厄介者ではなく、有効に利用すれば大きな資産、財産である。いますぐ動かなくてはいけないと思う。
 なお、全文は内閣府HP





RCCの「担保評価に関する原則的な考え方」
  (平成14年1月11日 預金保険機構・整理回収機構)  
  「金融再生法第53条に基づく健全金融機関等からの資産の買取価格について」
担保評価に関する原則的な考え方(別紙)
〜抜粋〜

(1) 担保不動産
(ア) 担保不動産については外部鑑定等を用い次のような手順を経て担保評価額を算定す る。
  (i)  外部鑑応じて行なう現地調査の結果等に基づき、担保物件の特性に応じて「正常価格」に定等により「正常価格」を算出。
  (ii)  必要に原則掛目1〜0.7程度を乗じて、早期売却価格を算定。
  (iii)  上記(i)(ii)に織り込まれていない物件処分の阻害要因排除等が必要と見込まれる場合、原則10%程度の追加的減価を行なう。
  (iv)  物件処分のための費用(測量費用相当額等)の発生が見込まれる場合には、上記(i)〜(iii)によって算出された価格より差し引く。
(イ) 外部の鑑定評価の対象としない担保不動産(担保不動産の件数が多く時間的な制約を受ける、鑑定評価費用倒れの懸念がある場合等で、一定の基準以下の担保不動産を外部鑑定の対象外とすることがある)については、原則として持ち込み金融機関の評価額を基準に評価するものとする。
(ウ) 競売申立済の担保不動産については、最低売却価格の決定がなされている場合には上記による担保評価額と比較して低い方の金額を評価額とする。また、既に無剰余通知がなされている場合には評価額をゼロとする。
       

いわせてんか! RCCの趣旨からいって、「早期売却」は外せない。
 だから、極力保守的に、最終的に競売における「最低売却価格」を睨むことが必要だし、関わるリスクは全て考慮すべき、ということになる。しかし、この“リスク”はなかなか曲者だ。担保不動産のみのリスクに傾注しすぎると、相対的に人の返済能力を過小に判断することにもなりかねない。
 判定基準は困難でも、事例の積み上げで、あまり手ひどい“損切り”にならぬよう、見極めを慎重にしてもらいたい。









 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成15年5月7日号・完―  
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