週刊アクセス
 
 
平成22年9月29日 第542号
 
     
  今週のヘッドライン  
  地代決定における、貸主側と借主側の視点の違い
 −土地神話崩壊・地価下落後、借主・事業収益からみた地代論が台頭

 
     
地代決定における、貸主側と借主側の視点の違い
 −土地神話崩壊・地価下落後、借主・事業収益からみた地代論が台頭

   
 

いわせてんか! 大げさな題になってしまったが、大阪鑑定士会・研究での道筋。ロードサイド店舗の地代は、最近出店事業者の事業収益配分の理屈から決まっていることが多いとの実態を調査・分析して得た推定である。
 土地の価値が高かった時代は、貸主が強かった。今はそうではない、という当然の理屈である(ただし、希少優良立地については、相変わらず地主が強い。)。研究内容は、これまでもご紹介の通り、事業者収益から見た地代決定のメカニズムである。貸主側の理屈は、土地投下資本回収としての「地代利回り」がわかりやすい。反対に、今回の貸主側・事業者へのアンケートで「地主提示額」や「更地・地代割合」と答えた企業はほとんどなかった。また、収益(売上予測等)から払える地代限度額が、業種・業態をわたっても一定のレンジに収まっているのに比較して、地代利回りはレンジが広く理屈が弱い。標準的な金融資産の利回りと比較して…といった鑑定基準の定番文句より、事業者算出地代額の説得性は高そうだ。
 一方で、業種・業態別にレンジは狭いとはいえ違いがある。例えば、店舗集積度や背後人口の質及び量は、業種・業態別に異なる。店舗事業者へのヒアリングでは、「まったく同じ、隣り合った敷地で、倍半の地代」「同業他社の出店をじゃまするため、自店近くに出店」「ドミナント効果を狙った集中出店のために、きついけど高めの地代で合意」…と、鑑定士が新規地代で出す「標準的な地代利回り」が“効かない”視点が数多く聞かれた。
 要するに、時代の変遷とメカニズム視点の変化、評価目的によって異なる理屈付けの必要性が高い、ということだ。土地に“神がかり”がなくなった今、商業は一点“収益性”で動き、地代もこの理屈を使わないと、説得力に劣ることが多くなっている。われわれ鑑定士も、店舗収益の実態をよくよく観察・分析しなければ、時代についていけないと感じられる。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成22年9月29日号・完―  
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やっと涼しくなったと思ったら、もう10月です。
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