週刊アクセス
 
 
平成24年2月22日 第615号
 
     
  今週のヘッドライン  
  もし、依頼者が賃貸借契約の重要な事情を話してくれなかったら・・・
 −私的鑑定は無意味になり、債務不履行責任を負う場合も!?
 
     
もし、依頼者が賃貸借契約の重要な事情を話してくれなかったら・・・
 −私的鑑定は無意味になり、債務不履行責任を負う場合も!?

   
 

いわせてんか! 今回は、賃料増減請求に関連して鑑定を受ける鑑定士の立場から考える。
 賃貸借契約当事者の契約に係る事情を勘案しない鑑定は、裁判所で受け入れがたいとすると、これまで新規賃料をベースに鑑定を書いてきたやりかたを変えなければならない。契約書等は横目では見ていたが、これを鑑定額に反映する場面は少なかった。これからは、当初契約から現在まで、賃料額や改定特約を主とした契約条件に係る事情を、当事者に対して十分に聞かなければならない。
 そこで、当事者の一方から依頼されるいわゆる‘私的鑑定’で問題となるのは、「ちゃんと資料をくれるのか、事情を話してくれるのか?」という当事者主義である。鑑定を依頼してくる当事者や弁護士などの代理人は、紛争を起こすほど相手方に対して怒っているのだから、自分に不利な証拠や事情を自ら進んで提供して、相手に‘塩を送る’ようなことはしないだろう。そうすると、賃料額を決定した重要な要素たる契約事情が依頼主の主張に不利に影響する場合、これがわかる資料を隠したり、関連する事実を話してくれなかったりする可能性は高い。調停や裁判などで、これら重要な契約事情が相手方によって明らかにされた場合、これを考慮せずに書いた鑑定書は、無意味なものになってしまうし、調停人や裁判官の信頼も大きく失われるだろう(鑑定の証拠価値の毀損)。依頼者は、「そうなると知っていれば話した」といって、鑑定士に債務不履行による損害賠償を起こすこともあるかもしれない。
 依頼の過程を考えれば、至極もっともなことである。であるなら鑑定士は、こうなることを事前に依頼者に説明し、「資料を出してくれなければ、鑑定自体が意味なしになりますよ」と、釘を刺さなければならない。もらった資料やヒアリングした内容は全て鑑定書に明記して、これを前提として鑑定書が作成されたことを証明するのは必須である。
これでやっと、専門家としての責任が果たせたことになろう。(つづく)
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成24年2月22日号・完―  
 戻る  
     
 
アクセス鑑定『今日のおやつ
もう、2月が終わろうとしていますね・・・(汗)
もう、2月が終わろうとしていますね・・・(汗)