週刊アクセス
 
 
平成17年6月22日 第267号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
ビジネスホテル、大阪都心に新顔続々──PET検診やエステ併設
関西9生協、スーパーに押され低迷
─昨年度の経常益13%減、「安全な食品」強み薄れる
地代のプラスアルファ部分 −有名なテナントや証券化の場合
 
     
ビジネスホテル、大阪都心に新顔続々──PET検診やエステ併設
  (日経ネット関西版 H17.6.8)  
   大阪市内でビジネスホテルの新築、改装が相次いでいる。会員制の検診施設やエステを取り入れるなど、各ホテルとも客をひき付けようと懸命だ。開業ラッシュの背景には地価の底打ちや低金利で、土地・建物を所有しやすい事情がある。
 全国に会員制リゾートホテルを展開するリゾートトラストは7日、大阪・心斎橋にビジネスホテル「ホテルトラスティ心斎橋」をオープンした。客室数211のうちシングルルーム(1泊1室8,800円から)は127室。たばこのにおいが気になる女性客にも配慮し、禁煙の客室も94用意した
 同ホテルの最大の目玉はホテル地下1階と2階に設置した最先端の機器をそろえた会員制の検診センター「ハイメディック大阪」だ。約45億円の総事業費とは別に、30億円を投じて陽電子放射断層撮影装置(PET)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの機器をそろえた。会費は約400万円、年会費が約15万円かかるが、がんや脳疾患の検査と組み合わせ、宿泊客を確保する。
 同社は東京でも同様のホテルを計画していたが、「地価の安さや市場規模を判断して大阪への進出に踏み切った」(伊藤勝康社長)という。
 昨年6月に閉鎖したビジネスホテル、ライオンズホテル大阪(大阪・北浜)の跡には7月8日、「ホテル ザ・ベルタ北浜」がオープンする。飲食店経営のベルタ(大阪市、辰巳義和社長)が運営する。客室数196室のうち、シングルルーム(同9,030円)が153室を占める。
 建物の構造は変えずに内装を全面的に見直す。1階にカフェ、5階にエステを置く。ビジネス客だけでなく、エステと連動した企画などで、週末の女性客の利用も見込む。2階には直営の中華料理店を設ける。大阪・南堀江などで人気飲食店を経営するノウハウをホテル経営に生かす。
 全国でホテルとマンションを展開するアパグループ(東京・港、元谷外志雄代表)は現在、大阪市内に2ホテルを所有する。2006年夏から07年秋にかけ、淀屋橋、本町、天王寺、肥後橋、谷町4丁目に計5ホテルを新規に開業する。
 同社の「アパホテル」は宿泊料金をシングルで7,000―1万円程度に設定。ネット経由で早期予約すると最大3割値引きするなどのサービスを打ち出し、首都圏などからの出張客を取り込む。

いわせてんか! ビジネスホテルについては、近年、宿泊特化型の進出が相次いで見られてきた。(平成16年3月17日 第201号 ビジネスホテル、宿泊特化型が相次ぎ進出 参照
 リストラにより経費支出が抑えられているため宿泊料に敏感なビジネスマンが付加機能よりも価格を優先してホテルを選ぶ傾向に対応した動きと考えられるものだ。  これに対し、記事で見られる、ビジネスホテルの多様化の動きは、かなり対照的なものである。低価格志向だけでない付加サービスを加えることによる差別化。利用者のニーズが価格のみならず、付加サービスを求めているためであろう。各社各様に、それに対応したマネジメントの合理化を図っている傾向が見て取れる。

 
 
 
 
関西9生協、スーパーに押され低迷
   ─昨年度の経常益13%減、「安全な食品」強み薄れる
  (日経  H17.6.16)  
   関西の生活協同組合(生協)の業績が、スーパーとの競合に押され低迷している。供給高(売上高)は1999年度以降減り続け、2004年度は経常剰余金(経常利益)も前年度比13%の大幅減益に転じた。「安全な食品」に強みのあった生協だが、スーパーの商品力強化で価格競争が激しくなり、増益を維持できなくなった。各生協は消費者を呼び戻すため、商品の共同仕入れによる価格引き下げを急ぐ。
 9生協合計の売上高は前年度比1%減と減収傾向に歯止めがかからない。6生協が減収、7生協が経常減益と大半が減収減益だった。対照的に関西のスーパー6社は合計で2%の増収、4%の経常増益を確保した。昨年4月から導入した消費税総額表示で様々なタイプの小売業に買い控えが起こったが、生協は価格引き下げで集客した食品スーパーに顧客を奪われた。
 生協で日本一の規模を誇るコープこうべは2年ぶりの減収減益。地盤とする阪神間に昨年11月にイトーヨーカ堂を核店舗とする大型商業施設「ららぽーと甲子園」が開業、周辺にある「コープ浜甲子園」などの数店舗が影響を受けた。
 他の生協の店舗もスーパー各社との競合が激しくなっている。
 大阪よどがわ市民生協は、主力店舗の出口店(吹田市)の近隣にライフコーポレーションが昨年6月に新規出店し、出口店は20%以上の減収を強いられた。ならコープは昨年8月に新規出店した「コープ学園前」(奈良市)が、開業の1カ月前に近隣に出店した食品スーパーの万代(大阪市)と顧客を奪い合った。コープ学園前の売上高は「当初計画に届かなかった」という。

