週刊アクセス
 
 
平成19年6月6日 第369号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
自転車利用の安全性と利便性
正常価格は特定価格の“アンカー”として位置づける
 
     
自転車利用の安全性と利便性
   
   自転車がからむ交通事故が増えていることから、警察庁と国土交通省は自転車の通行ゾーンの整備指針を共同でまとめる方針を固めた。自転車と歩行者の事故は、95〜05年で4.6倍に増加し、自転車がからむ事故全体も1.3倍に増えた
 警察庁は、車道通行の原則を維持しつつ、自転車が歩道を走れる要件を約30年ぶりによりきめ細かく定める道交法の改正案を提出し、ソフト面から自転車と歩行者・自動車の分離を進めている。
 指針は、自転車の道路上での位置づけをハード面からも明確化するのが狙い。車線が多い道路では、車線を削って車道左端に自転車レーンを設ける▽幅員が広い歩道は、自転車通行ゾーンを工作物やカラー舗装で区分する――など。都道府県は指針をもとに、緊急性や必要性の高い路線から順次、自転車通行ゾーンの整備を進める。
(朝日新聞 H19.5.13)

「指定された歩道で自転車の歩道通行を認めようとする道路交通法の改正は昭和53年に行われたが、当時の警察庁の交通局長は国会で次のように答弁している。『車道に自転車を走らせると、自転車が非常に危ないがゆえに、これは道路の環境の問題もありますけれども、やむを得ず歩道に上げるわけでありますから、・・・自転車は歩行者の通行を妨げてはならない。ですから、まず歩道を通るときには原則は徐行である。・・・後ろからリンを鳴らして歩行者をよけて行くような自転車がおりますが、そういうことは道路の秩序の中では許されない。したがって、そういう歩行者を妨害するような場合には自転車は止まりなさいということで、それを担保するために、歩行者の事故防止を図るために、自転車に罰則規定を設けた』」(P.100)

(「自転車利用促進のためのソフト施策/古倉宗治著」より)



いわせてんか! 個人的には、自転車はほとんど利用しないのだが、上記記事を見た数日後に「自転車利用環境のあり方を考える懇談会」が開催されると国交省HPで見て、自転車利用について、いろいろと見聞し、考えを巡らせてみた。
 まず、安全性。この10年間で自転車による歩行者に対する事故が4.6倍に急増した、とある。実数で見ると05年で約2,500件にまで増えた。10年前といえば高齢社会へ移行した頃だ。現下では、自転車の歩道通行においては、徐行・一時停止は必要であろう。
 自転車に対するハード面での取り扱いであるが、01年の道路構造令の改正から更なる推進が図られる模様だ。が、予算面などの制約が問題となりそうだ。
 やや趣旨は異なるが、上掲書にて、以下のような指摘がなされている。
 「自転車の車道通行を主体とする欧米の自転車先進国では自転車の利用促進策とともに安全性が向上しているが、この安全性は車道通行の中で向上してきており、結果的に、迅速性、快適性の確保とともに車道通行の安全性が立証されている。」(P.96)
 「自転車の交通手段としての位置づけの明確化に伴う自転車の走行空間の明示により、自転車利用者の責任感と緊張感を引き出すとともに、ルールの遵守を励行させ、ドライバーからの信頼を獲得することが、自転車事故の原因の除去につながる。自転車の車道走行は、物理的に自転車の安全を確保するのみならず、精神的にも事故原因の除去につながるのである。」(P.129)
 「自転車の車道通行が安全だといっても、現在のこのような車線構成の中でいきなり車道に自転車を放り出すようなことは適当ではない。交通量の多くない道路での自転車が車道を走れるような車線再編とさまざまなソフト面での施策(自転車の位置づけ、利用者の意識改革、車道での専用空間の指定、ルート選択のための危険性の情報の提供など)を同時に講じることが前提になる。」(P.130)
 この本の各種データ、他の先進国の事例などを見るに、興味深く、納得のいく部分もあるが、気になる点もある。それは、「原付」と「自転車」の関係である。保有率は減少傾向にあるが、1,000万台以上である。上の議論がどの程度妥当するか、やや危惧される。そう考えると、ウエイトとしては、ルート選択のための情報提供を自治体などが強く推進することが望まれる。上掲書で群馬県の取り組みが紹介されていた。(サイクリングロードネットワークおもしろMAP 高崎版の紹介 )こうしたものを、地域の協力も得ながら、既存の裏道などの利活用も含め、もっと充実させればと思う。
 東京23区では、自転車通勤利用者が実数でも割合でも増加しているという。自転車の機能(機敏さなど)を評価しているのであろう。ただ、当たり前のことながら、自転車の機能が制限されないためには、安全性が確保されている状況になければならない。
 ところが、道路交通法の改正案の一文。「車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき」には歩道を通行することができる、としている。30年前の改正時の素頓狂な答弁そのままのような感じ。義務なのか権利なのか、何ともいえない文言である。
 最近、京都市が、市中心部の繁華街・四条通の川端通〜烏丸通間(約1.1km)を、マイカーを禁止し、公共交通機関だけが走れる「トランジットモール」とする構想を発表した。これに準じたようなハード面での施策を協力に講じるのであれば話は別ではあるが…
 
 
 
 
正常価格は特定価格の“アンカー”として位置づける
   
 

いわせてんか! 雑感である。今回は、鑑定評価基準における価格概念の話題だ。(いかにも、堅い。)
 平成14年の改正で、「特定価格」は主に、法律によって特別に求められる価格に限定された。証券化不動産についてもしかり。今回の基準改正(H19.7.1より実施)でも当然同様の概念であるが、少し考えを明確にしている。
 それは、ある特定のREITの投資採算価値ではなく、標準的なREITの投資採算価値であるという点である。前者はあくまで、コンサルティング価格と位置づけられる。少しわかりづらいが、REITを小さい単位の市場(Sub Market)ととらえて、この市場参加者に“標準的な”価格を鑑定評価には期待するのである。
 一時期(いまでもそうかもしれないが)、鑑定士が出す正常価格は“どの”価格を出しているのか不明確だといわれた。大手・不動産研究所から発刊されている鑑定評価基準の英語版には、正常価格は“Market Value”と訳されている。一般的な市場価格を意味する正常価格は、当然重要だ。
 しかし、様々な経済行為をきっかけとして複雑な法律の縛りができている昨今、これを裁定するために、裁判所や市場に説明する場面が増えており、ある法律の趣旨に適った価格や、利害が及ぶ人々の最終的な担保となるような価格を出す必要性が高まっている。ここでは「特定価格」が幅をきかせてくる。
 「特定価格」を適切に求めることが必要。しかし、この前提として“一般的な市場”をちゃんと定義し、ここでの価格がわからないといけない。いわゆる“ベンチマーク”だ。
 正常価格のみでは、今の市場のニーズに応えられない。しかし、これを精緻にしないと「特定価格」がぼやけてしまう。鑑定士は、正常価格を「特定価格」の“アンカー”として位置づけ、この比較において、双方とも十分に、説明していく責任があると思う。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成19年6月6日号・完―  
 戻る  
     
 
アクセス鑑定『今日のおやつ
韓国のおやつ。ラストはやはりこれ!(辛っ)
韓国のおやつ。ラストはやはりこれ!(辛っ)