週刊アクセス
 
 
平成22年2月17日 第510号
 
     
  今週のヘッドライン  
  減損会計、再び。
 ―単に財務処理ではなく、時価と使用価値を比較して、事業そのものを考える機会に。
 
     
減損会計、再び。
 −単に財務処理ではなく、時価と使用価値を比較して、事業そのものを考える機会 に。

   
 

いわせてんか! 減損会計では、事業用不動産(固定資産)の一般的な地価や建物価格(いわゆる「時価」)と、その不動産が現在稼いでいる事業収益(使用価値)という、かなり違った次元の価値を比較する。前者の典型が市場での売却価格であり、後者は事業による収益価格といえる。
 さて、その物件を買う人の身になって考えてみる。固定資産ゆえに、土地の上には現状の事業用に特化された建物がある。単純に考えて、同種の事業者が買えば効率がいい。その際には、事業収益の還元価値である「使用価値」を基礎として、取得価格を弾くだろう。
 しかし、減損にかかる場合は「事業赤字」の継続が前提としてあり、その場合、多くの場合は同業者も使用価値では購入しない。よって、建物転用が利く場合にはその事業収益で購入となろう。転用が利かない場合は、建物を取り壊して新たな事業用途に適した建物を建てることとなり、更地価格から建物の取り壊し費用を差し引いた価格となる。
 だが、単純に「赤字」ともいえない。商圏の競合状態を考えれば、同業他社には「黒字」の可能性もある。単に、今のオペレーションがまずいかもしれない。
 いずれにせよ、時価と使用価値を、両方とも十分に分析する必要がある。完全に別のものではなく、「需要者」の値付けの観点からは“収益”の点で重なってくるのだ。事業自体の責任か立地の責任か、その責任割合も事業の行く末を考えるのに有効かもしれない。
 事業・不動産価格とも、なかなか厳しいこのご時勢。減損会計の取り扱いも、単に財務としてではなく、事業そのものを考える転機にしてもいいように思う。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成22年2月17日号・完―  
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