週刊アクセス
 
 
平成16年1月7日 第191号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
大阪駅ホーム、ドームで覆う──JR西、2011年めどに新ビル
『固定資産の減損に係る会計基準の適用指針について』
     〜会計基準委員会のセミナー講義録発刊
 
     
大阪駅ホーム、ドームで覆う──JR西、2011年めどに新ビル
  (日経ネット関西版 H15.12.10)  
   西日本旅客鉄道(JR西日本)は9日、大阪駅の大規模な改造計画を発表した。ホームの上をドームで覆って中に連絡通路を設け、駅の南北を結ぶ珍しい形となる。駅北側のビルを建て替えて三越が店舗面積5万平方メートルの百貨店を出店する。総事業費は1500億円。2011年の完成を目指す。
 新北ビルは商業施設が入る地上11階のビルとオフィスが入る28階前後の高層ビルで構成。延べ床面積は20万平方メートルで、三越のほかに2万平方メートルの店舗面積を持つ専門店街もできる。シネマコンプレックスと呼ぶ複数のスクリーンを持つ映画館も開設する。年間800億円を超す売上高を見込む。
 ホームをまたぐ形で南北を結ぶ連絡通路の上には広場を作り、ドームの下でホームを行き来する列車を眺められる。

いわせてんか! 大阪駅の改造計画についてJR西日本がその概要を発表した。最近、大阪駅東側を改装してショッピング街「イーストコート ミドー」を開業するなど、部分的な変化は見られるが、ホーム部分などは古びた感じがある。その点、内観パース図で紹介されている今回の改造計画によって大阪駅そのものが大きく変わりそうだ。





『固定資産の減損に係る会計基準の適用指針について』
   〜会計基準委員会のセミナー講義録発刊
  (2003.12.15(財)財務会計基準機構・企業会計基準委員会事務局)  
  「…これは、平成15年11月に、東京、名古屋、大阪をはじめ日本全国9か所12回にわたって開催された「FASBセミナー」の講演内容を、企業会計基準委員会の減損会計専門委員会での討議に参画した講演者が取りまとめたものである。…」(冒頭より)

 講演録シリーズNo.6
  「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針について」 のご案内(2003.12.15)

いわせてんか! 大阪でのセミナーには参加した。
 何百人もの参加者が、専門委員の流暢な解説に聞き入っていた。
 こちらは、不動産鑑定士である。当然、会計・監査の専門家ではない。また、(減損会計に関わる)大企業の財務担当者でもない。もちろん、その人々のためにセミナーは開かれているのだから、こちらが期待している内容を聞けるわけもない。
 “視点”が異なるのである。『不動産鑑定』という視点から企業の保有資産たる“固定資産”を眺めてみると、まず価格アプローチのひとつである“収益還元法”が出てくる。その中でも、事業収益の継続性を思うと『DCF法』が重要に思われる。ここでは、良識と通常の使用能力を持つ“通常の市場人”のマネージメントが生む“標準的な収益”が取り上げられる。割引率も、市場平均的な数値が採用されよう。
 対して、適用指針を見ると、企業独自の観点から導き出された『使用価値』を求めるとする。過去の財務諸表数値経緯、事業計画などに基づいて収益が予測され、割引率はハードルレートやWACCなど企業内部の個別事情を反映した数値が採用される。指針では、そのいずれか高い方を当該固定資産(及び資産グループ)の“企業における価値(=資本投下に対する回収可能価額)”だとする。
 鑑定を“客観的な市場の声”だとすると、指針の使用価値は“主観的な企業の声”である。そこを“高低”で片付けられるのだろうか?という素朴な疑問だった。当然、強制制度としての事務負担や、国際的にも先進的な基準導入による“緩和措置”的発想は致し方ないと思う。しかし、導入趣旨を少しでも実効性のあるものにするためには、その理念を多少なりとも取り入れるべきであると感ずる。
 市場の声は、企業の主観的判断に対する牽制であると思う。
 これを十分に比較検討することで、今の投資の妥当性や将来計画を検証し、必要最低限、株主等利害関係者に対する受託責任を果たすことになるのではないか?減損損失を計上することだけが目的ではなく、その前段階で、十分に投資を有効なものにする“熟慮”を促しているとは取れないか?
 あまりに主観に過ぎると、独善におちいりがちである。セミナー、また、今回の講義録はその意味で、会計に過ぎるようにおもわれる。「結論の背景」というなら、『なぜ、鑑定と使用価値を比較するか』を、もっと描くべきだろう。作成者の視点がそこにないというなら、不動産鑑定士を大いに利用していただきたいと思う。

 

(編集後記)
 お客様のニーズに的確に応えてこそ、“サービス”である。
 問題解決、有効活用、社会貢献…。不動産は依然として重要な資産であり、その専門家である不動産鑑定士の果たす役割は大きいと思う。
 フル稼働3年を超えて、当“週刊アクセス”もさらに有用な情報提供の場として発展したい。我々が提供できる(可能と考える)“サービス”を積極的に訴えてゆくつもりである。

 今年の“週刊アクセス”にご期待ください!









 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成16年1月7日号・完―  
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