週刊アクセス
 
 
平成21年4月15日 第466号
 
     
  今週のヘッドライン  
  鑑定士と鑑定書を、上手に使っていただく法
 ―「どのような問題を解決したいか?」から、まずはお話を
 
     
鑑定士と鑑定書を、上手に使っていただく法
 ―「どのような問題を解決したいか?」から、まずはお話を

 
 
 

いわせてんか! 鑑定士の上手な活用法をひとつ。
 一般に鑑定士は「不動産鑑定評価書」(所謂、鑑定書)を作成して、「この土地、なんぼ。」「この不動産、なんぼ。」ということを形にする専門家、と考えられている。たしかに、これは代表的な業務であるが、これだけではない。
 まずは、クライアントの方の「どんな問題を解決したいか?」を十分お聞きして、どのような解決策が適切かをアドバイスするコンサルティングがある。これを「鑑定評価の受付」と鑑定基準では呼んでいる。解決策の代表的な最終型が「鑑定書」であるが、その要素を切り取った「不動産調査報告書」や「意見書」といったサービスが存在する。調査報告は、取引事例比較法など一部の評価手法を使って、ある程度の価格を知るための内部資料、意見書は価格を出すのではなく、市場の相場や慣行、時には「今の賃料を変えるべきかどうか?」とか、他の鑑定書をレビューして「この部分には異論がある」といったレポートを作成することもある。
 クライアントが鑑定の依頼をされる動機は様々だ。ただ単に、ある不動産の登記簿だけを持ってこられて、「ここの時価の鑑定をして」といわれる。しかし、その人は鑑定書をどのような目的で、誰に提供するのか? 実は、これをきっちりお聞きしないと、最終結果として問題解決に役に立たない、いや、返って悪い結果の引き金となってしまうことさえあるのだ。
 例えば、ある会社の社長さんが顧問税理士さんから、同族会社間の不動産売買について、「じゃあ、鑑定士さんに鑑定書を書いてもらって」とだけ言って、これに従っている場合などがそうである。税理士さんが、単年度の利益のみでこれをアドバイスした場合、控える相続や事業承継、効果的な移動タイミングなど、結果として大きなもの失っているかもしれない。また、弁護士さんに言われて賃料の増額請求訴訟のために鑑定書を、といわれても、その目的が立ち退きのための手段であったり、まだ揉めてもいない段階での民民交渉だったりすると、まとまるものもまとまらず、ひどい場合信頼関係を破壊して、裁判が長期化…という場合も。
 鑑定士を上手に使っていただくには、まず、クライアントに関連する、鑑定士を利用しようといった専門家の方々(税理士、会計士、弁護士など)に、よくよくその訳を聞いていただいて、できればその専門家とともに、鑑定士を訪ねていただきたい。その上で、評価の目的と、関係する事項についての整理を行う。そうすれば、適切な解決策をご提供することが可能になる。
 例えば、保有不動産の所在・所有者・使用者等や公租公課、公的評価額一覧表や、近年から近未来の価格変動予測などを作成するだけでも、処分の難しさや価値に対する思い込みの是正、公的評価との差異など、意思決定に不可欠だが、今の関係者では気づかない要素が多く発見されると思う。ここから、問題解決のための意思決定をしていただいて、不動産評価にかかわる、いわゆる“設計図”をかく。結果的に、意見書のレポートのほうが効果的な場合もあるし、フルスペックの鑑定書でないとダメな場合もある。
 まずは、お話を。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成21年4月15日号・完―  
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