週刊アクセス
 
 
平成23年3月2日 第564号
 
     
  今週のヘッドライン  
  IFRS時価会計本格化をにらんだ鑑定ビジネス
 −鑑定士は、ニーズに合わせたサービスを仕組めるか?

 
     
IFRS時価会計本格化をにらんだ鑑定ビジネス
 −鑑定士は、ニーズに合わせたサービスを仕組めるか?

  (月刊不動産鑑定2011.3月号)  
   東急不動産・岩田祝子氏【IFRSと不動産の時価評価】(P30〜34)より。
 IFRS時価会計本格化を前にして、鑑定士への業務可能性を示唆。

『…私見ではあるが、IFRSに関しては、不動産鑑定士に対して鑑定評価以外の価格調査業務の依頼が増えてくると考えている。IFRS導入準備期においては、不動産の概算価格建物の耐用年数等の査定将来の価格変動予想等が業務として考えられ、IFRS導入、運用期においては、自社等で行った「鑑定評価基準による価格」に対するセカンドオピニオン時点修正といった業務が考えられる。』(P34、下線は筆者。)


いわせてんか! 先週は、国際評価基準の改正を中心に、国際的な企業保有資産の評価基準がもう少しで統一化される話をしたが、今回はIFRS導入で予測される鑑定評価関連業務の予測である。
 岩田氏のレポートにあるように、IFRS導入の前後で各々可能性がある。上場企業は、棚卸資産を除く全ての資産が時価評価対象となるが、資産の種別により時価算定方法が異なり、かつ、重要性の原則を基礎に、基本的に「自社評価」でOKである。しかし、IFRS導入当初のBS価格とその後の時価変動把握については、一定のルールに則り、ある程度外部評価専門家の証明が必要とされるであろう事から、氏のような業務委託が予想されるのである。
 氏がIFRSの特徴として挙げる、従来のアメリカ・日本基準との違いは、「原則主義」であり、定められた細かいルールを遵守するのではなく、企業自らが計算方法を決めて、これを自主的に運用していく点にある。その分、自分で決めたルールには責任が発生し、その適正性の立証責任は企業にあるため、以前より内部基準を厳格にしなければいけないし、やったことの正しさを証明するため、外部の証拠資料をより多く集めなければいけなくなった。一方で、「自社評価」容認とコンプラコストとしての費用抑制のため、フルスペックの鑑定書は、当該サービスの選択肢から落ちる。
 ここに、企業不動産評価に関する鑑定士の“新たな”役割が出てくるのだ。
 月刊不動産鑑定・本号の巻頭・鑑定セミナー「2025年の不動産市場と不動産ビジネス」では、従来の鑑定業務以外の「不動産アナリスト」「不動産アドバイザー」としての業務が期待されている。IFRSでの時価証明責任拡大、証券化等でのバイサイドアナリストとしての役割、キャップレートなど採用数値の採用根拠明示などが指摘され、いずれもクライアントニーズに対応した、一歩踏み込んだ証明機能が要求されている。
 英語、IT、ファイナンスを試験科目に!という指摘もある如く、高度な証明には高度な専門知識が必須となる。基本だが、資料を読み込み、情報を整理・加工していかなくてはならない。ニーズに合ったサービスを仕組めるかが、カギとなろう。

 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成23年3月2日号・完―  
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もう年度末の3月です。
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