|
|
||
 |
||
|
平成２０年７月３０日 第４２９号 |
||
| 今週のヘッドライン | ||
|
賃料の上げ下げを見極めるには、いつの時点と比べたらいいのか？ −最高裁がいう「現実に合意した賃料のうち直近のもの」とは？ |
||
| 賃料の上げ下げを見極めるには、いつの時点と比べたらいいのか？ −最高裁がいう「現実に合意した賃料のうち直近のもの」とは？ |
||
| （判例時報��2003（Ｈ20.7.11）Ｐ51、判例タイムズ��1267（2008.7.1）Ｐ161） | ||
| 判例時報及び判例タイムズの解説部分より抜粋。 『…（賃料自動改定）特約がされたからといって、増減額の基礎とすべき賃料や考慮すべき経済事情の変動等の事情を決めるに当たり、右特約に基づいて改定された賃料が、その改定時に現実の合意がされたと同じ性質のものと評価されることはないと考えられる。また、右の解釈を採らないとすると、賃料増減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たり、経済事情の変動等が考慮されることのない期間が生じてしまうことになり、不当な結果を招くおそれがある。』 『…（自動）増額前の経済事情の変動等を考慮の対象から除外し、増額された日から減額請求の日までの間に限定して、その間の経済事情の変動等を考慮して判断することは許されないというべきである。』 『…第一次減額請求が認容されるとすれば、これが直近合意賃料と同視されるものとして、その認容額を基準とし、その後の経済事情の変動等を考慮して判断されるべきであり…』（かっこ内は筆者。）  平成２０年３月５日・第４０８号『最高裁・賃料減額訴訟−減額の当否は、直近合意賃料を基に判断せよ』の続報として、代表的な法律雑誌に掲載された解説文を紹介した。解説も非常に強い口調で考慮すべき時点を論じているが、さて、「現実の合意」とはなんだろう？ この案件では、平成4年に契約で設けられた「賃料自動改定特約」によって“自動的に”増額改定された時点は、それにあたらないと断じている。これは、契約そのままでの「自動改定」についての当事者の“黙認”、いわゆる“黙示の合意”は「現実の合意」ではないとするもののようだ。 とすると、「現実に」の意味は“明示”ということになる。 それでは、判決や調停による改定はどうだろう？ 特に調停は、裁判にまで発展する手前で当事者がある約束を交わして調停条項に合意するため、「現実に」に近そうだ。しかし、判決は揉めた末に「判決文」にて裁断されるため、合意とは考えにくい。特に、明示の合意とは言い難い。 また、「直近の」という言葉は、考慮する時点が複数あることの暗示であり、各改定時点がこれに当たることを予定している。そして、改定時点を選ぶ場合には、それ以前の期間を考慮からはずすことになるため、本判決の厳しい目が待っている。 結局のところ、契約当初時点から増減額請求時点まで、十分に諸般の契約事情の分析をして、慎重に「直近合意賃料」を見極めることになろう。特に、契約条件や賃料改定条項について“明示”の変更・追認がない限り、「現実の合意」要件は充たしづらいと考える。契約が変更されていなかったり、調停でも金額のみの調停調書しかない場合は、当初契約時点における約定賃料額（いわゆる当初賃料）が「直近合意賃料」とならざるを得ず、当初に遡って経済事情の変動等を分析・考慮しないといけないのだろう。いやはや、大変なことである。 しかし、本判決だけでは「直近合意賃料」の全容は不明である。上記の判決や調停による改定は非常に多く、これから増減額請求を予定している方や現在係争中の方は、よくよく考えなければならない。今後の判例の動向も見逃せない。 |
||
| |
||
| |
||
| ※「いわせてんか」は、（株）アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。 | ||
| ―平成２０年７月３０日号・完― | ||
| 戻る | ||
 頂き物。GRAMERCY NEWYORKセット
|
||