週刊アクセス
 
 
平成23年9月14日 第592号
 
     
  今週のヘッドライン  
  こんな時代の賃貸市場の乗り切るために、地主・家主がデータ分析を!
 −再び、一時金最高裁。 鑑定士もお手伝い。

 
     
こんな時代の賃貸市場の乗り切るために、地主・家主がデータ分析を!
 −再び、一時金最高裁。 鑑定士もお手伝い。

   
 

いわせてんか! 賃貸住宅を借りるとき、「賃料」のほかに、「敷金」や「礼金」、関西であれば「敷引」、関東なら「更新料」と、一時金と呼ばれる金銭を支払う。共益費や管理費、○○会費といった名目の付帯費用が発生することも多い。入居者のとってみれば、これらの賃貸に係る一切合財が、借りるための「コスト」となる。これまで当コラムで紹介してきた、一連のいわゆる「一時金最高裁判決」は、京都で起こされた「更新料」と「敷引(金)」が不当に高額ではないか、として消費者契約法10条に違反する、として訴えられたものの最終結論だ。結果最高裁は、いずれの一時金も「高額に過ぎない」として、一時金条項を有効とした。
 要点は、「契約書に明記されていること」と「地域相場に比較して高額ではないこと」である。「更新料が1年に2ヶ月」という、ちょっとこれは取り過ぎでは?と思われる案件まで全てOKとしたのは、NOにして、貸金訴訟の様に過年度に遡って返金となると、少子高齢化、供給過剰で空室が増え、賃料が下がり、ただでさえ収支が厳しい家主が破綻する、という事実があったろう。大手貸金業者と異なり、相手方が個人を多く含む地主・家主であった点がひとつ。
 もうひとつは、今後、このような賃貸市場が継続するなら、「高額に過ぎる」一時金など、経済のルールでとれないだろう、と思われる点である。実際に、「ゼロ・ゼロ」と呼ばれる一時金のない物件も増加しており、とっていてもその総額は徐々に下がってきている。当初一時金・取り切り一時金の減少・消失は、転居コストの低さに繋がり、すぐに引っ越されてしまう。空いたら、やはり汚れたところはきれいにしてから募集をかけなければならず、たんびにクリーニングコストがかかる。そういう地域の募集賃料が厳しいのは当たり前で、結局損益分岐を割り込むことに…。一般消費者・国民が相手なのだから、今のご時勢、当初に「バーン」と一時金が払える人間も多くはなかろう。大阪の不動産鑑定士協会のデータ分析でも、上記判決の下級審が現れ始めたH20頃から、関西地区で「敷引」から「礼金」への名目シフトと、賃料月数の減少が、明確に現れた結果がある。
 しかし、最高裁が消費者契約法の趣旨を重んじ、地域の相場から大きく外れない妥当な賃料・一時金を当初の契約時に入居者に十分説明し、契約書で「明確な合意」をしなさい、と示唆した点は考えどころである。相場をどう示していくかは、そのデータを持つ賃貸住宅管理業者や仲介業者、地主・家主の供給者側だが、自らの収支を冷静かつ客観的に検討する“寄る辺”としても、自らのデータ集積による相場の適切な把握は、もはや欠かせない要素だろう。
 こんなとき鑑定士は、不動産市場を第三者として公平・公正に代弁する専門職業家として、お手伝いすることが可能だろう。また鑑定も、変わりやすい、わかりづらい不動産市場を早く読むツールとして、賃貸住宅市場のデータ結果を利用する意義は大きい。是非、コラボが望まれる。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成23年9月14日号・完―  
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またまた夏に逆戻り。運動会シーズン、“熱中症”対策は怠りなく。
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