週刊アクセス
 
 
平成17年10月5日 第282号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
千里ニュータウン、65歳以上が25%超す
──豊中・吹田市が4月時点推計、若年層の独立・転出響く
大阪市営地下鉄8号線、2006年12月開業──工事進み3ヵ月前倒し
今の日本の家庭像−国税庁・民間給与実態統計調査から
 
     
千里ニュータウン、65歳以上が25%超す
──豊中・吹田市が4月時点推計、若年層の独立・転出響く
  (日経ネット関西版 H17.9.27)  
   大阪府北部の豊中市と吹田市にまたがる千里ニュータウンの65歳以上の高齢化率が4月時点で25.6%と、初めて25%を突破したことが両市の推計で分かった。大阪府平均の約18%を7ポイント余り上回る。独立した若い世代の転出による人口減が続き、高齢化が進んだ。
 住民基本台帳に基づくニュータウン内の人口は4月時点で9万304人、65歳以上の人口は2万3,145人。2000年10月の国勢調査時点に比べ人口は5,637人減ったが、65歳以上に限ると4,835人増えた。
 1962年に街開きした千里ニュータウンは90年の国勢調査まで高齢化率が10%以下だった。住民の高齢化と子ども世代の独立が影響し、95年に12.5%と初めて府内平均(11.9%)を上回り、2000年は19.1%に高まっていた。

いわせてんか! 国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によると、日本全体で、65歳以上の高齢者が25%を超えるのは2014年と推定されている。
 「千里ニュータウン」は街開きから約43年経過。1975年のピーク時には約13万人であった人口が現在は約9万人と地区全体の人口減に加え、人口構成の高齢化が全国的水準に比べ急速に進んでいる。
 この高齢化とともに問題となっていることとして、近辺で郊外型の大型小売店舗が進出するとともに、商店主の高齢化により、地区内の近隣センターに存する店舗の閉鎖が相次いだことが考えられる。
 高齢者における近隣型の商業施設のニーズは高い。地区内の商業関連施設の再整備としては、南千里地区の再開発、藤代台近隣センターの再開発が近年実施されたが、いずれも地元主体で行われたもので、地元住民が近隣に商業施設を必要としている様子がうかがえる。しかし、現状は、むしろ、近隣センターがマンションに建て替えられるケースも見られる状況にあり、特に高齢者から見ると、現状の地区内の商業施設の配置の状態は均衡を得ておらず、生活利便性はかなり劣る状況になっているものと考えられる。
 そんな中、国交省による全国的なニュータウンに対する土地利用規制に関する緩和の方針がたてられた。千里ニュータウンについては、東京都の多摩ニュータウンとともに新たに地域計画を作り、街づくりの基本設計が見直されることとなる。
 その内容にもよるが、すでに豊中市が千里中央駅周辺地区について規制を緩和している状況などからも、今後、土地利用規制について柔軟な対応がとられる可能性が十分に考えられる。
 これまでは、千里ニュータウン内においても、衰退した商業地がマンションに建替えられるといった見慣れた風景があったが、行政側の土地利用規制に対するスタンスが変わりつつある中、高齢者人口が約23,145人と住民の4分の1を占めるに至り、今後、地区内の高齢者を意識した商業施設、福祉施設等の立地が意識されるようになるかもしれない。

 
 
 
 
大阪市営地下鉄8号線、2006年12月開業──工事進み3ヵ月前倒し
  (日経 H17.10.5)  
   大阪市交通局は建設中の市営地下鉄8号線の井高野(大阪市東淀川区)―今里(同東成区)間12キロについて、2006年12月に開業する方針を決めた。07年3月までの運行開始を目指していたが、8月に全トンネルが貫通するなど工事が順調に進んだために前倒しする。大阪市営地下鉄の新線開業は1990年の鶴見緑地線(現・長堀鶴見緑地線)以来、16年ぶり。
 交通局は今後、駅施設や電気などの工事を急ぎ、06年夏ごろから試運転に入る。「できるだけ早く開業し、収入増につなげる」考えだ。今里から南側に延伸する計画にはずみをつける狙いもある。
 8号線は大阪市東部の市街地を南北につなぐ路線で、既存の地下鉄四路線と京阪本線、JR学研都市線に接続している。所要時間は井高野―今里間で約20分。1日12万人程度の利用客を見込む。

いわせてんか! 市営地下鉄8号線は東淀川区東部から旭区、都島区の北部にわたる地域を南北に縦貫する。大阪市東部地域は、人口が高度に集積する既成市街地でありながら長らく鉄道利用が不便だった。8号線は、沿線地域の利便性を高め、まちづくりを促進し、地域の活性化を目指すもので、地価に与える好影響も期待できそうだ。また、都心に対して放射状に整備されている既設地下鉄(谷町線・長堀鶴見緑地線・中央線・千日前線)、京阪・JR学研都市線等の鉄道と連絡することにより、混雑緩和や東部地域の移動を円滑にするという。そういえば東淀川区の阪急上新庄駅は普通電車しか停車しない駅だが、ラッシュ時の人の乗降は激しく、聞けば隣の急行停車駅淡路駅よりも乗降客数が多いらしい。
 混雑緩和は結構なことであるが、8号線は他線との競合で利用客を見込めないとの指摘もある。まず、JR環状線が既に走っている。また、現在建設中の「JR外環状線」(新大阪〜久宝寺)は環状線の東側を環状に走ってJR各線(新幹線・京都線・学研都市線・大和路線)、 地下鉄(御堂筋線・谷町線・中央線)、阪急(京都本線・千里線)、京阪本線、近鉄(奈良線・大阪線)と接続するもので、2008年春に久宝寺―放出、12年春に放出―新大阪の開業を目指している。さらには、8号線の外側、府道中央環状線沿いに「大阪モノレール」が南伸する計画もある。
大阪地下鉄全体では平成16年度は約39億円の黒字を確保したが、黒字路線は御堂筋線だけという。素人目に見ても都心にトンネルを掘ってできた地下鉄は工事費が高そうだ。大阪市交通局は経営改善に頑張っているとはいえ、新線建設に伴う見込みは楽観的すぎないだろうか。今は大阪市のお金の使い方に対する市民の目も厳しく、無駄遣いは許されない。私鉄等他線を含めた地域全体を鳥瞰して効率的な事業を進めてほしいと思う。

