週刊アクセス
 
 
平成16年8月4日 第221号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
梅田北ヤード基本計画、「知」と憩いを融合
──水路や屋上緑化、新産業拠点
大都市オフィス、転用加速
知的財産会計と全面公正価値会計
―新たなバリュードライバーの情報を提供する
 
     
梅田北ヤード基本計画、「知」と憩いを融合
           ──水路や屋上緑化、新産業拠点
  (日経ネット関西版 H16.7.31)  
   30日まとまった基本計画は、南北を貫くシンボル道路に水路や緑の街路を設け、車を排除した駅前広場を整備するなど水と緑で都市空間を演出する一方、新産業・技術を創出する「知」の結節点を目指す。昨年10月の全体構想を基に大阪市がまとめた。
 計画は先行開発区域(東地区、7ヘクタール)と、それに引き続く西地区(17ヘクタール)に分け、先行開発区域では大阪駅に面した1ヘクタールに交流と憩いの場となる「人」が中心の駅前広場を設ける。その北側にはロボット開発拠点やオフィスや商業施設、ホテルなどを誘致する。西地区には文化施設などの立地も目指す。
 開発エリアの通行車両を極力排除し、歩行者重視を打ち出したのが特徴。シンボル軸とした南北道路(長さ800メートル、幅60メートル)の脇には北から南へ流れる水路を2本設ける。道路沿いの高層ビルの低層階には屋上緑化を求めるなど「緑の谷」と呼ぶ空間を計画する。

いわせてんか! 全体的な構想は具体的になりつつあり、まずは、先行開発区域となる東地区について2005年度の着工をめざすこととなるが、出資する企業が見えていない状態であり、実現可能性の程度が、まだ、どうなっていくか分からないように感じられる。
 大阪市は、当初、「切り売り」を避け、統一的な開発を図るべく、同地区を一括取得する新会社を官民で設立する構想をたてていたが、再開発を協議する「大阪駅北地区まちづくり推進協議会」は分割取得を認める方向に変更した。24ヘクタールの再開発区域を8つのゾーンに分けて企業などを誘致する基本計画案を承認し、「一括取得」を断念することで開発の進展を促すこととなった。最後の一等地とも言うべき北ヤードであるが、次善の策で計画の具体化を図ろうといったところの様だ。資金面等、実現に向けた具体的な動きが期待されるところである。





大都市オフィス、転用加速
  (日経 H16.7.26)  
   大都市圏で大型オフィスビルの大量供給が続くなか、既存オフィスの転用ビジネスが多様化してきた。未来設計(東京・港)などは東京都心のオフィスビルを有料老人ホームに改装。豪サーブコープ(シドニー)はフロアを小口化して外資系企業や起業家向けの小規模拠点として転貸する事業を加速する。立地条件が良い物件を低コストで確保できるメリットを加速する。
 未来設計は日本橋箱崎町(東京・中央)の6階建ビルを借り受け、改装する。12月開設、定員は80人前後の予定。介護用訪問入浴車製造のサニーペット(東京・新宿)も住友建設(現三井住友建設)が入居していた東京・新宿のビルを転用。9月に有料老人ホーム「サニーパレス四谷壱番館」を開く。地上7階、地下3階建で定員は64人。
 都心では施設入居型の介護サービスが不足している。オフィスの転用は新設に比べ低コストとなるため、両社では今後も対象となる物件を探す。
 サーブコープは今秋、名古屋市に初進出するほか、来年にも東京、大阪で転貸拠点を増設する方向で検討を始めた。名古屋では中心街、栄の賃貸ビルの1フロアを借り切り10〜20m2程度の40室ほどに分け、オフィス家具などを含めて貸し出す。11月をめどに営業を始める。
 同社の転貸オフィスは契約期間が最短1ケ月、保証金が賃料1ケ月分で済む。外資系企業が日本進出の準備部隊の拠点などに使うほか、ベンチャー企業や地方企業の出張時の拠点として需要があるという。
 オフィス転用ビジネスとしてはトランクルームやマンスリーマンションなども拡大。今後、さらに用途が広がりそうだ。

