週刊アクセス
 
 
平成17年12月7日 第291号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
域内総生産、増加は35都市圏・経産省が2030年見通し
景気が回復・拡大している−朝日新聞社調査、誰の視点で?
 
     
域内総生産、増加は35都市圏・経産省が2030年見通し
  (日経ネット H17.12.2)  
   経済産業省は2日、2030年時点での地域経済の見通しを分析した報告書を発表した。雇用の集積を切り口に全国を269の「都市雇用圏」に分けて分析したところ、30年に00年比の域内総生産が増えるのは東京23区など35都市圏にとどまった。
 人口減の社会を迎え、すでに現在、人口が少ない地方都市ほど人口減に伴う経済活動の停滞が厳しくなる見通しだ。報告書は地域の活力を維持するために、輸出競争力のある産業の育成や、複数の自治体で公的なサービスを一本化するような行政の効率化を急ぐべきだと指摘した。
 30年と00年の分析を比較すると、今後も一極集中が進むため東京23区を中心とする都市圏は人口も総生産も増える。政令指定都市は人口が減るものの、総生産は増える傾向にある。一方で人口が10万人未満の都市圏では、人口と総生産がともに2ケタの減少率になるとの予測になった。

いわせてんか! この数年、生活様式や企業活動について、都心回帰・本社機能の東京への一極集中などの地域間の格差が拡がる動きが見られてきた。
 このような動きが、人口減・少子高齢化にも影響し、その差異により、地域内市場や人口・産業機能・商業機能等への影響を通じて都市機能の状態にも差異が生じる。その差異が地域間格差を助長することとなり、人口や地域経済に大きな影響を及ぼす。
 今回経済産業省が行った調査でのシミュレーションの内容は、技術進歩等による生産性の向上が90 年代平均で推移することなどを仮定して推計を行ったものである。今後の各地域の地域活性化への取り組みによる効果等は考慮されていないものではあるが、概ね、その推移は、この数年で見られた動きをさらに拡大させることとなる模様である。

参考:経済産業省「人口減少下における地域経営について」

 
 
 
 
景気が回復・拡大している−朝日新聞社調査、誰の視点で?
  (asahi.com 2005.12.4)  
   全国の主要企業100社を対象に朝日新聞社が11月に景気アンケートを実施したところ、景気の現状を「拡大」「緩やかに回復」と判断する経営者が9割に迫った。先行きも、7割超が「拡大を続ける」または「近く足踏み(踊り場)状態を抜けて加速する」とみている。02年1月に始まったとされる今回の景気拡張局面の「山」は3分の1の企業が「06年10月以降」に来るとみており、緩やかながらも息の長い回復が続くとの見方が主流となってきた。調査は11月7〜26日に実施。原則として社長ら経営トップに面談し、判断を尋ねた。
 …現状判断の根拠(二つ回答)として65社が「企業収益の動向」を、52社が「企業の設備投資動向」を挙げた。「個人消費の動向」は38社。企業収益の好調さが回復を先導する基調が続いている。
 …政府は、企業部門から家計部門に景気の先導役が引き継がれる「内需主導の本格的な景気回復シナリオ」を描いている。だが、その通り進むかどうかについては、微妙な要素もある。
 内需の屋台骨を支える個人消費は、70社が向こう1年間「緩やかに改善する」とした。だがその一方で、「(消費者は)お金を使い始めているが、積極的に『もう一品買おう』と思う段階にはなっていない」(ローソン・新浪剛史社長)など、個人消費の動きに敏感な小売業から慎重な声が多く出された。
 また、調査対象は大企業中心で、中小企業や地方の実感は今回の結果と異なる可能性がある。

いわせてんか! 最近、中小工場が多い地域で、地価公示評価のための市場調査として、不動産業を兼業する鑑定士さんにヒアリングした時のこと。「大企業は景気がいいのかもしれないが、中小までは降りてきていないようだ…」
 記事で指摘されているように、調査対象が大企業中心の場合、直接消費者に接していない企業では、個人消費の実感は少ないのではないか? また、人口減少に関する本の中で、企業収益回復で労働配分率が上昇するかという問いかけをしたとき、著者の印象として“そうでもなさそう”だったという。リストラ、スリム化と立て直しを図った大企業だが、その分、空前の利益でも内部留保を怠らず、変化の激しい次世代への設備投資が先である。能力給やリストラムード、労働流動性の高まりをバックに、戦力となる若者さえ確保できれば、労働配分の増やさないことには理由がつく。また消費者・家計自身も、増税・年金不安・医療費増大など、支出面での不安は拡大する一方で、ぱーっと使う情勢ではない。「内需主導の本格的な景気回復シナリオ」というには“今ひとつ不安”な要因が点在する。
 トヨタほど儲かれば、さすがにおこぼれも多いのだろうが、動きの早い産業界でそうそう一人勝ちはない。地価に関する動向も、地域単位、もう少し細かなエリア単位で、大企業ベースの景気回復の波及効果を検証する必要があろう。さらに“誰が買っているのか?”というプロファイリングが、地域の行く末を計る大きな材料となるのではないか?

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成17年12月7日号・完―  
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