週刊アクセス
 
 
平成18年6月14日 第318号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
米、長短金利が逆転――景気減速へ警戒感も
国土交通省『土地投資動向調査(H18.3)』−大企業は活発・上昇予測
 
     
米、長短金利が逆転――景気減速へ警戒感も
  (日経 H18.6.11)  
   米債券市場で短期金利が長期金利を上回る逆転現象が起きている。9日の2年物国債の利回りは5.0%と、4.99%だった10年物を2日連続で上回った。長短金利の逆転は3月28日以来、約2カ月ぶり。
 短期金利上昇の理由は、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを続けるとの観測が強まっているため。9日発表の輸入物価指数が市場予想を上回るなどインフレ懸念は強く、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではさらに利上げするとの見方が大半だ。フェデラルファンド(FF)金利先物は、6月の0.25%利上げを8割程度織り込んだ水準で推移している。
 一方、長期金利の下落は、米景気が減速するとの見方が市場で広がっていることを示す。住宅価格や消費者の消費意欲を示す経済指標は前月比を下回ることが多くなった。FRBの利上げが長引き、景気を冷やしすぎるリスクを指摘する声も増えている。
 長短金利が逆転すると、金融期間が利ざやを稼げなくなり、貸し出しを抑制するため、経済成長にブレーキがかかる。米国では過去4回の景気後退期の前に、いずれも長短金利が逆転している。

いわせてんか! 一般的に長期金利の方が短期金利より高く、これをグラフ(縦軸に利回り、横軸に残存期間)に表すと右上がりの曲線となり、イールド・カーブ(順イールド)と呼ばれている。収益還元法など鑑定評価に当たっても、当たり前のように順イールドを前提としているが、フラット(年数が異なっても利回りは同じ)や逆イールド(期間が長いほど利回りが低い)の場合もあり、これが今のアメリカの状況である。
 こうしたイールド・カーブを説明するのが、金利の期間構造理論であり、代表的な理論として「純粋期待仮説」「流動性プレミアム仮説」「市場分断仮説」などがある。簡単に整理しておくと…
 「純粋期待仮説」は、現在の金利の期間構造は将来の金利の期待値によって決定されるという考え方である。これによると、右上がりのイールド・カーブは、市場では金利が将来上昇すると予測していることを示す。
 「流動性プレミアム仮説」とは、他の条件が同じであれば、リスク回避的な投資家は流動性の高い短期債を選好する、という考え方。長期債の方がリスクは大きくなるので、その分、流動性プレミアムが付加されることになる。
 「市場分断仮説」は、債券市場は市場参加者の資金性格になどの固有事情により、残存期間別に分断されており、債券の利回りはそれらの需給関係で決まるとする理論である。
 実際にはこれらの理論と、金利政策(特に短期金利)、債券の需給(特に長期金利)及び背景となる景気情勢などが複雑に影響し合って利回りは決定され、日々変動している。
 回復・拡大していたはずの日本景気も、減速懸念が囁かれはじめた。アメリカ・中国など世界経済の影響を強く受けるだけに、国内だけでなく世界の動き・経済指標等に対しても注視していく必要がある。

 
 
 
 
国土交通省『土地投資動向調査(H18.3)』−大企業は活発・上昇予測
  国土交通省 土地・水資源局土地情報課 H18.6.9  
   1. 調査目的
本調査は、土地市場の動向に大きな影響を及ぼすと考えられる主要な企業を対象として、土地取引などに関する短期的な意向を把握・整理し、簡潔で分かりやすい「先行指標」の作成・提供を目的としている。
 調査対象は、上場企業及び資本金10億円以上の非上場企業であり、半期(各年3月、9月時点)ごとに調査を行っている。

2. 調査結果概要
(1)  回答企業の本社所在地の現在の土地取引に対する判断は、東京、大阪とも引き続き「活発である」が増加している。また、今後の見通しについても「活発である」が増加している。
(2)  本社所在地の1年後の地価動向については、東京では調査開始以降、初めて「上昇」が「横ばい」を上回った。大阪では「横ばい」との回答が多いものの、「上昇」も引き続き上昇している。
(3)  土地の「購入」意向は「売却」意向を下回っているが、非製造業において「購入」意向が上昇している。
(4)  自社が利用する土地・建物については、全体で、調査開始以降、初めて「増加」意向が「減少」意向を上回った。特に、別件所在地別では東京、大阪で、業種別では非製造業において「増加」意向が「減少」意向を上回っている。なお、製造業において「増加」意向の上昇傾向がみられる。

図表5 1年後の地価動向
図表5 1年後の地価動向

図表6 1年後の地価の動向に関するDI
図表6 1年後の地価の動向に関するDI
 


いわせてんか! 大企業の土地に対する意識は、『取引活発、地価上昇』である。自らの購入意思も上昇しつつあり、取得意欲の高まりが感じられる。図からは、H14後半からH15前半にかけて上昇予測の増加・下降予測の減少が起こっており、ここが大企業の“底値感”である。DIのポイント数は今回、東京:60、大阪:30、その他:0と、全ての地域で0を超え、土地のマイナスイメージの払拭と、勝ち組“東京”へ追随する様相を呈している。
 短観などDIの動きは、市場の動向を掴まえるのに有効だ。とくに予測DIは実際DIよりも見ごたえがある。なぜなら、市場人は当然、結果としての現在より、先を見越して取引するからである。
 統計分析として、市場における結果としてのデータ公開や蓄積が少ない段階では、たとえ収集したとしても個別事情が大きく反映されバラツキが激しい。そんなときには、DIなど意識調査の動向・推移が、大きな流れを把握するのに役立つだろう。

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成18年6月14日号・完―  
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