週刊アクセス
 
 
平成17年11月9日 第287号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
公庫提携ローン、金利上げ相次ぐ 平均0.11%
時代を反映した不動産取引の実態―ある結婚式に参加して
 
     
公庫提携ローン、金利上げ相次ぐ 平均0.11%
  (日経ネット H17.11.3)  
   民間金融機関が住宅金融公庫と提携して行う長期固定金利型の住宅ローン(フラット35)の金利引き上げが相次いでいる。住宅公庫のまとめによると取扱260機関のうち、251機関が11月の適用金利を引き上げた。長期金利がじわじわと上昇し、公庫の資金調達コストが上がったことを受けて、金利を引き上げる機関が多い。
 全機関の平均金利は前月よりも0.11%上昇し、年2.89%。提携ローン開始以来の最低になった7月(2.63%)からほぼ一貫して上昇している。
d  取り扱い大手の金利は東京三菱銀行2.85%(前月2.72%)、UFJ銀行2.90%(2.77%)、三井住友銀行2.85%(2.72%)、協同住宅ローン2.72%(2.69%)、日本住宅ローン2.501%(2.371%)、SBIモーゲージ2.55%(2.42%)など。みずほ銀行と中央三井信託銀行は2.72%で据え置いた。

いつでも無料で固定金利へ変更、新生銀が新住宅ローン

(日経ネット H17.11.5)
 新生銀行は7日、金利上昇リスクに配慮した新たな住宅ローンとして、当初10年間は借り手の判断でいつでも変動金利から固定金利へ切り替えることができる商品を投入する。適用金利の切り替えは借り手が電話などで申し出た翌日に実施され、手数料などはかからない。こうした住宅ローンは国内初という。
 一般に住宅ローン金利は固定金利より変動金利が低いが、変動金利は市中金利急騰で大きく上がる恐れがある。金融政策変更などで市中金利の急騰が確実視される局面では、ローン金利が上がる直前に固定金利に替えるのが有利な構造だ。

いわせてんか! 今年の夏頃までは最低水準にあった「フラット35」の金利の推移に変化が見られてきた。
 記事にあるように、長期金利の上昇を受けてのようだが、その背景には、日銀総裁が量的金融緩和解除に前向きと受け取れる発言をしたことから、早めに解除されるのではないかとの観測があると見られている。
 このような中、新生銀行により、記事にある国内初となる商品が提供されることとなった。仮に金融政策が変更され市中金利の継続的な上昇が見込まれる場合、固定金利に替えると有利ということになる。
 景気の回復傾向も影響していると思われるが、このような新しい商品が出てくるなどの反応ぶりからも、すでに3年以上にわたっている量的金融緩和政策に対する日銀の動向が、これまで以上に注目されるようになってきた。

 
 
 
 
時代を反映した不動産取引の実態―ある結婚式に参加して
  (司馬遼太郎『風塵抄 二』〜「一貫さん」1993.2.2)  
   『一貫さんは、読書家である。
それに耳で聞く言語理解力もすぐれているが、極端な訥弁だから、人交わりがしにくい。会社員や商人になることは、むりである。
 感情の量が人の倍ほどもある。
 それも、厄介なことに感情の種類が他者への憐れみという一種類だけだから、損得家業ができない。
 第一、 妻子がもてない。
 妻子をもつと想像しただけで憐れみがあふれ、耐えられなくなってしまうらしい。だから、いまだに独身でいる。

 島にいる母堂も、似たような人のようである。』(中公文庫版、p121)

いわせてんか! この日曜日に、岡山で大学時代の後輩であるN君の結婚式に参列した。

 N君とは、卒業後も、当時のテニス部の同輩・後輩で作る10人程度の小さなOB会を通じて、20年来の付き合いである。会の中の独身は、N君ともう一人だけになっていた。
 彼には10年以上付き合っている彼女がいた。その話は以前も聞いたことがあり、“なかなか煮え切らないヤツだなあ”と、内心その決断力のなさを、彼の弱さだと思っていた。
 披露宴で、彼の元へ嫁ごうとする彼女がいった。「彼は、本当に優しい人です」。N君は、親との帰郷の約束を破ってまでも自分の夢を追いかける彼女を思い、その夢を見守るために、ずっと待っていたようだ。「長い時間でした。でも、これからはいっしょに歩いてゆきます」と、N君は凛々しい顔で挨拶した。
 N君は目立たないが、気が利き、言葉が柔らかく、付き合いがいい。ときにはバカもやり、ビールが大好きである。宴での来賓、親戚、友人の言葉からも、同じ感情が伝わった。

 司馬遼の文章を読んでいて、N君が重なった。婚期が遅れていたのは、彼が優しすぎるからなのだろう。でも、それは強い優しさである。お父さん・おじさんの言葉も、他者への優しさにあふれていた。

 不動産は、その他の商品と同様に市場で取引され、人から人へと流通する。司馬遼がその著書の中でたびたび触れているが、いつから日本人は土地をそのように扱うようになったのだろう? 高度成長、バブル、ポストバブルと時代は変遷し、日本人の気持ちも大きく変わった。N君のような人は、少なくなっているような気がする。
 不動産価格や評価方法は、このような市場及びその参加者の思惑に依存する。しかし、その心情を後からみる「取引価格」に終始するだけでは片手落ちだ。土地や地域、そこに住む人々がどうあるべきかを、不動産の価値を日々考えている専門家として提言してゆくことも、不動産鑑定士の重要な社会的役割であろうと思う。

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成17年11月9日号・完―  
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京栗菓匠、若菜屋(栗公子)
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