週刊アクセス
 
 
平成15年8月27日 第173号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
近畿の自治体、PFIの導入加速──駐車場や病院の運営・管理
      奥田日本経団連会長、「消費税率上げ不可避」
      都市整備公団、定借権の貸出し期間を50年以上に条件緩和
      FCが出店したい立地とは? 〜その最重視ポイント
 
     
近畿の自治体、PFIの導入加速──駐車場や病院の運営・管理
  (日経ネット関西版 H15.7.29)  
   近畿の自治体でPFI(民間資金を活用した社会資本整備)を本格的に導入する動きが広がってきた。公立病院や文化施設、駐車場、中央卸売市場などPFI方式の採用を決めた事業が急増しているほか、大阪府堺市などは運用方針となるPFIのガイドライン「堺市PFI等ガイドライン」も策定した。財政が厳しい自治体が多い近畿では今後、PFI導入が一気に加速しそうだ。
 神戸市は老朽化した市中央卸売市場の再整備にPFI手法を導入する。道路を挟んで東西に分かれている市場を統一するため、西側から東側に移転する4ヘクタールの施設の建設や維持管理、廃棄物処理などを民間事業者に委託する。今年度予算にPFIアドバイザー費用などで5億7400万円を計上し、来年度中に民間事業者を選定する。
 昨年11月に江坂駅前の駐車場を開業した大阪府は、府営住宅の建て替えでもPFIの導入を検討中。
 京都市は市立京都御池中学校の新校舎を含む複合施設をPFIで建設する。仕様書に当たる案を市教委が作成、10月にも建設する民間事業者を公募する。複合施設の半分が中学校、残り半分は老人デイサービスセンターなどにする。2004年度着工、06年完成を目指す。
 事業全体をPFI方式にするのではなく、一部に限定して採用する動きも目立ってきた。大阪府八尾市は市立病院の移転・新設に伴い、管理と運営に限定してPFIを採用。三菱商事グループを優先交渉権者として、9月中をメドに契約締結を目指す。
 同枚方市も財政難で凍結していた新総合文化施設の建設や管理運営の一部にPFIを導入する予定。一部計画を縮小するとともに、PFI導入で建設費と運営費を当初見通しより削減できると判断した。2006年夏に着工、09年春のオープンを目指す。

いわせてんか! PFIネット社のHPでPFIの活用事例(検討段階・中止などを含む)が紹介されている(大阪府の活用事例)が、大阪府では、教育文化関係、医療福祉関係、また、産業廃棄物処理施設の事例が多いようだ。内閣府が実施したアンケートによると、自治体の導入希望施設は、複数回答で教育文化施設が42%、公営住宅、社会福祉施設がともに29%、観光施設が28%、庁舎が24%、廃棄物処理施設22%、リサイクル施設18%の順となっており、近畿の他府県でもその傾向が見られる。
 PFI法による対象施設は他に、道路・港湾等の交通基盤関係、地下街等の都市開発関係などがあるが、現在のところ、上記の施設においてPFIのメリットが見られているようだ。





奥田日本経団連会長、「消費税率上げ不可避」
  (NIKKEI NET  H15.8.27)  
   奥田碩日本経団連会長は26日、日本経済新聞記者とのインタビューで、消費税率について「財政状況を説明すれば国民の理解は進むはずだ」と述べ、財政再建や年金財源確保などのため税率引き上げは不可避との考えを示した。来年からの政治献金関与再開では、税制や社会保障改革などへの取り組みをもとに政党を評価する意向を表明。国内景気は「若干上向いてきた。今年後半に向けて良くなっていく」との見方を示した。
 消費税率に関して、奥田会長は「諸外国は10%以上なのに、どうして日本だけが5%で運営できるのか」と指摘。「国民も財政事情などの説明が欠けるとアレルギー的な反対が出るが、議論が深まれば理解されてくる」と語った。

