週刊アクセス
 
 
平成17年9月7日 第278号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
スーパー中枢港湾の道路網、コンテナ車対応に・国交省方針
労働分配率2年ぶりに上昇――企業収益、雇用者所得潤す
アークヒルズが社会・環境貢献緑地評価の最高ランクを取得 森ビル
価格.comとヤマダ電機−仮想店舗と実態店舗の微妙な関係
 
     
スーパー中枢港湾の道路網、コンテナ車対応に・国交省方針
  (日経ネット H17.8.18)  
   国土交通省は国際貨物船の利用が多いスーパー中枢港湾(京浜、伊勢湾、阪神)周辺の道路網を2006年度から5年間で整備し、大型コンテナ積載車が積み替えなしでトラックターミナルなど主要な物流拠点まで到達できるようにする。積み替えや迂回(うかい)に伴う事業者の負担を軽減し、輸送時間を短縮し、物流の効率化を進める。
 船舶用のコンテナは急速に大型化しており、現在の標準的な大型コンテナ(12メートル級)を積むトラックは重さが最大44トン、高さは4.1メートルに達する。道路法では重さ20トン、高さ3.8メートルが上限とされ、道路管理者が指定した区間のみ上限が緩和されている。

大阪港利用する海上輸送、補助利用相次ぐ──陸運からシフト

(日経ネット関西版 H17.8.18)

 物流会社などが大阪港を利用し、輸送手段を環境負荷のより少ない方法に移す「モーダルシフト」の試みを相次いで始める。京都議定書の発効を受け、大阪市は大阪港の海運を利用したモーダルシフトに最高1000万円を補助する支援事業を始めており、これを利用するのが特徴だ。
 王子製紙系の運輸会社、王子物流(東京・中央)は従来トラックを使っていた王子製紙呉工場(広島県呉市)から大阪・名古屋向けのクラフト紙などの輸送を、今秋にも一部船に転換する。具体的には呉から大阪まで船を使い、大阪―名古屋間はトラックを利用する。
 貨物量は年5万4000トン程度を想定。市の補助金で近く呉港に船積み用テントを設ける。「環境負荷を減らすことで、企業イメージを向上できる。船は時間はかかるが、コストもある程度削減できる」(王子物流)と見る。
 名門大洋フェリー(大阪市)は子会社のフェリックス物流(同)を通じて、リサイクル燃料になる廃プラスチックの輸送を始める。三重県伊賀市から大分市までの搬送のうち、大阪―北九州間をフェリー便で運ぶ。
 名門大洋フェリーは補助金で、近く配送用の専用荷台(20トン積み)を3台購入する。貨物量は年4800トンを予定。「フェリーにはトラックの運転手は乗らず、荷台だけ運ぶので、全経路をトラックで運ぶより安くつく」(営業統括部)という。
 大阪市は「大阪港の利用が増えるメリットも大きい」(港湾局)とみている。

いわせてんか! 平成17年4月6日 第256号 大阪港利用促進へ、空コンテナ中継地を整備──大阪市が京都・滋賀で検討で見た、大阪港の利用促進を目指して大阪市が滋賀県か京都府の内陸部に貿易用の空(から)コンテナの共同デポ(中継拠点)を整備するという計画。港からのトラック輸送において、空コンテナの運送コストが大きいことから考案されたものであった。一つ目の記事にある、スーパー中枢港湾の道路網、コンテナ車対応にするという方針も目的は類似しているように思う。積み替えや迂回に伴う事業者の負担を軽減することにより、中枢港湾を活性化することを目的としているが、共同デポの整備計画と同様、輸送時の排ガスによる環境負荷を減らす効果もある。
 また、同号で見た内航海運利用に助成──大阪市、モーダルシフト推進へ荷主企業について、今年6 月23 日から7 月20 日の間に事業募集を行った結果、8 件の申請があり、全て認定された。内訳は、(1)内航船等を活用したモーダルシフトシステムの構築に対する補助事業が5件、(2)内航フィーダーコンテナ輸送(※1)に対するインセンティブ補助事業が3件。(参考:平成17年度認定事業) 2つ目の記事で、王子物流のコメントにあるように、企業側としては、企業イメージの向上と補助制度の活用による実質的なコスト削減の効果を図っている。
 実際上、これらの事業の全てがモーダルシフトに直結するものとは捉えがたい(※2)が、ただ、トラック輸送時の排ガスによる環境負荷を減らすため、国・自治体による輸送施設の整備や助成制度に関する取組みが活発なものになってきており、企業側がそれに着目している様子が窺える。