 
 
 
 
今の日本の家庭像−国税庁・民間給与実態統計調査から
  (国税庁HP、H17.9.28)  
   【民間給与実態統計調査結果の概要】
 平成16年分の調査結果からみた主要な点は、次のとおりである。

 平成16年12月31日現在の給与所得者数は、5,271万人(対前年0.4%、19万人の増加)となっている。また、平成16年中に民間企業が支払った給与の総額は201兆7,742億円(同▲0.9%、1兆9,085億円の減少)で、源泉徴収された所得税額は8兆8,979億円(同3.6%、3,060億円の増加)となっている。
 なお、給与総額に対する税額の割合は4.4%となっている。

 1年を通じて勤務した給与所得者については、次のとおりとなっている。

  (1)  給与所得者数は、4,453万人(対前年▲0.3%、13万人の減少)で、その平均給与は439万円(同▲1.1%、5万円の減少)となっている。
 これを男女別にみると、給与所得者数は男性2,752万人(同▲1.8%、51万人の減少)、女性1,701万人(同2.3%、38万人の増加)で、その平均給与は男性541万円(同▲0.6%、3万円の減少)、女性274万円(同▲0.4%、1万円の減少)となっている。

  (2)  給与所得者の給与階級別分布をみると、男性では年間給与額400万円超 500万円 以下の者が495万人(構成比18.0%)、女性では100万円超 200万円以下の者が445 万人(構成比26.1%)と最も多くなっている。

  (3)  給与所得者のうち、3,808万人が源泉徴収により所得税を納税しており、その割合は85.5%となっている。また、その税額は8兆7,988億円(対前年3.9%)となっている。

  (4)  給与所得者のうち、年末調整を行った者は 4,095万人となっている。このうち、配偶者控除又は扶養控除の適用を受けた者は1,708万人で、扶養人員のある者1人当たりの平均扶養人員は2.15人となっている。

国税庁・統計情報・平成16年度 直接税(民間給与の実態調査結果)

いわせてんか! 国税庁HPによれば、この調査は、民間企業における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的とし、対象者は平成16年12月31日現在の給与所得者(所得税の納税の有無を問わない。)である。
 また、調査の特色は以下のようである。

(1) 従事員1人の事業所から従事員5,000人以上の事業所まで広く調査していること。
(2) 給与階級別、性別、年齢階層別及び勤続年数別による給与所得者の分布が分かること。
(3) 企業規模別(事業所の属する企業の組織及び資本金階級別)に給与の実態が分かること。

 前提として、1に記載する『給与所得者』とは「1年を通じて勤務した給与所得者」(正社員が代表的)と「1年未満勤続者」(パート・アルバイトが代表的)の両方を合計したものであり、2は前者について詳細に見たものである。
 特徴としては、正社員・男性が大幅減(△51万人)、正社員・女性が増(+38万人)で正社員の純減、これに対してパートの増加(+31万人)でサラリーマン全体数は増加するも平均給与は減少した。
 この統計から今の日本の家庭像を想像してしまった。
ある団塊世代の家庭を覗いてみよう。55歳のお父さんは中堅自動車部品メーカーを早期退社、念願だったハーレーを中古で購入し、たまに近場をぐるっと回る。30歳のおねえちゃんは、アパレルメーカーのキャリアウーマンで、年に2回は海外旅行を欠かさず、「いい男はいないわね」が口癖だ。27歳のボクは大学院まで出たものの、「これは違う」と就職先を1年でやめて、バイトをしながら夢探し。51歳のお母さんは、自分の趣味のお金は自分で稼ぎたいとパートをはじめた…
 景気は最終消費者の需要増までくれば本物だ。ただ、お父さんが仕事をやめ、お母さんやおねえちゃんが働く率が上がって、ボクのようなフリーター(バイトをしなければニート)の現状ではどうだろう? 中長期的な少子・高齢化で考えれば、未婚率上昇や子どもを生まない女性の増加の一端となっているようにも思える。退職金と現在の年金受け取りでお父さんは比較的元気かもしれないが、20年後はどうなっているだろう? また、ボクの収入的未来はあまり明るくはない。なかなかホリエモンにはなれないからだ。さらに介護問題が出てきたとき、果たして耐えうるだろうか?
 今年の国勢調査が歴史的だといわれるゆえんは、日本人口のピークであるから。ここから先は、純減少の時代に突入する。人口増減は、不動産の価格に大きく影響をする要因のひとつであり、人口減少地域の地価が上がったためしはない。景気上昇、地価下げ止まりとはいうものの、短期的には地域的な「二極化」を、中長期的には日本自体の衰退を見極めなければ、地価は語れないようだ。

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成17年10月5日号・完―  
 戻る  
     
 
アクセス鑑定『今日のおやつ

頂き物。アンリ・シャルパンティエ詰め合わセット