いわせてんか! 私は生協の組合員で毎週共同購入をしている。他店にはないお気に入り商品が多々あったり、要望が商品開発に活かされたりすることも魅力であるが、生協を支持する最大の理由は、野菜の産地や生産者・農薬使用量レベル、加工食品の遺伝子組み換え原料使用の有無等々の情報提供と、一般より厳しい安全基準をクリアした商品が売られているからである。但し、競合スーパー並の価格引き下げの努力は切に希望するところである。
 昨今、「食の安全」に取り組んでいるのは生協だけの話ではない。ハイレベルの「安全」「安心」の要求に応える供給者があってほしい。都心も郊外も小売商業店舗の競合は激化しており、どの店も生き残りを賭けている状況であるが、消費者ニーズの個性化・多様化の一端として、「安全」に特化した専門店は生き残ることが可能だと思うのである。食の安全競争が激化するのは歓迎すべきことで、社会全般的に食品の安全性が高まることを、一消費者として望む。

 
 
 
 
地代のプラスアルファ部分 −有名なテナントや証券化の場合
  (不動産鑑定 2005.7)  
   鑑定セミナー『借地権と底地に係る権利者の権利の割合について−法的権利と経済価値をどう捉えるか』での、澤野順彦氏(弁護士・不動産鑑定士)と村木信爾氏(住友信託銀行・不動産コンサルティング部)の議論から…

澤野 『…合理的バブルができ上がる場合は、一つは需給関係、市場性から出てくる場合と、もうひとつは証券化とか何かで本来の土地、建物の経済価値以上に付加価値がつくようにして売る場合があるのではないかという気がします。そういうプラスアルファの部分は、本来の土地建物、不動産の価値が幾らかということがまさに問題なのかもしれませんが、人工的に形成される合理的バブル部分として考えうるのではないかと・・思ったのですが…』
 
村木 『本来の土地、建物の経済価値以上に付加価値がつくようなケースとしては、合理的バブルの場合と、営業権が付着していると考えられる場合があります。澤野さんが今例として出された証券化のケースなどもその一例をと思われ、もっと身近なものでは、高収益の特殊なテナントが入っている賃料の高いビルの収益価格のケースが挙げられます。合理的バブルと営業権は分けて考えるべきだと思います。…単なる土地・建物をプロが金をかけて投資家を組成して、証券化する。そこに企業努力があり、一つの組織体ができるわけです。不動産はその中の最大の構成要素ですが、その上の部分に組織体としての一つのゴーイングコンサーンバリューが生まれています。つまりこれは営業権です。』

いわせてんか! 今月の不動産鑑定のセミナーでは、借地権や地代を法的(権利)側面と経済的側面に分けて、各々の専門分野の方々が議論している。これは、H17.5(社)日本不動産鑑定協会・法務鑑定委員会・不動産権利割合専門委員会発表の「借地権と底地に係る権利者の権利の割合に関する検討報告書」を受けての対談であった。
 「合理的バブル」とは、地価上昇下における経済価値を超える価格形成の部分をいうとする。それと証券化や優良テナントによるプラスアルファ部分を分けて考えよという村木氏の指摘である。これを「営業権」と総括し、ゴーイングコンサーンバリューだとする。
 バブル期の借地契約で、今となっては「非常に高い」と主張する訴訟がある。その場合、本来の意味でのバブルの清算は必要だが、企業努力としての営業権部分まで切り下げることは不当であろう。“どこまでがそれか”という議論はまた難しいものではあるが、不動産本来の価値と、これを利用して賃貸や事業収益を生み出す企業の価値は峻別しなければならない。
 これがいわゆる「収益分析法」的に、事業・賃貸収益から「帰属地代」を求めていくベースとなる。上記、継続企業の営業権に対する適正な分配分をとった後の残余は、当然不動産に帰属する取り分であろう。
 検討報告書では、このように地代や借地権の中身を属性別に分類し、各々について分析した上で、適正な権利割合とこれに対する価値を把握しようと試みる。社会現象として、このような揉め事(賃料や補償などが高い・安いといったこと)が多く起こっていることに起因するものだろうが、新規の賃料と継続している契約賃料が、どちらが高いかよくわからなかったり、その構成要素の説明が不十分であったりすることが原因である。
 特に、高度な商業地域や事業を行っている場合に顕著であり、十分な議論と一定の方向性が望まれる。

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成17年6月22日号・完―  
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東京研修おみやげ〜その1 『浅草のどら焼』
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