週刊アクセス
 
 
平成22年11月24日 第550号
 
     
  今週のヘッドライン  
  会計士さん曰く、「誰がやっても、1回たりとも同じ額は出ない。」
 −株式の評価は、客観性・説得性をもたせるのが大変

 
     
会計士さん曰く、「誰がやっても、1回たりとも同じ額は出ない。」
 −株式の評価は、客観性・説得性をもたせるのが大変

   
 

いわせてんか! 先日、「事業承継」をテーマとして会計士・弁護士・税理士・不動産鑑定士と学者があつまって、各々の視点から現状と問題点を討論する研修会に参加した。表記の言葉は、その中で、事業承継を20年以上メインの業務としてやられてきた、会計士の根岸良子さんが語られたセリフだ。
 これまでも当コラムで取り上げてきたように、株式、特に中小企業などの非上場株式の評価は困難だ。主要な話題は、経営者が高齢化し、事業の円満な承継を望む中小企業に応えて、中小企業庁を中心として企画・施行された「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法、H21.3.1〜)における、民法の遺留分特例と相続税・贈与税の納税猶予、そしてこれの基礎となる「基礎財産」の中の自社株(非上場株式)評価だ。
 根岸会計士が表記の発表をされた後、パネルディスカッションでコーディネーターの今川嘉文・神戸学院大学法科大学院教授は、経営承継円滑化法4条1項2号の株価の専門家の価格証明と、中小企業庁の「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」(H21.2)の『株式評価の実施に当たっての注意事項』で、「(固定合意の)後日、非承継者から錯誤、詐欺等の違法事由や損害賠償請求を主張されないよう以下の点に配慮して行う必要がある」(かっこ、筆者。)と記載されていることを引き合いにして、「関係する専門家が力を合わせて、説得力をもった評価額の説明をしなければいけませんね。」と括られていた。
 根岸会計士は、株式評価における現場の具体例として、後継者とそれ以外の相続人(非後継者)との評価に対する言い分が真っ向から対立する場面を引用して、非後継者が相続税等の評価基準である「財産評価基本通達」による評価額を持ち出すことが多いと。理由は、当該評価が、後継者が評価する額を大きく上回る場合で、『相続税評価額でないと売らない』として、その評価額に“張り付いてしまう”という表現をされていた。株式評価に“正解がない”分、非後継者を理論で説得することが難しい。結果、後継者は当該自社株の「適正な時価」を上回る買取価格を払わなければならなくなり、事業承継後の資金が減ることになる。既存の簡便評価法である「相続税評価額」が、まず身近な税理士等から関係者に提示されることによる問題点といえるだろう。
 根岸会計士は、事業承継における自社株評価を、自社の所有財産と経営状態の把握をする術として定期的に実施し、どのような承継方法をとることがいいのかの下地作りと具体策模索の基礎とすることを提唱されていた。今後M&Aも積極的に活用することが期待される中で、株式評価の客観性・説得性は大きなキーとなるだろう。
 鑑定士は財産評価を生業とする専門家であり、中小企業の株式評価で主要な部分を占める不動産の評価の専門家でもある。今川教授の言われた「複数専門家の協力による」株式評価には、少なからぬ貢献ができると考えている。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成22年11月24日号・完―  
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アクセス鑑定『今日のおやつ
せわしい時期になってきました。体調など、崩されぬよう。
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