※1 内航フィーダーコンテナ輸送とは、外国船が寄港しない国内各港と、これら外国船が寄港する国内主要港の間を接続する海上輸送サービスを使ってコンテナを輸送することをいう。この点、コスト面から、国内主要港ではなく、釜山、高雄、香港など東アジアの各港をハブ港とし日本の地方港へ輸送するという外航フィーダーコンテナ輸送の方が優位にあるという試算がある。
※2 例えば、今回の(2)内航フィーダーコンテナ輸送に対するインセンティブ補助事業に対する申請のうち、2件は釜山港を活用した外航フィーダーコンテナ輸送から内航フィーダーコンテナ輸送へ輸送経路を移行するものである。モーダルシフトに対する効果としては、物流の効率化という観点からも、トラック輸送時の排ガスによる環境負荷を減らすという観点からも、モーダルシフトに直結するものとは捉えがたい。

 
 
 
 
労働分配率2年ぶりに上昇――企業収益、雇用者所得潤す
  (日経 H17.9.6)  
   好調な企業収益が雇用者所得の増加につながっている。財務省が5日発表した4〜6月期の法人企業統計では企業の人件費が4・四半期連続で前年同期の水準を上回った。企業の付加価値がどのくらい労働者に回ったかを示す「労働分配率」は約2年ぶりに上昇し、2001年後半からほぼ低下を続けてきた基調が変化する兆しが出ている。
 財務省は法人企業統計で金融・保険を除く資本金1000万円以上の約2万社を調査した。4〜6月期は引き続き企業業績が好調で、売上高は321兆3000億円と前年同期を3%上回り、経常利益は13兆1000億円と前年同期比12.9%増となった。
 今回の調査では人件費の増加が鮮明だ。4〜6月期の人件費総額は1.5%増の42兆1000億円。1〜3月期と比べても0.5%、2000億円増えた。中でも従業員給与(31兆7000億円)の増加が目立つ。前年同期比で4200億円増、前期比で400億円増となっている。
 人件費の増加は労働分配率の改善にもつながる。分配率は人件費を、企業が生み出す付加価値(人件費や経常利益、減価償却費などの合算)で割った指標。大和証券SMBCが四半期ごとの人件費や経常利益を季節調整して労働分配率を算出したところ、4〜6月期は0.63となり、1〜3月期よりも0.004ポイント高くなった。前期比でのプラスは季節調整後の経常利益が前期よりも減少した2003年4〜6月期以来だ。
 今年の4〜6月に人件費が増加した背景には就業構造の変化がある。従業員数は前期比で46万人減の約3200万人。3・四半期ぶりのマイナスだったが、逆に人件費総額は増えた。大和証券SMBCは「パート比率の上昇に歯止めがかかり、パートよりも賃金が相対的に高い正社員を中心にひとり当たりの収益還元が進んだ」とみる。
 ここ10年間の労働分配率をみると、当初はバブル崩壊の余波で企業収益が悪化する一方、人件費の削減がさほど進まず、高止まりの傾向が目立った。ピークは0.7台だった1998年前後。それが2001年ごろからは企業のリストラで人件費の抑制が急速に進み、今度は下落基調に転じた。
 企業の収益の伸びからみると、さらに人件費を増やせるとの指摘もある。明治安田生命保険よると、企業の余剰資金は設備投資や人件費負担を除いてもなお60兆円台と高水準。企業が人件費にどこまで振り向けるかによって、景気回復の力強さも変わることになる

いわせてんか! 労働分配率とは、企業の生産活動によって生み出された付加価値がどのくらい雇用者に回っているかを示す指標であり、企業が収益から雇用者に給与などとして支払っている比率が分かる。法人企業統計をもとに試算する場合は、経常利益や減価償却費などの付加価値に対する人件費の割合をみるのが一般的。ほかに国民所得に占める雇用者報酬の割合をみる手法もある。
 ところで、2002年から始まった景気回復局面は現在までで約3年半となり、戦後3番目の長さとなっている。しかしこれまでの企業収益の改善は、従業員の人員整理、給与減額や下請け業者への発注費削減などによってもたらされた見かけだけの回復であった。つまり大企業や一部の優良企業の収益が改善されているだけで、そのしわ寄せを受けた中小企業や従業員は依然として厳しい状況が続いていた。
 しかしながら、今回の法人企業統計によると、企業利益の雇用者への分配率が上昇の兆しをみせ、この状況が今後も継続すれば本格的な景気回復・上昇局面をむかえることとなる
 なお他の指標においては、「内閣府が6日発表した7月の全国消費動向調査によると、消費者心理を示す消費者態度指数は、前月に比べ1.5ポイント上昇(日経ネットH17.9.6)」する一方で、「総務省が6日発表した7月の全世帯の家計調査によると、1世帯あたりの消費支出は29万3839円となり、前年同月比3.7%減少(同H17.9.6)」と、好材料とそうでないものと様々であるが、全般的には上向き傾向の数値を示している。雇用についても「大手銀、小口金融強化へ今年度中途採用1000人規模に拡大(日経H17.8.18)」など、この10年ほどの間に人を減らしすぎ、特に20〜30才台の実動部隊が不足してしまっている企業が積極的な採用姿勢を見せている。
 原油高や米国・中国の景気減速等の懸念もあり、順調に回復が続くかどうか不透明な側面もあるが、今後、景気の本質的な回復が続くことを熱望する。

