週刊アクセス
 
 
平成15年10月1日 第178号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
プロフェニックス、神戸医療産業都市に進出
                ──たんぱく質解析の研究拠点に
三菱商事、物流施設特化型のREIT
住宅買い替え時に8割以上が売却損
                ――不動産流経協調べ
あいまいな“時価”を、その専門家が解釈する
              〜会社更生法における会計士の場合
 
     
プロフェニックス、神戸医療産業都市に進出
              ──たんぱく質解析の研究拠点に
  (日経ネット関西版 H15.9.26)  
   神戸市は25日、「神戸医療産業都市構想」が進むポートアイランド2期地区に、たんぱく質解析サービスを行うプロフェニックス(広島県東広島市)が進出すると発表した。たんぱく質解析の研究拠点を設ける。
 たんぱく質を解析することにより効率的な医薬品開発が可能になる。新薬開発を進める医薬品メーカーや大学、研究機関からのたんぱく質解析の受託事業のほか、自らも創薬事業を手掛ける。
 ポーアイ2期地区にある神戸国際ビジネスセンターへ10月1日に入居する。理研、臨床棟を備えた先端医療センター、基礎研究と臨床研究の橋渡し役を果たす神戸臨床研究情報センターなど医療関連の研究施設が集積しており、研究拠点として適していると判断した。
医療関連企業の進出は45社目。

いわせてんか! 神戸医療産業都市構想が進むポートアイランド地区への医療関連企業の進出に関して、今年に入ってからでは、4月上旬にテルモの進出、9月上旬にはドイツの大手医薬品メーカーであるシェーリングの進出、また、4月中旬には構造改革特区の認定を受けるなどのニュースが見られたが、今回のプロフェニックスの進出で同地区への医療関連企業の進出は45社目となる。
 医療産業が集積するクラスター形成には時間がかかるため、現時点での雇用創出効果はまだ小さく、また、その経済波及効果は限られたものであるようだが、進出してきたベンチャー企業の成功例が出てくれれば、社員の衣食住の消費などによる間接的な経済効果が見られる可能性もある。





三菱商事、物流施設特化型のREIT
  (NIKKEI NET  H15.9.22)  
   三菱商事は物流施設に特化した不動産投資信託(日本版REIT)をつくり、来年秋の東京証券取引所への上場をめざす。一昨年に開設された日本のREIT市場はこれまで7件が上場しているが、オフィスビルや商業店舗が中心で、倉庫や集配センターなど物流に絞ったタイプは初めて。市場の幅が広がり、不動産の流動化が一段と進みそうだ。
 三菱商事は今後1年間で15件程度の物流施設を取得する。対象は東京、大阪など大市場近郊の臨海部や内陸部に位置する物流センター、倉庫を中心とする。メーカーや流通会社が固定資産の流動化を進める中で、物流設備にも売却の波が広がると同社はみている。
 資産規模が500億円程度に達した段階でREITを設立して資産を譲渡し、上場させる。上場後も新規物件の取得を続け、最終的には4000億円の資産規模をめざす。これは簿価ベースでみると、倉庫最大手、三菱倉庫の物流設備資産(建物と土地の合計)の約1500億円に比べ2倍以上の規模にあたる。

いわせてんか! 現在8法人(グローバル・ワン不動産投資法人が9/25に)が上場している日本のREITの対象は、オフィスビルなどの商業施設が中心であり、時価総額は約7,000億円。一方アメリカでは、300近いREITがあり、時価総額は1,000億ドルを超える。物流施設に特化したREITも8つ上場している。
 今後この他にも上場が予定されており、市場規模は拡大されていく模様。それに伴って、REIT間の競争の激化が予想される。このため、ある特定の分野に特化し他のREITと差別化を図る必要があり、上記の三菱商事の物流施設に特化したREITはこういった流れを受けたものである。ただし、リスクが集中する点については留意すべきである。従って今後の主流は、資産をバランス良く配分しリスクヘッジ・安定収入を重視した「安定型」と、特定分野「特化型」に分かれていくと思われる。





住宅買い替え時に8割以上が売却損――不動産流経協調べ
  (NIKKEI NET [9月29日/日経産業新聞])  
   住宅を買い替えた時の売却損の発生率は前年度比3.6ポイント増の82.8%――。不動産流通経営協会(東京・港、岩井重人理事長)がまとめた2003年度の消費者動向調査で、地価下落のなか「損切り」を迫られる実態が明らかになった。
 売却損の発生率はマンションが一戸建てより高い。売却損の額は1000万円未満が29.9%と前年度より5.3ポイント減る一方で、1000万円以上3000万円未満が41.4%と9.4ポイント増えた。取得時期別では、バブルのピーク期を含む1990―94年に購入した住宅の売却損が平均2702万円と最大だった。
 調査は東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県で、購入した住宅の引き渡しを2002年度中に受けた顧客が対象。有効回答は1020。

