週刊アクセス
 
 
平成20年10月1日 第438号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
日本における不動産デリバティブの可能性
 −信頼性の高い不動産インデックスを提供できるのか?
 
     
日本における不動産デリバティブの可能性
 −信頼性の高い不動産インデックスを提供できるのか?

  (国土交通省ホームページ H20.9.29)  
   国土交通省土地・水資源局土地市場課、H20.9.29『平成19年度不動産デリバティブの可能性とその普及・啓発に関する調査業務報告書の公表について』から。

 『不動産デリバティブについては、近年、英国や米国を中心として諸外国において様々な形で実施されるようになってきています。また、バブル崩壊を契機とした不動産のリスク資産化を背景に、今後、わが国においても不動産デリバティブのニーズが高まっていく可能性があると考えられます。これらを踏まえ、国土交通省では…健全な不動産デリバティブ市場の形成に必要な市場制度等の条件整備の検討を進めていくために本調査を実施し、今般、報告書をとりまとめましたので公表致します。』

 『平成 19年度不動産デリバティブの可能性とその普及・啓発に関する調査業務報告書 概要』より。

『【4.不動産インデックスの整備促進等に関する検討】
 不動産デリバティブの原資産として用いられる不動産インデックスは「正確性」、「継続性」、「客観性」、「安定性」、「代表性」「速報性」、「評価基準の適切性」を満たした、「信頼性」の高いインデックスであることが求められる。日本においても、様々な主体が「信頼性」の高い不動産インデックスの整備に向けて取り組んでいる。ただし、全ての要件を満たす完全なインデックスを構築することは不可能である。インデックスが市場から信頼され取引されるよう、インデックスの詳細について徹底した情報公開により透明性と客観性の向上を図るなどの取り組みが重要である。今後は不動産市場の価格情報(賃料・管理費などの市場成約価格データを含む)の収集・提供体制の構築等を通じて、不動産デリバティブの原資産としてより良いインデックスが整備されるものと考えられる。』


いわせてんか! これまでも、取引価格や賃料等、不動産市場の基礎データ収集・分析・公表の重要性は述べてきたが、「不動産デリバティブ」は、その最終形であろう。「インデックスの詳細について徹底した情報公開により透明性と客観性の向上を図るなどの取り組みが重要」とあるように、かなり突っ込んだデータの公開が前提だからだ。
 報告書には、不動産インデックス整備の方向性(94頁以下)として、

1 鑑定評価ベースの不動産インデックスの充実に向けた鑑定評価の質の向上
2 取引価格ベースでの不動産インデックス整備に向けた情報の整備提供等
3 セクター別インデックス整備のための基盤整備
4 不動産デリバティブ取引主体から信頼され取引されるインデックスに向けての取り組み

を挙げており、国土交通省の地価公示等を含んだ「土地総合情報システム」を中心として、取引・賃貸データの収集・公表を推進中である。ただ、どうも「取引」「土地」に関するものが中心で、賃料については薄いようであり、さらに賃料に関するデータについては、市場慣行やデータ状態を含めた、分析の基礎に関する問題の解決がまず必要だと思われる。
 インカムリターンの要となる「賃料」が何を指すのか? 単に、結果としての支払賃料を集めてみても、本質は見えてこないのではないか。これを抜きにして、「「信頼性」の高いインデックスであること」の条件は充たされない。

 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成20年10月1日号・完―  
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