 
 
 
 
アークヒルズが社会・環境貢献緑地評価の最高ランクを取得 森ビル
  (住宅新報 2005年9月6日)  
   森ビルは9月6日、同社が緑化管理運営する「アークヒルズ」が「SEGES社会・環境貢献緑地評価システム」の最高ランク「Stage3」の認定を取得したと発表した。
 「社会・環境貢献緑地評価システム」は都市緑化基金が主催する緑化活動を評価するシステムで、緑地の保全・創出活動を通じて社会や環境に貢献している企業などの緑地を認証する。
アークヒルズは約20年にわたり地域に豊かな緑を安定的に供給しており、自治体と連携した住民参加による公共部分の管理やガーデニングクラブの活動が地域に貢献しつつ環境コミュニケーションに役立っていること、火災時の延焼防止などの緩衝機能や人工地盤上の緑地が十分な機能を発揮していることが評価された。

いわせてんか! 市街地が拡大する一方で、それに伴う自然環境の減少、環境汚染や生態系の衰弱が大きな課題となっている。
 その環境改善にあたっては自治体レベルの都市計画基本法に基づいた都市マスタープラン、都市緑地保全法に基づいた基本計画などにおいて都市計画・緑地計画の基本指針を示し、緑地の保全などの促進が進められている。しかし、自治体おける対策には予算制限等によりすべての緑地を保全の対象とすることは難しく、民間企業等による協力は不可欠である。
 CSR(企業の社会的責任)活動が活発化する昨今、企業が保有する緑地を活用した社会や環境への貢献活動が注目されている中、財団法人都市緑化基金が実施しているSEGES(シージェス:Social and Environmental Green Evaluation System)という企業の緑化への取り組みを数値で評価する評価取得システムがある。
 これは、民間が所有する土地で緑地の保全・創出活動に取り組んでいる株式会社、有限会社、財団・社団法人等の事業者や市民団体等を対象に認定するもので、300m2以上の緑地面積を保有している企業を評価対象に、応募方式により、「緑地管理担当者の明確化」「地域の緑地保全活動への支援」「二酸化炭素固定機能」など25項目にわたって事前提出資料に基づく現地審査の実施、評価委員会による評価の確定、評価結果の登録により取得できるものである。2005年度から始まった新しいトレンドであるが、こういった都市緑化を広げていくためには、やはり企業へのインセンティブが必要で、現在、税制優遇措置(固定資産税等の軽減措置等)などの実現が期待されている。(参考:http://www.pref.kanagawa.jp/press/0507/27038/
 総合設計制度で行われている容積率や建物の高さ制限の緩和といった地方自治体の都市計画マスタープランの実現のための誘導手法のひとつに組み込まれ、ヒートアイランド現象の軽減、企業所有の緑地の有効活用に寄与できるものと期待したいものである。

森ビル(株)HPプレスリリース
SEGES(シージェス)公式HP

 
 
 
 
価格.comとヤマダ電機−仮想店舗と実態店舗の微妙な関係
  (各サイトより)  
  価格.com
 価格.comは、パソコンや家電をはじめ、様々なジャンルの商品の比較サービスを提供する、国内最大規模のインターネット比較検索サイトです。全国の参加店舗の協力のもと、 約17万点の商品に関する価格情報をはじめ、ユーザーのくちコミ情報、評価情報などあらゆる情報を集約し、中立・公平な立場からご提供しています。2005年7月31日現在、1ヶ月間で約2億7,500万ページビューのアクセスを数え、商品を上手に「比較・選択」するためのサポートサイトとして、月間約627万人の消費者の皆様に幅広くご利用いただいています。(サイトより引用)

