週刊アクセス
 
 
平成17年12月28日 第294号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
梅田北ヤード中核施設、ロボット研究開発拠点や劇場・音楽ホール整備構想
──松下、阪大などが入居応募
景気回復への着実な足音−企業景気予測と有効求人倍率
 
     
梅田北ヤード中核施設、ロボット研究開発拠点や劇場・音楽ホール整備構想
    ──松下、阪大などが入居応募
  (日経ネット関西版 H17.12.22)  
   都市再生機構と大阪市は21日、梅田貨物駅(梅田北ヤード)再開発の目玉となる知的創造拠点「ナレッジ・キャピタルゾーン」の中核施設への入居者の募集結果を発表した。先端技術の研究開発拠点や体験型ショールーム、劇場・音楽ホールなどの構想を掲げる企業や大学など35団体(個人も含む)が登録され、2011年開業に向け、拠点づくりが動き出す。
 35の登録事業者のうち大阪市や大阪大学、松下電器産業など10団体が事業コンペの際に優遇される「推薦事業者」となった。施設の開発事業者が今回登録された団体の提案内容を反映させ、来年2月の事業コンペに応募する。
 推薦事業者となった大阪市では、5500平方メートルの床面積を賃借し、ロボットの研究開発やショールーム、スタジオなどを設ける「ロボシティコア」や都市・観光情報などを発信する大阪(関西)博情報館を整備する構想を提案した。松下電器産業は「くらしデザイン・ラボラトリー」(仮称)として基礎研究拠点を整備する。
 劇場や音楽ホールを事業計画に盛り込んだ企業も推薦事業者に選ばれた。ジョブ・クローバー(吹田市)は、食と音楽の「ライブレストラン」として、200席の音楽ホールを構想。リッジクリエイティブ(京都市)はテクノロジカルアートに特化した劇場を打ち出した。
 学習・教育拠点としては、大学のほか専門学校を運営する学校法人、上田学園がウェアラブルコンピューターの開発、作品の展示スペースを設ける構想だ。
 登録事業者では、大阪ガスが技術経営(MOT)スクール、関西電力やNTT西日本が未来生活体験型ショールーム、りそな銀行がインキュベーション施設などをそれぞれ提案した。NOVAは英会話などの大規模な語学教室を開く計画。
 同ゾーンには研究施設やショールームなどを集積させる計画。大阪の玄関口にふさわしい入居者を集めるため、入居者を先行して募集する異例の方式を採用した。

いわせてんか! 入居テナントを先に募集するという方針のニュースを聞いたとき、6年も先の事業に応募がどれほど集まるのかと思われたが、結果35団体の登録があった。
 この入居希望者が見込まれる状況を踏まえてか、先行開発区域の開発事業者の募集にあたり、ナレッジ・キャピタルゾーンだけでなく他のゾーンも含め一括した提案を求める方針とのこと。
 具体的には、3ブロックに分かれている先行開発区域について一体共同募集を実施する。ナレッジ・キャピタルゾーンについての事業者を先行して選定し、他の2ブロックについては、一体性が保てるようにガイドラインを策定し提案を受け付け事業者を選定するという2段階選定方式ですすめることとなる。ナレッジ・キャピタルゾーンの事業者の決定は来年5月頃、他の2ブロックについては秋頃の予定。
 一旦は参加事業者を募るため開発にあたっての要件が緩和されてきたが、入居者が見込める状況になって、大阪市と都市再生機構が主体的に事業をすすめることのできるような要件を課すことのできる環境が整いつつある。

 
 
 
 
景気回復への着実な足音−企業景気予測と有効求人倍率
  (記事各種)  
  −法人企業景気予測調査(内閣府・財務省)

 内閣府と財務省が26日発表した10〜12月期の法人企業景気予測調査によると、自社の景況感を示す景況判断指数は、大企業(全産業)がプラス10・5と前回調査(7〜9月期)より0・8ポイント上昇、中小企業(全産業)も8・7ポイント改善してマイナス6・4となり、いずれも3四半期連続で改善した。…対象は資本金1000万円以上の国内法人企業から選定した約1万5000社で、今回調査は11月25日時点で実施。
(Yomiuri Online 2005.12.27)

 …3四半期連続の改善で、2ケタの数値は調査を始めた2004年4―6月以降初めて。
 ただ、先行きは2006年1―3月はプラス8.6、4―6月はプラス7.5と悪化方向の見通しとなっている。先行きに関し「不明」と答えている企業の割合が比較的多いことが背景にある。
 中堅企業全産業の現状判断はプラス5.2となり、7―9月のプラス5.5からやや悪化。中小企業全産業はマイナス6.4で、7―9月のマイナス15.1から改善したが依然としてマイナス圏。
 国内の景況感(全産業)は、10―12月は大幅に改善した。大企業はプラス26.1中堅企業はプラス23.2、中小企業がプラス3.4。中小企業の現状判断がプラスになったのは初めて。(ロイター 2005.12.26)

−有効求人倍率(H17.11、季節調整値)(厚生労働省)