いわせてんか! 塩川正十郎財務相も、消費税について「2006年度以降には(税率を)必ず上げざるを得ないだろう」との認識を表明している。
 消費税率が引き上げられれば、建物への直接的な税額増加のほか、仲介手数料、司法書士手数料、ローン保証料等への課税による間接的な負担増により、不動産の需要動向に悪影響を与えることが懸念される。
 消費税率引き上げ議論の背景には、財政再建や年金財源確保の問題があるわけであるが、公的年金のみならず、より深刻なのが企業年金の運用難である。厚生年金基金連合会は7日、代表的な企業年金である厚生年金基金の2002年度の資産運用利回りが平均でマイナス12.46%で過去最低になったと発表した。国内外の株式相場の低迷が主因で、マイナス利回りは3年連続となっている。なお、最近の株価上昇により運用状況は改善されつつあり、さらに、一部に新しい動きも出てきた。
 すなわち、ミドルリスク・ミドルリターンといわれる不動産運用により、リスク分散・レバレッジ効果を図ろうとするものである。実際、REITによる運用も増加しており、また私募ファンドについても、ケネディ・ウィルソン・ジャパンが国内の年金資金による300億円超のファンドを年内に立ち上げる予定である。このような流れを受けて、不動産流動化事業がより活発になっている。
 重要なのは、社会経済情勢の動きを読み取り、ビジネスチャンスを的確に捉えることである。





都市整備公団、定借権の貸出し期間を50年以上に条件緩和
  (日本工業新聞 03/8/25)  
   都市基盤整備公団は、民間のファミリー向け賃貸住宅整備を支援するため、公団の保有地を定期借地権で民間に貸し出す際の条件について、既存の50年から50年以上に見直す。公団は国土交通省からの出資金の一部をベースに取得した土地を、ファミリー向け賃貸住宅を展開する民間事業者に貸し出す支援事業を昨年度からスタートした。ただ、実績は15件の募集に対して契約数が3件にとどまっていた。このため、定期借地権の貸し出し期間の延長を第1弾に、制度の使い勝手を高める。
 すでに契約した3社は東京建物、積和不動産、積和不動産九州。東京建物は東京都江東区東雲1丁目に総戸数433戸の賃貸住宅(延べ床面積3万5033平方メートル)を建設中で、来年3月に完成する予定だ。このほか、積和不動産が横浜市中区元浜町2丁目地区で、積和不動産九州が福岡市の博多駅前4丁目地区でそれぞれ賃貸住宅を建設する予定。
 公団は来年、独立行政法人の都市再生機構に移行するのを機に、賃貸住宅の直接供給のウエートを減らし、民間による再開発や賃貸住宅建設支援事業を強化する。すでに出資金の一部を採算ベースに乗りにくいファミリー向け賃貸住宅の建設支援に充てているものの、制度の活用例が少ないのが実情だ。このため、4月から約150社が参加して都市再生パートナーシップ協議会を設立し、制度の課題の洗い直しや加盟社への情報提供、制度自体の周知徹底を推進している。
 従来、50年だった定期借地権の期間については、民間事業者から50年以上に見直してほしいとのニーズが強く、期間の延長に応じることにした。このほか、公団保有の土地が大き過ぎて採算に乗りにくく、金融機関からの支援がネックになるなどの課題が挙がっており、公団はさらに制度の改善を進める方針だ。

いわせてんか! 都市基盤整備公団は来年7月に「都市再生機構」へと移行する。新規ニュータウン、分譲住宅、鉄道等の業務から撤退し、民間の潜在力を引き出すための業務を行うことになる。新規賃貸住宅建設から原則撤退、民間による賃貸住宅建設を誘導するため、敷地を整備し定期借地権、スケルトンで提供していく。
 昨年からスタートしたこの「民間供給支援型賃貸住宅制度」は、今回、「定期借地期間は、事業者からの提案による50年以上の期間」とされ、また、事業者資格の1要件として、「宅建業法免許を有することまたは事業の実施に必要な知識、経験を有すること」と条件が見直された。
 投資採算をふまえ、定期借地権付住宅の動向、賃貸住宅の需給ニーズに即応した、公団および新法人の事業が期待される。





FCが出店したい立地とは? 〜その最重視ポイント
   
 
いわせてんか!
 大阪府鑑定士協会の調査研究「ロードサイド商業」で、大阪に本社があるFC(フランチャイズ)へ出店・立地に関するアンケートを行った。そこでの傾向値をひとつ。

新規出店地を選定するときに考慮する要因」として一番重視されているもの
   =「背後地人口の質と量
賃料決定要因」として一番重視されているもの
   =「可能売上割合

 売りのポテンシャルと採算。これが最重視されていた。当たり前のことだが売れてなんぼ、実入りがあってなんぼである。消費マインドが冷えている現在、比較的気を吐いているブランドFC。彼らが求める立地とその土地への配分割合は、現在のロードサイドの地価を反映している。









 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成15年8月27日号・完―  
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