週刊アクセス
 
 
平成25年1月30日 第654号
 
     
  今週のヘッドライン  
  最高裁 借地借家法11条の趣旨は「事情の変更」だけじゃない
 −「土地利用の長期安定」で、増減額請求の当否は裁判所が決める!
 
     
最高裁 借地借家法11条の趣旨は「事情の変更」だけじゃない
 −「土地利用の長期安定」で、増減額請求の当否は裁判所が決める!

  平成25年01月22日最高裁三小判決)  
  「借地借家法…の借地に関する規定は,建物の保護に配慮して,建物の所有を目的とする土地の利用関係を長期にわたって安定的に維持するために設けられたものと解される。同法11条の規定も,単に長期にわたる土地の利用関係における事情の変更に対応することを可能にするというものではなく,上記の趣旨により土地の利用に制約を受ける借地権設定者に地代等を変更する権利を与え,また,これに対応した権利を借地権者に与えるとともに,裁判確定までの当事者間の権利関係の安定を図ろうとするもので…ある。」
「…本件において事情変更の原則により地代等の減額がされるべき事情はうかがえず…」


いわせてんか!  H20.2.29にサブリース契約の判決が出てから5年ぶりの賃料増減額に関する最高裁判例が出た。地代等に関するものはH16.6.29以来、実に9年ぶりである。
 案件は、S63年に当初契約を結んだゴルフ場の借地である。H18に借地権者が変更となり、H19に地代減額の請求をした(なお、当初から地代等の金額は変わっておらず、請求した減額割合は4割程度。)。
 原審である福岡高裁・宮崎支部は借地権者の地代等減額請求を、次のような理由から容認した。「借地借家法11条の立法趣旨の基礎にある事情変更の原則や契約当事者間における公平の理念に照らせば,建物の所有を目的としない本件契約においても同条1項及び3項ただし書の類推適用を認めるのが相当である。」
 この判断を最高裁は、上記のような理由から全面否定し、一切減額を認めないと自判をした。コース等建物の所有と関連するような態様で使用されていない部分の借地借家法11条の類推適用を認めないことも初めての判断だが、バブル期からH18年の間で「事情変更の原則」における「地代等の減額がされるべき事情」がないとする判断は、鑑定士としては衝撃が大きい。
 また、その根拠として、借地借家法の趣旨を改めて定義し、同11条の地代等増減額請求権の解釈を明示した。それは、従来からの「形成権」的解釈とは異なっているように思われる。賃貸借契約の当事者は、11条で増減額請求はいつでもできる権利を持つが、その権利行使の要件が充足されているか否か(請求の当否)の判断は、賃料額決定の要素とした事情などの契約事情を総合的に考慮して、最終的に裁判所が確定するとするこれまでの最高裁の判断をまとめたかのようだ。
 平成15年以降、一連の賃料増減額最高裁の9番目に位置する本判決。背に腹は変えられない昨今の経済情勢から、多量の賃料減額紛争が進行する中、地価や賃料相場の変動といった経済「事情の変更」に応えるより、賃料額決定要素など契約事情(内容、条件)を重視して「建物の所有を目的とする土地の利用関係を長期にわたって安定的に維持する」ことに舵を切ったとみたが、どうだろう。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成25年1月30日号・完―  
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1月はもう終わり。時間が早く感じます。
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