 厚生労働省によると、11月の有効求人倍率(季節調整値)は0.99倍となり、10月の0.98倍から0.01ポイント上昇した。これは、1992年10月の0.99倍以来の高水準。92年9月は1.02倍だった
 景気に先行する指標である新規求人数は、前年同月比でプラス3.9%だった。産業別にみると、医療・福祉(同プラス18.4%)、飲食店・宿泊業(同プラス10.9%)、卸売・小売業(同プラス10.2%)、運輸業(同プラス2.3%)、製造業(同プラス1.7%)は増加となり、サービス業(同マイナス1.8%)は減少となった。
 教育・学習支援業(同マイナス9.7%)、情報通信業(同マイナス6.2%)、建設業(同マイナス2.5%)は10月の増加から減少に転じた。(ロイター 2005.12.27)

 …完全失業率は4.6%と2カ月連続上昇したものの、よりよい職を求める「前向き失業」が増えたのが主因。今後も改善が続く見通しだ。
 有効求人倍率は、景気低迷を受けて、1992年10月から1倍を割り込んだ。98年後半からは15カ月連続で0.5倍を下回り、1つの求人を2人以上で取り合う水準にまで悪化した。
 1倍目前まで回復したのは、好業績で企業の雇用意欲が高まったため。都道府県別でも、東京の1.48倍や愛知の1.59倍など、産業基盤があり企業が集中する都市圏で伸びが目立つ
 厚生労働省の独自集計で、正社員に限った有効求人倍率は0.63倍で、前年同月比で0.06ポイントの上昇だった。全体の伸び(0.08ポイント)を下回るものの、正社員も改善に向かっている。(Nikkei Net 2005.12.28)

いわせてんか! いよいよ、景気回復の足音が聞こえてきた。
 企業の有負債利子がバブル前の水準に戻り、中小企業の資金繰り好転で景気予測が上昇機運、慎重だった労働政策も今度の冬季賞与の動きは緩和を示している。雇用の前向きさ加減は着実で、後は、最終需要としての“財布のひも”が緩んでくるのを待つだけのようである。
 ただ、先行きについての楽観視はいまひとつか。最終消費の阻害要因として、政策減税廃止、医療費増大、消費税増税、また住宅需要では、“姉歯事件”という特殊要因もある。また、上記データでも業種別の天気が異なることや、地域ごとの勝ち負けが目立つことが、一様な回復を意味しないことを示唆する。
 関西の不動産価格を振り返ると、高度商業地や高級住宅地、また大企業の城下町などで取引件数及び価格の増加が顕著のようだ。価格の上昇の程度に関しては、細かな地域差が出てこよう。

(編集後記)
 昨年、平成16年の編集後記には「今年の特徴は、なんといってもまず“明るい兆し”であろう。」と記した。今年、平成17年はこの明るい話題がさらに発展し、いよいよ景気回復・地価上昇の機運が確実なものへとなりつつあるようだ。
 今年の記事には、大手企業を中心とした体力の回復をきっかけとする一般的な景気の回復に始まり、近畿の工業地における日本企業の返り咲き、マンション・戸建住宅の堅調な売れ行き、中心商業地における大型施設開発完成・計画着手など、数々の“景気の踊り場からの脱出”“回復への着実な足音”が刻まれている。
 ただ、高度成長期の動きではない。『勝ち組・負け犬』の流行語を取り上げるまでもなく、一様な回復でないことは確かだ。不動産に関して言えば、上がる下がるが確実に複雑化している。
 そんな中、専門職業家の責任が白日の下にさらされた。“姉歯”という変わった苗字は、今後永く語られることになろう。裁判においては医者、弁護士、建築士、税理士…と種々さまざまな専門家がその責任を負った。鑑定士は、所管官庁から“不当鑑定”のガイドラインが出され、独占業務の見返りを要求されている。土壌汚染、アスベスト、そして今回の構造計算と、不動産の価値に大きく関わる“価格形成要因”が問題となっている。朝早くから、みのもんたが大声を上げて主婦にうったえかける。『こんなことがあっていいのか!!』 本当の専門家は、難しい事柄を、それを知らない人々にわかるように説明し、その問題解決と信頼の証として報酬をいただくものだろう。
 一方で、WEBなどITの進化は相変わらず早い。選挙にしろ、姉歯にしろ、その伝達の速さと世論の連動は目を見張る。高速回線の爆発普及と、ブログなどのコミュニケーションツールが浸透したこと、さらにホリエモンではないが、TVとの融合も急速に進み、危機感からTVでのニュース性が増しているように感ずる。いままでの情報の壁は急速に取り除かれ、いいもわるいも、皆の知るところとなるだろう。

 地価の行方、その背景となる社会事象の分析、地域に特徴的な話題、ITの今…平成18年もひき続き、皆様に有用なニュースを、鑑定士の視点で“いわせて”いただこうと思っております。また、おやつも、飽くなき“食べたい魂”を発揮して、おもわず買いに行きたくなる画像を掲載していきます。
 来年も『週刊アクセス』をご贔屓に願います。(編)

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成17年12月28日号・完―  
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