週刊アクセス
 
 
平成21年10月14日 第492 号
 
     
  今週のヘッドライン  
  立退料の算定は難しい!
 ―鑑定士が、データ・慣行例示で、少しでも説得的にすれば・・・
 
     
立退料の算定は難しい!
 ―鑑定士が、データ・慣行例示で、少しでも説得的にすれば・・・

   
 

いわせてんか! 雑感である。
 世に言う「地上げ」。地域の有効利用の面から、例えば、ビル街に取り残された低層の木造住宅や低層ビルを建替えて、高層ビルにするといった再開発が代表的だ。その際には、現建物に居住したり事務所にしたり、住居と兼ねて生計を立てる商売をされている人々を立ち退かせることが必要となる。そこで、借地借家法という法律は、「正当事由」という項目を設けて、土地の所有者などが、借地・借家人を立ち退かせることに正当な理由がないと、これを認めないと規定する。だが、どこまでも立ち退かないのも理由がないので、正当事由を補完すべく、金銭的給付によってこれを補って認めようとするシステムを入れている。これがいわゆる「立退料」と呼ばれるものだ。
 鑑定士は、この「立退料」の一端を構成する「借地権価格」や「借家権価格」の鑑定評価も行っている。しかし、これがなかなか難しい。立退料を構成する要素として、このような法的権利の対価もあれば、引越し費用などの物理的コストや、営業をやめて外へ移らなくてはならないために発生する営業損失を補償するもの、と様々だ。
 判例においては、案件ごとにいろいろな判断が下され、統一したモノサシがないことも、立退料の算定を難しくしている一要素だ。業者の方々の“目安”は相場的に存在するが、特に店舗の補償については、次の購入者の再開発による利益などもからまって、かなりの価格差が発生しているらしい。“ブラックボックス”といっても、過言ではない。
 鑑定士は、すこしでも客観的なモノサシで、民民での、また裁判所での立退料算定を手助けする必要があろう。将来失う利益の算定や、次の利益の前取りといった概念はなかなか理屈のつきにくいものだ。代替指標や目安を例示できるなど、データや市場慣行に基づいた説明に力を注ぐ必要があると感じる。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成21年10月14日号・完―  
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