週刊アクセス
 
 
平成19年9月12日 第383号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
法及び会計制度の価格概念と鑑定評価―会社更生法の「第83条時価」の場合
 
     
法及び会計制度の価格概念と鑑定評価―会社更生法の「第83条時価」の場合
  (日本公認会計士協会編「財産評定等ガイドラインとQ&A・事例分析」
商事法務2007.8.30)
 
  『質問16 事業用不動産の第83条時価は、ガイドライン101項で規定していますが、この方法はパーチェス法の評価額と差異があるのかどうかを説明してください。』
『回答
(1)  我が国におけるパーチェス法は…具体的には時価等を基準として契約当事者で合意された売買価格であり、一般的には独立した第三者である不動産鑑定士による鑑定評価(正常価格)が用いられている。  ただし、大規模工場用地や近郊が開発されていない郊外地等の不動産は、利用可能な独自の情報や前提等により見積もらなければならず、時価が一義的に定まりにくい場合もあるため、それを時価で評価することにより負ののれんが発生する場合もある。その場合には、その金額を土地等に合理的に配分した評価額(負ののれんを相殺)も合理的に算定された時価とされている。…』(p39-40)


いわせてんか! 会計士協会が、平成16年5月17日に「財産の価額の評定等に関するガイドライン」を出し、その後の会社法施行規則の公布及び会社更生法施行規則の改正を盛り込んで実務対応した冊子からの引用である。
 法改正に伴って、その解釈を実務に落とし込むのは、実際の法運用や判例の実務が重ならないとなかなか判定しづらい。この改正会社更生法の「第83条時価」についてもそうだったようだ。記載は、事業用不動産の時価であるが、鑑定協会との協力で、ガイドラインでは鑑定評価基準との調整を図った。価格概念は「正常価格」と位置づけられる。しかし、その後の運用で、「ただし…」以下の文言を設ける必要性が出てきた。
 鑑定の側からは一定の価格概念がある。しかし、これを利用する側では、法改正に伴う場合は特に、立法趣旨と法解釈の制限を受ける。これに適うものでなければ、鑑定しても意味がない。
 「大は小をかねる」が、あまりに大きくては抽象に過ぎて、証明能力に劣ることとなる。法制度及び判例は日々動くものであり、判断・解釈が変わることもしばしばである。今回の会計士協会の「事例分析」を経たQ&Aの発表は、実務の動きの早さを示しており、鑑定士側も、これにすばやく応える必要があろう。個々に鑑定を受ける鑑定士は、これらのニーズを適格に咀嚼した上で、鑑定に当たらなければならない。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成19年9月12日号・完―  
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