週刊アクセス
 
 
平成15年6月25日 第164号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
関西銀が50年の住宅ローン──来月から、30歳以下を対象に
長谷工総研、「超高層マンションの供給動向」を発表
企業再生で「処分する不動産」と「継続する不動産」の評価の違い
 
     
関西銀が50年の住宅ローン──来月から、30歳以下を対象に
  (日経ネット関西版 H15.6.14)  
   関西銀行は7月から、返済期間が最長50年の住宅ローンの取り扱いを始める。30歳以下で住宅を購入する人が対象。銀行の住宅ローンは最長35年程度の返済が標準。住宅を購入する年齢層の若年化に対応する。7月に関西銀の子会社となる関西さわやか銀行でも同月中に同様な住宅ローンの取り扱いを始める予定。
 新型住宅ローンの返済期間は3年以上50年以内、借入金額は4000万円以内。金利は固定金利(10年ごとに更新する場合)で約3%。例えば借入金額が4000万円の場合、返済期間が35年だと毎月の返済額は約14万円、50年では約11万4000円。

いわせてんか! 住宅取得層の若年化の背景の一つとして、現在の住宅ローンが低金利であることがあげられると思われるが、今回の(超)長期住宅ローンの出現は、この傾向を強める要因になるのではないかと思われる。





長谷工総研、「超高層マンションの供給動向」を発表
  (R.E.port NEWS 2003.6.24)  
   (株)長谷工総合研究所は、「超高層マンションの供給動向」と題したレポートをまとめ、発表した。 今回のレポートは、首都圏・近畿圏における超高層分譲マンションの供給動向について分析を行なったもの。
 これによると、超高層分譲マンションの供給戸数は、首都圏では1999年4,408戸(全体の供給戸数に占める割合5.1%)、2000年7,383戸(同7.7%)、2001年8,616戸(同9.7%)、2002年9,102戸(同10.3%)と、1999年以降大幅に増加。近畿圏においても、2000年には1,325戸(同3.3%)にとどまったものの、2001年2,113戸(同5.8%)、2002年2,871戸(同7.3%)と2年連続で2,000戸を上回る結果となった。
 また供給立地については、1980年代後半〜1990年代前半には都心近郊部・郊外部でも超高層分譲マンションの供給が行なわれていたが、首都圏・近畿圏ともに、分譲マンションの供給立地に都心回帰現象がみられているのと同様、超高層分譲マンションの供給立地も都心部中心にシフト。1999年以降、首都圏では都内23区の港区・中央区等、近畿圏では大阪市中央区・北区・西区等の都市部での供給が増加している。
 同レポートでは、2003年以降も超高層分譲マンションの供給が予定されていることから、当面、高水準での供給が継続していくと分析。このため、これまで好調に推移していた販売についても、競争が激化し、販売結果の二極化が顕著になると見ており、超高層分譲マンションについても、立地特性や商品企画の重要性がますます高まり、差別化の時代になってきているとしている。
 なお、同レポートの全文は、同社発行の「CRI」7月号(6月25日発行)に掲載される予定。

いわせてんか! 近畿圏にもタワー型マンションが結構増えてきた。超高層マンションといえば、都心、都会の眺望が売り物と思いこんでいたのだが、最近供給が都心にシフトしたとのこと・・・そういえば、以前は郊外にもちらほら建っていた。やっと大阪でも、超高層マンションの中で欲しいものが選べる時代になってきた。しかし、超高層マンションは「停電状態が長く続いたとき水が出なくなる」という話を耳にしたことがある。安全性、ライフラインの確保に疑問は残るのかもしれない。





企業再生で「処分する不動産」と「継続する不動産」の評価の違い
  (月刊「不動産鑑定」2003年7月号)  
   同誌p38、不動産鑑定士・蒲生豊郷氏「改正会社更生法と鑑定評価(時価の論議など)」より。

『更生計画で処分が予定されている不動産と更生会社に残して存続させようとする不動産があります。この不動産の評価には説が分かれます。
 両者の評価に差があるという考え方では、継続不動産は会社の維持更生に必要べからざる不動産であるから、事業収益価格を標準に評価しますが、清算処分価額を下回ってはいけないということになるでしょう。事業収益価格に大きなウエートを置く傾向があります。処分予定不動産は、更生計画認可後にできるだけ高値で売る努力をいたしますので、三方式適用の通常の評価で概ね良いと思われます(評価時点と売却時点のズレには注意が必要でしょう)。更生計画案には処分予定不動産が財産評定(開始時:註筆者)よりも安くしか売却できなかった場合や、反対に高く売却できた場合の措置を細かく規定するのが一般的であります(処分価額連動方式といわれるもので、この処分方式の採用は法的には違法ではないかといわれております。しかし、事実上、実務では恒常的に採用され、金融機関にとって違和感のない方法といわれています)
 一方、両者の評価に差がないという立場では、債権者が担保に取った時点の状況を前提に、現時点の評価をすれば債権者の意思に叶うという考え方になります。債務者所有者の意思に拘わらず、現状を所与として評価すれば足りるというものです。この考え方に立ちますと、価格時点で営業を行っている不動産は事業収益を標準にして清算処分価額を下回らないように譲渡可能価格を評価します。必ずしも事業収益に重心を置くわけではありません。ケースバイケースで柔軟に考えるのでしょう。営業を休止している不動産や遊休不動産は何れも清算処分価額を下回らないように評価します。現在は営業しているが、早晩営業を廃止しようという不動産は、両者の考え方による評価に違いが生じます。』

いわせてんか! 氏は「事業再生研究機構」(以下、機構)の一員であり、いわゆる“ターンアラウンドマネージャー”たる発言をされている不動産鑑定士である。機構では研究者・弁護士・会計士などが中心となって「企業再生」を模索している。ここ数年にわたり、この改正会社更生法の“時価”を巡る議論を戦わせており、傾聴に値する。
 この原稿では、残すか処分するか?という分水嶺で評価が変わるという微妙な議論をしている。財産評定と担保権評価で同一の「時価」を評価基準としたまではいいが、結局その定義は運用に任されており、「再生」を目途としているのだから、当然「継続不動産」を継続するものとしての評価が「時価」に含まれることになる。立ち直りたい債務者側は「継続企業価値=事業収益ベース」を主張して“なるべく安い評価”で損切りしてほしい(事実これまでこの評価により担保権者が事実上の債権放棄をさせられていたところがある)。一方担保権者側は、少なくとも「処分価格=競売ベース(当てがあるなら任売ベース)」を確保しなければ割が合わない。
 改正で「スムーズな再生」を標榜しても、問題点は山積みで、鑑定士が発言しなければならない場面も増えてくる。









 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成15年6月25日号・完―  
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