週刊アクセス
 
 
平成23年4月20日 第571号
 
     
  今週のヘッドライン  
  世界の人々に、日本の不動産鑑定評価基準を説明するのは、難しい
 −評価基準が、日本の不動産価格を下げるリスク要因とならぬように!

 
     
世界の人々に、日本の不動産鑑定評価基準を説明するのは、難しい
 −評価基準が、日本の不動産価格を下げるリスク要因とならぬように!

   
 

いわせてんか! 国際的な鑑定評価について、その関連業務を行っている鑑定士さんとお話したときのこと。
 これまでも当コラムで取り上げた「国際評価基準(IVS)」。この6月までには改正基準が出る予定だが、これに先立って今月、イギリスのRICS(英国王立勅許鑑定士協会)の基準書、通称“RED BOOK”が第7版に改定された。主要な規定につき、前版に“Practical Statements(実務規定)”とされていたものが、“Valuation Standards(評価基準)”に格上げされ、全世界の加盟国で約30万人がこれに従って資産評価を行うことになる。RICSは早くからIVS基準を受け入れ、これを丸まま飲み込んで基準づくりをしてきた。今回もそれがさらに進み、その副題に“Global and UK”とつけるまでに、比較可能な共通基準として仕立て上げられてきた。IFRS(国際会計基準)の価格定義“Fair Value”にも対応する。
 その鑑定士さんのお話では、外国から日本の不動産の評価を依頼された場合、“RICS Compliance”(RICS基準に準拠した鑑定書作成)や“IVS Compliance”(IVS準拠)が要求される。その際、日本の不動産鑑定評価基準との差をまず説明しなくてはならず、日本でこれを発行しようと思えば、日本基準でも作成しないといえない。さらに、価格定義や手法の中身について、各々の基準で大小の違いがあり、鑑定目的に資するためには、いずれの基準がよりいいか?が判断の分かれるところである。少なくとも、重要な評価要素や項目の差異が明確にわかる、公的な(権威ある)説明書がないと苦しい、と。ちなみに、いずれの国際基準も“Local Rules”(現地基準)を認めており、差異さえはっきりしておけばよいのだ。
 ヒト・モノ・カネの流れは確実に世界化している。不動産も例外ではなく、人口構造から、内需拡大が殆ど見込めない日本では、不動産の買い手もおのずと海外になってくるだろう。最近の“英語流行”は、企業を中心に、この流れの表れではないか。一時の「ジャパン・プレミアム」ではないが、資産評価基準が不動産収益還元の利回りを上げる、つまり不動産価格を下げるリスク要因にならぬよう、世界の人々に説明できる基準を作らなければならないと思う。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成23年4月20日号・完―  
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