週刊アクセス
 
 
平成23年3月23日 第567号
 
     
  今週のヘッドライン  
  被災者のために、国などが民間賃貸住宅を借り上げるときの注意点
 −公共と家主、双方当事者の目的とリスクを、十分契約に織り込む!

 
     
被災者のために、国などが民間賃貸住宅を借り上げるときの注意点
 −公共と家主、双方当事者の目的とリスクを、十分契約に織り込む!

   
 

いわせてんか! 先週の被災者のための一時住宅として、国など公共団体が民間の空室を借り上げて、これに供するという案。具体的にはどのようなシステムを作ればよいのか?
 まずは、政策目的のため、気持ちよく家主に拠出してもらうこと。問題は、家主との借り上げ契約であり、その借上料の適正な設定である。そこでは、国等の予算の適正な執行と、家主の収支の確保がある。契約では、契約期間内において、双方の目的・収支とリスクを納得した上で結ばれる必要があり、そのための仕掛けがいる。
 ひとつが、契約条件を前提とした鑑定評価だ。
 例えば5年間の定期借家で民間住宅の1戸を借り上げるとする。契約始期で、当該条件での市場賃料を鑑定してこれを借上料とする。ポイントはリスク分担だが、過去の“特優賃”の反省にあるが如く、「賃料下落リスク」については、「定期的な市場賃料への改定」につき、明確に契約に織り込む必要がある。また、サブリースでは最終消費者への転貸に関して「空室リスク」を織り込むが、これは被災者への居宅提供という臨時的・公益的目的のための転貸なので、ここでは織り込めない。契約終了後の「原状回復コスト」は家主との協議事項だが、政策に照らすと国庫負担が妥当か。一時金(敷金・礼金)は、原状回復コストの関連もあるが、公共団体が当事者という点でなくてもいいだろう。しかし、家主の収支の関係上、市場における実質的な収入確保は必要なため、支払賃料にプラスする必要があるかもしれない。
 空室を埋めて収支を改善したい家主と、急に住処を失った被災者への居宅供給という政策をバランスすると、ある程度、立地や環境に劣る地域や、建物競争力の劣る物件を選定することは、致し方のないことかもしれない。しかし、互いのニーズが一致すれば、合理的な予算の中で、ことが進む可能性が高い。
 関係機関や専門家は、早急に知恵を絞る必要がある。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成23年3月23日号・完―  
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このたびの震災、どこまで影響が広がるのか、見当も付きません。
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