週刊アクセス
 
 
平成18年8月2日 第325号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
未利用国有地の総点検結果について
『逐条解説 不動産鑑定評価法』―不動産鑑定法令研究会・編集
 
     
未利用国有地の総点検結果について
  (財務省HP 2006.7.21)  
   「17年度中に処分等した財産は3,970件、338haであるが、このうち、一般競争入札等で売り払った財産は3,712件、309ha、売却額2,113億円である。これは前年度に比べて件数32.4%減(5,493件→3,712件)、数量32.2%減(456ha→309ha)、売却額31.2%減(3,075億円→2,113億円)となっている。(注)売却額等の減少は、前年度に引き続き積極的に売却の促進に取り組んだものの、保有財産の減少等に伴うもの。 」
「この結果、平成17年度末の未利用国有地は、5,707件、968ha、台帳価格4,034億円となっており、このうち売却困難財産は、2,389件、341ha、台帳価格1,569億円となっている。」
「売却収入の目安の実現のため、本年4月の国有財産法等の改正により導入された不整形地の整形化のための新たな交換制度を活用するなどして、売却困難財産を含め、より一層の処理促進に努めることとしている。」
『未利用国有地の総点検結果について(2006.7.21)』より

「相続税の物納申請の増加を背景として過去に急増した未利用国有地については、これまで積極的に売却が行われてきた結果、そのストックは平成16年度末で約6,300億円と、その5年前の約1兆8,100億円に比べて約3分の1にまで減少した。しかし、売却が困難な財産は約2,100億円と、その5年前の約700億円の3倍となり、増加傾向にある。また、権利付財産についても、ストックは約3万件(約6,500億円)と、依然として高水準で推移している。現下の極めて厳しい財政事情の下、今後は、相当残っているこうした財産も工夫して売却していかなければならない。」
『今後の国有財産の制度及び管理処分のあり方について(2006.1.18)』より


いわせてんか! 平成2年頃より、都市部を中心に不動産の物納件数が増加した。そこでは、相当数、売却が困難と思われる物件も物納されてきた。
 一般競争入札制度の再開・価格公示売却制度の導入などの売却促進策がとられてきた中、残物件に占める売却困難物件の割合は、上記の「今後の国有財産の制度及び管理処分のあり方について」の通り増加した。
 そこで、今年4月に、これまで公共の用に供する場合に限られていた交換制度を、不動産を売り払うため必要がある場合にも認めることとする改正内容が盛り込まれた国有財産特別措置法が施行された。
 こうした対策を講じなければならなくなった事情を背景に、平成18年度税制改正により、これまで、相続税基本通達において「管理又は処分するのに不適当な財産」として例示されていた内容について、施行令等にて「管理処分不適格財産」と「物納劣後財産」として内容を詳細なものとし、物納の許可にあたっての優先順位を明確化した、より詳細な規定が設けられたところである。
 これまで、ややあいまいであった不動産の物納の可否に関する要件がより明確なものとなり、これまでのような物納制度の恩恵ともいえる一面に与れない内容と見ることもできる。不利な相続とならないためにも、できる限り、考えられる可能性を検討しておきたい。

 
 
 
 
『逐条解説 不動産鑑定評価法』―不動産鑑定法令研究会・編集
  (ぎょうせい H18.7.20刊)  
   不動産の鑑定評価に関する法律・第40条「不当な鑑定評価についての懲戒処分」に関する【注解】(p218)

『「不当な不動産の鑑定評価」とは、社会通念上、その不動産の価額として相当でないことが明らかであると認められるような価額を、その不動産の鑑定評価の成果として表示することである。』
『…どの不動産鑑定士がその不動産の鑑定評価を行っても一致することが理想である(が)…これを行う者の判断を必要とする場面がかなりあるので…現実には…個々の不動産鑑定士ごとにその専門家としての主観的な判断を反映して開きのあることは事実である。』
『もちろん、このような鑑定評価額の開きは、不動産の鑑定評価に関する方法論の進歩とこれを行う者の技能の向上及び誠実性とによって克服されなければならないが、現実において一般に不動産鑑定士が専門職業家としての良心に基づき誠実に不動産の鑑定評価を行ってもなお生ずべき鑑定評価額の開きは、ここにいう不当な不動産の鑑定評価として論ずべきではなかろう。』

いわせてんか! 平成16年の上記法律改正に合わせて、H16.10.22に同社より『改正 不動産鑑定評価法等の解説』が国土交通省土地・水資源局地価調査課監修、不動産鑑定法令研究会編集で出版されている。今回の逐条解説は同様のスタッフの手により、このあとをついで、改正法についてのより詳細な解説を加えたものだ。
 先週、鑑定士の専門家責任に対する東京高裁H18.7.19判決をご紹介したが、鑑定士の監督官庁としての「不当な鑑定評価」に対する解釈・見解が、今回の引用部分である。(なお、発刊元に問い合わせたところ、引用部分を含め、同書における見解は、国土交通省における公式なものではない(但し、完全に私的なものでもない)とのご回答を得た。)
 要するに、「鑑定評価額が相当でないことが明らか」な場合に不当となるという。ただ、評価額の開きはその性質上ある程度やむを得ず、「専門職業家としての良心に基づき誠実に」行っていれば不当ではないとする。しかし、鑑定書により不利益を受けたと感じている人からすれば、何とも釈然としない判断基準ではなかろうか?
 「開きの縮小」のため、鑑定評価の方法論の進歩とこれを行う者の技能の向上及び誠実性を粛々と推し進めるしか手立てはないが、その作業をタイムリーに「評価基準」「倫理基準」や「実務指針」として公表することが重要となる。専門性の維持と信頼の確保は、時代に即応し、そのニーズに応えてこそ可能となる。

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成18年8月2日号・完―  
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