週刊アクセス
 
 
平成16年9月29日 第229号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
マンションの管理情報、データベース化へ 国交省
大企業の工場・事業所、正社員の中途採用活発に──長期の人材確保
マンション過剰供給による都市の二極化
 
     
マンションの管理情報、データベース化へ 国交省
  asahi.com H16.9.26)  
   全国のマンションの修繕記録や管理状況などのデータベース作りを、国土交通省が05年度から始める。インターネットによるデータの閲覧を06年度から可能にし、中古マンションの入居希望者が、物件の管理情報や管理組合の規約などを事前に知り、比較できるようにするのが狙いだ。
 管理情報は全国約75,000のマンション管理組合から、任意で集める。データベース化するのは各マンションの管理会社名と修繕積立金、管理費、過去の修繕内容、規約改正の記録など。入居者のプライバシーに配慮するため、ネットでの閲覧には一定の制限を設ける考えだ。
 国内のマンションは約450万戸あり、1,200万人が居住。中古マンションの年間売買件数は約45,000件とされる。国交省は、管理情報のデータベース化で、物件間の比較をしやすくし、中古市場の流動化を進めることもめざす。05年度予算の概算要求には約2億円を盛り込んでいる。

いわせてんか! よく「マンションは管理を買え」と言われるように、マンションの価格形成において管理の状態の良否は大きな要因であると考えられている。
 今のところ、主に、管理の良否の状態は、その程度に応じてマンションの外観や共用部分などに表れ、これらの観察によって間接的に管理状態を判断しているという状況にあると思われる。これが、記事で紹介されているように、この評価制度により修繕積立金、管理費、過去の修繕内容、規約改正の記録などが情報として広く公開されれば管理の良否の状態の直接的な判断材料となり得るが、比較可能性の高いものが望ましい。
 例えば、管理費・修繕積立金については、規模や築年数に応じた相応な額が徴収されている必要があるが、実額の情報だけでは比較は難しい。
 この点、管理費・修繕積立金の徴収金額について、評価対象マンションにつき、平均専有面積○○m2以上・経過年数○○年未満の場合○千円以上というような基準を定め、それに基づく評価・格付けのようなものが実施されれば有用であるように思われる。(東京都優良マンション登録表示制度の認定基準では上記の様な基準を定めている)
 また、管理費の滞納金が増えれば共用部分の管理が困難になり、修繕積立金の滞納が増えれば建物の修繕ができず、管理運営の破綻がスラム化を進行する可能性が大きくなるという点で滞納状況に関する情報も購入希望者にとっては有用な情報である。
 この点では、例えば、評価対象マンションにつき、○○ヶ月以上滞納の戸数がマンション個数全体に占める割合は○○%であるという情報が公開され、それに基づく評価・格付けのようなものが実施されれば、他のマンションとの比較がしやすくその有用性は高まるものと考えられる。(国土交通省の「平成15年度マンション総合調査結果について」の管理組合向け調査結果によると、32.1%のマンションで3ヶ月以上の管理費・修繕積立金の滞納世帯が存する)情報収集は任意によるものであり、またプライバシーの問題もあり、その実効性は見えないが、当該評価制度が、購入希望者による実際に物件を見回る前の事前的な調査としての利用などを通じて認知が高まることにより、管理状態の評価に対する位置づけが(公開されることによる一定の縛りにより)変化し、供給側(住替え希望者など)に対するインセンティブ(利用価値だけでなく市場価値に対する意識)としての機能の充実も見られれば、この評価・格付け制度の影響(特に中古マンション)は大きくなるものと考えられる。

 
 
大企業の工場・事業所、正社員の中途採用活発に──長期の人材確保
  (日経H16.9.28)  
   大手企業が工場・事業所単位で正社員を中途採用する動きが近畿で相次いでいる。今回の景気回復局面で企業は、派遣・パートなど非正社員を主流に追加採用してきたが、業績や設備投資の回復を受け、人員構成など生産現場の長期的な人材配置の観点から、優秀な人材を正社員として採用し始めた。景気は減速懸念が出てきているが、雇用情勢は求職者に追い風が続く見通しだ。
 京セラは今夏、滋賀八日市工場(滋賀県八日市市)で現地のハローワークを通じ、正社員を11人中途採用した。同工場で新規事業の小型電子デバイスを本格的に量産し始めたのに伴い、製造ラインの部品組み立てなどの要員を急募した。「国内工場で10人単位のまとまった数の正社員の中途採用をしたのは初めて」という。
 村田製作所は野洲事業所(滋賀県野洲町)で今夏に9人の正社員を中途採用、現在さらに12人をハローワークで募集中だ。同事業所では通信機器向けコンデンサーの電極材料を増産しており、「クリーンルーム内で薄膜を加工する作業など、熟練を要する生産ラインが人手不足になった」。2000年前後のIT(情報技術)バブル崩壊後、同事業所は一般職の正社員の採用を控えていたが、業績回復で積極採用に転じた。
 神戸製鋼所は昨年度から、加古川製鉄所(兵庫県加古川市)と神戸製鉄所(神戸市)の2事業所で、ハローワークや一般求人誌を通じ正社員の中途採用を始めた。今年度は70人を募集中で現在50人を採用済み(昨年度は30人採用)。来年度も70人前後の求人を予定している。
 高級鋼材の増産や団塊の世代の大量退職期に備え、「生産ラインのクレーン機械などを操作する即戦力の人材が多数必要になっている」という。

