週刊アクセス
 
 
平成25年5月1日 第666号
 
     
  今週のヘッドライン  
  「これでバッチリ!」「俺にまかせろ!」型の専門家の信頼度は如何に?
 〜不利益やリスク、選択肢を説明しないと専門家責任となる!?
 
     
「これでバッチリ!」「俺にまかせろ!」型の専門家の信頼度は如何に?
 〜不利益やリスク、選択肢を説明しないと専門家責任となる!?

   
 

いわせてんか!  相続税改正をうけて、巷には節税指南書があふれている。昨今の特徴は、相続税と相続を分けて、円満な相続をワンストップで紹介するノウハウ本だ。それぞれの分野のプロである税理士と弁護士が執筆しているものが多い。比較的若い専門家が、わかりやすい状況を想定して、自らの何百に及ぶ相続(税)関与案件の経験から語りかける。今の日本の年齢的な社会ニーズに応えたものだ。
 しかし、従前のような、各々の専門分野だけに特化したもの(その結果、他分野で問題が生ずる。もめる、税金が必要以上に高くなる、など。)ではないとはいえ、周辺分野について十分なワンストップというには、いささか疑問が残るものがある。それは、リスクがあるであろう専門外分野について、外注をしたほうがいいとの記載が薄いからだ。もめごと、訴訟、追徴課税…彼らは責任をとれるのだろうか? 当然、提携する専門家もいるだろうが、世知辛い話、“取り分”を多くしようと、きちんとしたリスクヘッジの効く外注となっているかどうかが疑わしい。
 例えば、土地評価。相続税の課税標準たる土地の評価額を効果的に減額するノウハウを提供している。角地の広い土地を二つに分割して、高い正面路線価に接する土地を減らし、低い方も相続後の売却で実勢価値との差額を抑えるという。しかし、時代時代で土地の需要は変化する。それは売れ筋の規模や町の力に左右され、早めから対策をすると、バブル崩壊やリーマンショックといった時代のジャンプをまたがないとも限らない…といった、もう一つ突っ込んだ専門情報とリスク情報を伝えられるのか? 今すぐに結果が出ない、特に不動産価格といった変動リスクをもつ財産の活用指南には、当該情報の事前開示が必須であり、節税効果は薄いがリスクの少ないその他の選択肢も示したうえで、クライアントが自ら選択したという過程が必要であろう。
 近時の最高裁でも、過払金取戻しを受託した弁護士について、「…債務整理に係る法律事務を受任した被上告人は,委任契約に基づく善管注意義務の一環として,時効待ち方針を採るのであれば,Aに対し,時効待ち方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,回収した過払金をもってDに対する債務を弁済するという選択肢があることも説明すべき義務を負っていたというべきである。」(最三判平成25年04月16日(平成24(受)651))と示して、クライアントからの弁護士の説明義務違反による損害賠償を認めた。
 ネットで情報があふれ、それなりの指南本も山積みの今だからこそ、正しい選択は困難になったともいえる。「これでバッチリ!」「俺にまかせろ!」型よりも、「いいことも、悪いこともある」「あなたはどれを選びますか?」型の専門家を選ばれた方がリスクが少なくなる、と勧めておこう。
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成25年5月1日号・完―  
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