週刊アクセス
 
 
平成22年6月9日 第526号
 
     
  今週のヘッドライン  
  不動産売買で土壌汚染が「瑕疵」にあたるのはH15.2.15以降?
 −最高裁H22.6.1判決が示す「売買契約締結当時の取引観念」とは

 
     
不動産売買で土壌汚染が「瑕疵」にあたるのはH15.2.15以降?
 −最高裁H22.6.1判決が示す「売買契約締結当時の取引観念」とは

  (最高裁三小H22.6.1判決・損害賠償請求事件(平成21(受)17))  
  『…本件売買契約締結当時の取引観念上,それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されていなかったふっ素について,本件売買契約の当事者間において,それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできず,本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても,そのことは,民法570条にいう瑕疵には当たらないというべきである。』


いわせてんか! ひっくりかえせば、『売買契約締結当時の取引観念上,それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されて(いた特定有害物質)について(は)、本件売買契約の当事者間において,それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみること(ができるので)、本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超える(特定有害物質)が含まれていたと(すれば),そのことは,民法570条にいう瑕疵に…当た(る)というべきである。』
 不動産に関連する人々にとっては、非常に重大な判例であるといえる。
 鑑定士は土壌汚染について、鑑定評価基準により、鑑定評価において、これを必ず考慮して価格をつけなければならないことになっている。この判例は、不動産売買おける瑕疵担保責任の是非を問うものだが、鑑定士にとっては、鑑定評価における価格形成要因として、不動産市場での価格に影響を及ぼす要因の認識度という点で、これを考慮することが強く示唆されたと考えられる。
 その考慮すべき時点は、「売買契約締結当時の取引観念」の解釈で異なってくる。判例は、土壌汚染対策法及び土壌汚染対策法施行令が施行された平成15年2月15日をひとつの基準としているようである。用途や契約、当時の社会情勢や不動産市場の認識など、その他の要因との総合判断となろうが、おおきな「価格時点」だ。
 鑑定評価での取り扱いを含め、鑑定士はよくよく判決を解釈する必要がある。クライアントの方々にも、十分ご説明することが肝要だ。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成22年6月9日号・完―  
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