アクセス鑑定　ホームページ（ヘッドライン）



	平成２１年８月１９日　第４８４号

	*今週のヘッドライン*
	借家法の正当事由制度、継続賃料抑制ルールは何をもたらしたか？　―判例と市場を知る専門家として、もっと議論を！

	借家法の正当事由制度、継続賃料抑制ルールは何をもたらしたか？　―判例と市場を知る専門家として、もっと議論を！
	（Evaluation №34、2009.8.15号）
	特集「いま問われている不動産鑑定[士]の専門性―「価格等調査ガイドライン」の施行にあたって―」、福田秀夫氏（政策研究大学院大学教授）『不動産鑑定士に期待する』15-16頁より、表題の項で。『当時の借家法には二つの問題があるといわれていました。いったん貸したら返ってこないといわれる正当事由制度があって、判例上めったなことでは「正当事由」は備わらない。備わるとしても、立退き料として、3,000年分の家賃の提供などという和解事例がある。…二大隘路の一つが、この立退き料問題です。法外であるし、いくらになるかもよくわからない。出たとこ勝負。しかも、どんなに立退き料を積んでも、結局明渡しを認めなかった例もあります。』『もう一つの隘路が…立退き料とも連動するのですが、継続賃料の問題です。…正当事由の普通借家時代に形成された判例理論、鑑定評価理論に問題があります。…裁判官からすると「あれは、鑑定士の人達がそう言うから判決にしたまでで、私達の責任ではありません」と、鑑定士からは、「いやいや、あれは判例が認めている正当事由と継続賃料抑制ルール、それを支える裁判官のマインド前提に形成されたもの」という議論が出る。』『私からみれば、どっちもどっちです。裁判官と鑑定士で共同して作り上げた変なルールに見えます。継続賃料の抑制は、裁判上賃料増額請求権に由来していますから、根っこは判例です。ただし、差額配分法で、値上がり分を山分けするなどという基準は鑑定独自のものです。罪の深さで言えば、判例7、鑑定3といったイメージです。』『…家賃の増減額請求の紛争に絡んで、裁判所から鑑定を依頼されること自体は重要かもしれませんけれど、本来は鑑定士の先生方が、ルールがおかしいのではないか、と問題提起をしてもいい。…判例ルールの前提は不動産市場や賃料市場に問題を発生させていないのか、と専門家としてもっと議論をしてほしかったところです。』　継続賃料についてはこれまでも多く取り上げてきた。　福井氏はH10の定期借家議員立法策定の一メンバーであり、以前には国土庁で地価調査課に在籍されたこともあり、本テーマに造詣が深いといえる。法と経済融合の視点は、氏の主要なテーマでもあるようだ。　継続賃料のお裁きがなぜしっくりいっていないかの根っこがここにある。時代は変われども、その精神が色濃く残り、これを現在の紛争当事者が利用して、連綿と現在に至っている。　その意味で、福田氏の言うとおり、鑑定士が議論をする適切な立場にあると思う。借家権の鑑定評価と上記「立退料」とは、これまた密接な関係にある。しかし、正当事由の認定と金銭的給付として確定された「立退料」との関連は曖昧であり、ここに理論や算定根拠がないとすれば、当事者の納得や法的予測可能性に大きな支障となり、紛争は収まらない。　鑑定士は、「判例が…」とは言わず、専門家の視点から意見を述べることが肝要だ。




	※「いわせてんか」は、（株）アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

	―平成２１年８月１９日号・完―
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