いわせてんか! 諸機関による近畿企業の業況判断調査では、いずれも大幅な改善が報告されている。デジタル家電に引っ張られた一般機械や情報通信機械の好調、さらには、近畿には市況回復が著しい鉄鋼や化学などの素材産業が集積しているため、経済全体のけん引役となっている。落ち込みは激しく長かったが、回復は急ピッチで進んでいる格好だ。大企業主導の景気回復もようやく中堅企業に広がり始めた。
 ただ、企業収益・雇用情勢の改善を受けて、新たに職探しをする人が労働市場へ参入しており、また、転職を希望する自発的離職者の増加により、逆に失業者が増えているという厳しい状況も見られる。

 
 
マンション過剰供給による都市の二極化
   
   マンション建設ラッシュは地方にも波及しているが、建設ラッシュの続く超高層マンション・大規模マンションともに、完全在庫を抱える問題が増え、売れ行きの二極化がより鮮明になっている。その売れ行きを左右するのは企画力。自宅とオフィスを兼用できるマンション、各マンションでは、プールやジムなどの共有施設をはじめ、スーパーや託児所、病院の誘致、さらには高級ホテル並みのサービス提供など各社の差別化を競い合っている。
(週刊ダイヤモンド 2004.9.25)

 野村不動産は主力のマンション分譲事業で、50−60歳代の消費者の需要取り込みを強化。子供の独立をにらんでファミリーマンションの一部で間取りにゆとりを持たせた物件を来春完成する。分譲マンション市場では30歳代を住宅の第一次取得者と団塊世代が需要を下支えしている。
 一方、団塊世代のニーズは多様化、郊外の戸建て住宅を売却し都心に移る「買い替え」のほか、個人事務所やセカンドハウスとしての購入も増加。同社は2004年度、供給戸数を前年度の約4000戸から5000戸超に引き上げる計画。団塊世代に合わせた商品企画を進めるとのことである。

(日経産業新聞2004.08.24)


いわせてんか! 〜その1

 人口および世帯増加が鈍化しているにもかかわらず、バブル崩壊後も住宅の供給は維持され、住宅資産のデフレは進行している。
 地価下落、低金利に加え、高層・高容積化を緩和する建築基準法の改正や都市再生措置法の制定により、都心部への住宅供給はますます過剰となっており、都市としての連続性という意味において、マンションの過剰供給・都心回帰が郊外との二極化を進めている。
さらにはバブル期に建てられた中古マンションの老朽化問題も浮上している。
 マンション建替え円滑化法により建替えしやすくなったとはいえ、資金面等により建替えを断念するケースも多く、今後ますます低廉化、老朽化が進む中古マンションは増え続けることが予想される。
 これによりさら都市の空間的な連続性はフラグメント化を進めていくと考える。
 今後さらに消費者ニーズに合わせたマンション建設ラッシュは続き、価格破壊も予想される中、戦後から都市を一新すべく、住宅・都市政策として促進されてきた住宅供給ではあるが、見直しが必要な時期に来ているのではないだろうか。

 〜その2

 買う方としては、ありがたい話である。
 供給過剰の状態で売ろうとすれば、必然、過剰なサービスで対応しなければならない。そのサービスとはなんだろう? 不動産であれば、なんといっても「立地(ロケーション)」である。その位置は絶対無二である。駅や商業施設からの接近具合、斜面の向きや南側に建物があるか否かといった個別の条件は如何ともし難い。また、その位置は周りの地域の一部である。街の歴史や風格、たたずまいは一朝一夕に出来るものではない。
 過剰な状態、完成した物件が何件もはしごできる状態では、消費者はこの条件を、その目で完全に“比較”することが可能になる。立地がいい場合はもちろん、立地が悪ければ特に、記事でレポートされているような“企画力”が問われることになる。需要者が欲しているニーズや動向に“はまれば”、バカ売れ、もしくは立地のマイナスをカバーできるだろう。しかし…
 結局、両方ともなければ“安さ”しかなくなる。さらに、その地域や企画を欲する需要者が“飽和状態”になっていれば、ちょっとやそっとの安さでは売れないだろう。完全在庫はこの兆候を示唆していると考えられる。
 減損会計の完全導入まであと1年を切った。昨年終わりごろから増えつつある社宅や遊休不動産の売却は、比較的魅力的な地域のマンション適地供給を加速している。『いい場所で、こんな値段か…』が認知されてしまえば、先発の物件は一気に苦戦を強いられる。
 分譲マンションの“仁義なき争い”は、ここ当分続きそうである。

 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成16年9月29日号・完―  
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いただいたのですが、開けていないもので・・・