いわせてんか! 「都心部のオフィス街=オフィス」とは限らなくなってきた。利便性の高さから、オフィス街での需要は住宅や老人ホームなど多様化している。オフィスビルの大量供給により、空室が発生し、低コストでコンバージョン業者が参入できる環境にあることも一因である。
 高齢者の方でも、ビジネスに趣味に活動的な人は多く、立地条件が良い都心型老人ホームの需要が増加している。また小口化オフィスは、1円企業設立で安い事務所探している人や物置・小さいスペースが欲しいという事業者に人気がある。コスト削減のため、オフィスについても「必要なときに必要なだけ」設けるという企業も増えており、短期間の賃借が可能な小口化オフィスの需要が増加している。
 なお、この小口化オフィス事業のサーブコープが日本初進出の場を名古屋としたことは、最近の名古屋圏経済の好調さを物語っているようだ。





知的財産会計と全面公正価値会計
   ―新たなバリュードライバーの情報を提供する
  (月刊税経通信 2004.8月号)  
    
   経済産業省企業法制研究会の「ブランド価値評価研究会」の委員長を務めた、早稲田大学教授・広瀬義州氏の『知的財産会計と全面公正価値会計-企業会計制度のリストラクチュアリング-』(p23〜35)より。

『…日本の企業は、長い間、原価(支払対価)−実現主義を基調にする取得原価主義を採用してきた。この取得原価主義は

  (1) 処分可能利益の算定
  (2) 財務監査による信頼性の担保
  (3) 受託責任の遂行状況の報告

という目的に最も適合するところから、日本の企業会計の基本的な計算システムとされてきた。
 しかし、いわゆる会計制度改革、とりわけ1999年の「金融商品に係る会計基準」によって、測定属性を異にする会計数値が財務諸表に混入されることになり、日本の企業会計は処分可能利益をストレートに算定できなくなったばかりではなく、貸借対照表の空洞化ひいては情報提供機能のパラドックス現象などの制度疲労を招いているのも否めない事実であるといえよう。』(p31)

『…さらには、現行企業会計のもとでは、バリュードライバーである知的財産などのインタンジブルはオフバランスのままにされ、簿価と時価総額などにみられる経済的実態からの乖離に加えて、情報の比較可能性をめぐる非対称な処理も顕著になってきている。いいかえれば、このような問題を抱えているにもかかわらず、対処しきれずに、結果的に処分可能利益算定機能も失いかけていることに、現行企業会計がかかえる制度疲労の深さ、問題の複雑さの縮図をみることができよう。』(p32)

『…今日の経済においては、金融資産、土地、設備資産などのタンジブルは、平均投資利益率を生み出すのがやっとの資産になりつつあるのに対し、インタンジブルが重要なバリュードライバーになっている。』(p35、注33)

いわせてんか! 会計基準のグローバリゼーションを主な起因として、金融商品時価会計、減損会計、企業結合会計などが相次いで導入されている。しかし、教授の指摘にあるように“一部のみ”異なった測定方式の会計基準を導入した結果、出てきた利益や財務諸表計上数値が何を表しているのかが曖昧になっている。
 だとすれば、統一基準として“全面公正価値会計”を導入すればよいかというと、問題はそう簡単ではないらしい。商法・法人税法・証券取引法のいわゆる“トライアングル体制”がガッチリ組まれていること、また、特に税法会計ベースで実務が行われていることがネックであるとのこと。例えば、減損会計適用指針に対する企業側の意見として、税法上の損金算入の希望がよく聞かれていることから推察できる。
 しかし、企業価値の重要な一角を占めつつある“知財”を適正に開示できないのも現実。既存の「有形資産」の収益性の頭打ちを考えると、利害関係者が欲する開示事項に対する阻害要因となりつつあるともいえる。
 そこで重要なのは、会計制度の一部導入は仕方ないとして、情報提供・開示の実質的有用性を担保することではないか。そこには、基準とコンセンサスが必要となろう。開示に対する認知・信頼が高まってこそ、的確な判断が可能となる。
 その中に、資産の評価が含まれている。新会計基準で採用された、各々の適用資産の「時価」。評価技術など有用な開示が確保されれば、全面的ではないにしろ、過渡的には投資判断等に有用な情報を提供することにつながると考える。

 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成16年8月4日号・完―  
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