ヤマダ電機 当社は常に「お客様第一」の視点で「創意工夫」を実践し、キャッシュ・フローを重視したローコスト経営に取り組む家電販売業界のリーディングカンパニーです。
 「品揃え」「サービス」「価格」という3本柱に、「利便性」を加えた、「明るさ・楽しさ・優しさ」をコンセプトにした店舗造りを行ってきました。
 現在はPDPテレビ・液晶テレビ・DVDレコーダー等のデジタル商品の充実に注力すると主に、AVソフト、玩具、ブランド商品、ゴルフ用品、中古パソコン、ホワイトボックスPC等、品揃えの更なる強化を図ります。 また、アフターサービスをはじめとするソリューションビジネスにより他社との差別化を図るとともに、21世紀の企業の責任としてリサイクル事業にも積極的に取組む等、これまで以上に業界の一歩先を行く戦略を果敢に展開しています。
 こうした取組みにより2005年3月期には国内専門量販店として初の1兆円を達成致しました。また、2005年中には家電量販店として初めて47都道府県全ての店舗網を構築します。
 今後は、「完全なプライスリーダーとしてメーカーへの企画提案力アップ」「利益率の改善と収益性の向上」を実現する為現状に甘んじることなく革新的かつ戦略的な経営を推進し、売上高2兆円の達成と市場シェア20%の獲得を目指します。(山田昇氏・代表取締役社長兼CEOの言葉。サイトより引用。)

いわせてんか! 私事だが、現在パソコンを探していてネットで情報収集。特に、上記2サイトには拠るところが大きい。
 価格.comは商品情報サイトとしては老舗。価格情報と、主に消費者からの書き込み情報で、対象商品の“実態”を探る。当然、戦略として書き込んでいる人間もいるだろうが、その他の人間を排除できないため、攻防を見ていると大体の優劣が見えてくる。これと価格を比較して購入のガイドラインとする。
 一方、ヤマダ電機はいわずと知れた家電量販店の現在の覇者。ヨドバシ・ビックのカメラ軍団、前覇者のコジマを抑えて、飛ぶ鳥を落す勢いである。ある情報では、ヤマダ電機は在庫を抱えない。新発売当初から短期のサイクルで価格引下げを行い、店頭で“売り切る”戦略であるらしい。実際、今回パソコンの秋モデル寸前で夏モデルを物色したところ、ヤマダ以外では在庫があるが、ヤマダはほとんどの店で展示品のみだった。現在、強いといわれている上記の量販店も、総じて在庫は抱えない方向であるという。
 私がした方法は、ヤマダの1店舗には足を運んでみたが展示品だけなので、行くことが可能な店舗に片っ端から電話をかけて在庫を聞いた。どの店舗も快く在庫と価格の情報を教えてくれた。もちろん、電話番号はヤマダのサイトの「店舗情報」で仕入れている。
 人がなぜヤマダに行くのかをちょっと調べたことがあるのだが、価格自体は他店もチラシを持っていくと下げるといっているので余り変わらないのだが、現場の店舗で店員さんとやり取りしていると、“安い!”と思ってしまうらしい。ポイントもそうだが、最安値であることをイメージングすることが上手いのだろう。制限在庫と売り切りサイクルの速さと関係がありそうだ。
 ヤマダの社長さんの言葉では、47都道府県全ての店舗網を構築するとこのと。アマゾンやサイト通販がはびこる今、この逆行現象は通用するのか? 鍵は、リアルサイト(実態店舗)の強みをフルに生かせるか否かではないか。ヤマダの立地はなかなかいい。ちょっとはずれの交通要衝。もしくは人が多くすんでいるところから車ですぐいける郊外ロードサイド。家電は、やはり現物を見て買いたい。また、すぐ持って帰って使いたいがモノが大きい。この要求に実態店舗が強い。ヤマダ立地は、いわゆる“一等地”ではないが、コスト(賃料・地価)vs商圏(背後購買人口、ドライビングタイムを勘案の上)の兼ね合いがよく、地域一番店のイメージになりつつある。
 地価下落が行き着くところまでいき、ちょっと立地の悪いところでは賃料(地代)もテナント有利になる。さらに、業界ナンバーワンという収益安定性のブランドがあれば、利回りが低くとも地主は貸したがるだろう。一時期のマクドのようにブランドによる低地代を確保できるというものである。
 この仮想と実態。消費者は確実に有利な面をうまく“つまんで”いる。単に漫然と対処しても、競争はもっと高度なところで行われるだろう。設けるためには、ネット上か?土地の上か? よくよく吟味する必要がありそうだ。

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成17年9月7日号・完―  
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