いわせてんか! 同調査による売却損発生率は今回8割を超えた。この質問を始めた94年度調査では14.1%だったが、96年度から98年度調査にかけて大幅に上昇し、その後も微増を続けている。地価や住宅価格の下落が継続している限り、この傾向は続くであろう。
 この数字は、売却損が発生しても買い替えの可能であった場合ということである。実は、買い替えたくても買い替えられない人のほうが多くて、事態は深刻なのではないだろうか。





あいまいな“時価”を、その専門家が解釈する
                〜会社更生法における会計士の場合
  (月刊「不動産鑑定」2003.10月号、p15)  
   鑑定セミナー「改正会社更生法と鑑定評価の課題(上)−法の考え方と鑑定実務での留意点」での、公認会計士・平林康洋氏(中央青山監査法人)の発言。

  「 会計士の立場としての『時価』の考え方について整理させていただきます。
  ご案内のとおり、今般7月22日に日本公認会計士協会から『財産の価額の評定等にするガイドライン(案)』が公開草案として出されました。・・・(そ)の54項で企業会計上の時価とは『公正な評価額をいう』という言い方をしています。通常それは、観察可能な市場価格をいい、市場価格が観察できない場合には、合理的に算出された価額(をいい)・・・業務用不動産の83条時価(筆者注:会社更生法)について整理すると、原則は市場価格としながら、例外として不動産鑑定士による評価額、あるいは・・簡便的な公表地価や取引事例価格が設けられている(96項2号)ことになります。また、不動産鑑定士による鑑定評価額は正常価格を83条時価として位置付けるというのが会計士の立場です。
  それから、・・105項は非常に興味深い項で、『公正な評価額としての83条時価は全ての利害関係者にとって客観的で信頼しうる評価額であるが、特定の利害関係者である更生会社及び債権者にとっての経済価値を重視しなければならない場合も想定される。このような目的適合性の見地からは、回収可能価額を合理的に算定された価額として適用することができる』という形になっておりまして、・・その趣旨は、いわゆる会計的な時価概念だけで利害関係者の調整に当たると幅がない議論になってしまうという実務的な対応から、83条が求める時価概念にある程度の幅を持たせて、管財人、不動産鑑定士が実務に当たり、会計的な立場からもある程度時価の幅を持たせたと理解しております。」

いわせてんか!  会社更生法第83条は以下のようである。

 会社更生法
(平成十四年十二月十三日法律第百五十四号)

第三章 更生手続開始の決定及びこれに伴う効果等
  第三節 管財人
   第三款 更生会社の財産状況の調査(第八十三条―第八十五条)

(財産の価額の評定等)
第八十三条  管財人は、更生手続開始後遅滞なく、更生会社に属する一切の財産につき、その価額を評定しなければならない。
2  前項の規定による評定は、更生手続開始の時における時価によるものとする。
3  管財人は、第一項の規定による評定を完了したときは、直ちに更生手続開始の時における貸借対照表及び財産目録を作成し、これらを裁判所に提出しなければならない。
4  更生計画認可の決定があったときは、管財人は、更生計画認可の決定の時における貸借対照表及び財産目録を作成し、これらを裁判所に提出しなければならない。
5  前項の貸借対照表及び財産目録に記録すべき財産の評価については、法務省令の定めるところによる。

 

 「時価」の説明は法律の中でされておらず、これを運用する場合に“どうすればいいか”?
 当然にその分野に通暁する専門家が運用指針を示し、これに基づいて運用することが考えられる。会社更生法の場合、会計士の案が具体的だ。
 この草案は会計士のHPで公開され意見を求めている(9月末で終了)。秋には決定稿が出る。額を決めるのだから、その方法は具体的でないと困るし、あらゆる実務的な場面に対応する一定の幅も必要だ。その点、この案は一定踏み込んで書かれてある。
 不動産価格評価なら当然鑑定士が関与すべきで、実際(財)日本不動産鑑定協会からは「会社更生法に係る不動産鑑定評価上の留意事項」がH15.7に出されているが、会員(鑑定士)向けのみである。内容も少し専門に寄り、法文的に参照し辛い。HP公開もされていない。例えば、上記の(案)の問いかけ「不動産鑑定士による鑑定評価額は正常価格を83条時価として位置付ける」に対し、実務に即した回答を迅速に公開する必要はないか?
 問題解決のため、専門家は迅速に行動すべきで、今はHP公開が一番である。最新のデータベースを日々確保する力は、即信頼につながることになる。









 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成15年10月1日号・完―  
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