週刊アクセス
 
 
平成19年12月26日 第398号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
不動産市場の良質な情報を、高度な分析能力を持った専門家が読み解く
 
     
不動産市場の良質な情報を、高度な分析能力を持った専門家が読み解く
  (清水千弘・唐渡広志『不動産市場の計量経済分析』朝倉書店、2007.11)  
  『…わが国で指摘される「不動産情報の欠如」とは、量の問題ではなく、質の問題なのである。つまり「不動産市場を読み解くための良質な情報が欠如している」ということなのである。…具体的には、不動産に関する情報の定義があいまいであったり、市場取引のなかで実感覚として得られる不動産価格情報と、公に提供されている情報との間に大きなギャップが存在したりしているのである。』

『…不動産市場に良質な情報が存在していないのであれば、高度な分析能力を持った専門家が、市場構造を解明していけばいい。逆に、良質な不動産の市場データが整備されたとしても、それを十分に利用することができなければ不動産市場は依然として不透明な状態が続く。たとえば、ある特定のバイアスや誤差をもつ情報しか入手できなかったとしても、十分な市場分析能力を有していれば、市場の状態を読み解くことができるのである。これは単純な情報の欠如の問題ではなく、「市場分析能力」の欠如の問題となる。』(はじめに、i〜ii)


いわせてんか! 良質な情報と、これを読み解く市場分析能力。いずれも、不動産鑑定士が市場に負っている責務といえる。清水氏は、不動産市場におけるこの種の専門家、すなわち「不動産価格(賃料を含む。)に関する良質な情報提供と分析を担うプロ」の必要性を説く。
 清水氏は、地価公示とリクルート住宅価格指数(RRPI)を比較して、「…公示価格…が不動産鑑定士による鑑定価格であるのに対して、RRPIは実際に取引市場で取引された価格情報をもとに加工されているという点で情報の性質が大きく異なる」(p5)とし、市場の実感覚を再現する情報を重視する。例えば、地価公示(もしくは、日本不動産研究所の発表する「市街地価格指数」)の時系列推移グラフが滑らかなのに比し、RRPIはガタガタと折れ曲がっている。これは、短期的な市場が様々な要因に左右されつつ動いているという実態を如実に示す。
 まずは、良質な情報提供である。統計分析の知見を最大限利用し、生の市場情報を効果的に収集した上で加工する。次に、これを読み解く術を市場に示す。鑑定士としては、更なる貢献をしなければならないだろう。

 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成19年12月26日号・完―  
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