週刊アクセス
 
 
平成25年12月30日 第684号
 
     
  今週のヘッドライン  
  平成25年は、専門職業家に厳しい年だった
 − これから法的責任が大きくなる。 弊社は、これに対応する。
 
     
平成25年は、専門職業家に厳しい年だった
 − これから法的責任が大きくなる。 弊社は、これに対応する。

   
 

いわせてんか!  平成25年が、終わろうとしている。
 この週刊アクセスを通じて、今年一年を振り返ってみると、鑑定士をはじめとした専門職業家の公の責任が、正面から問われた一年だったと考えられる。

 これまで本コラムでご紹介した最高裁判例のうちの2つ、H25.3.28の三重・し尿処理関連施設の土地賃借、H25.7.12の固定資産税・土地の評価の争いは、鑑定士にとって非常に重い判決となった。
 前者は、地方公共団体の公金支出に対する住民訴訟だったが、住民側独自の鑑定意見書は、原審である高裁によってお墨付きを与えられた(不動産鑑定評価基準に則った、まっとうな)ものであったにもかかわらず、地方財政法や地方自治法に対する違法性(地代の不当な高額性)を証明する専門家の知見とは認められなかった。
 また後者は、納税者のみならず、地方公共団体双方から出された独自の鑑定意見書による算出価格はいずれも、地方税法上の「適正な時価」の違法性を判断する枠組みのなかには組み込まれなかった。

 鑑定士をはじめとした国家資格者たる専門家は、その根拠法に謳われた存在意義を実行するために存在する。これまで、もめごとの最終舞台である裁判所において、土地の評価に関する専門的知見は、多く鑑定士の鑑定に寄ってきた。しかし、今年のこの2件の最高裁はいずれも、該当する法律に対して、最高裁の新たな違法性の判断枠組みを打ち立てて、現在の鑑定書の証拠価値を認めなかった。
 一方で、現物出資の鑑定書などで株主へ被害をもたらした鑑定士(背景として、訴訟の当事者となった)が、処分庁である国土交通省から「不当鑑定」による懲戒処分を受け、登録取り消しまではいっていないが、長期間の業務停止を余儀なくされた。
 これは、不動産鑑定士にとって、非常に憂えるべき事態である。

 現在、不動産鑑定士の所管官庁である国土交通省は、鑑定書作成及び不当性の判断基準としての「不動産鑑定評価基準」の改正手続きを踏んでいる。任意の意見募集(H25.12.20〜H26.1.20)は以下の如くである。  

 パブリックコメント(電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ)
 「不動産鑑定評価基準等の改正(案)に関する意見の募集について
 

 ただこの改正案に、上記最高裁の示した判断枠組みに、不動産鑑定が有効に応える術は書き込まれていないようである。  

 これからの鑑定士及び鑑定基準は、これまでの鑑定法による専門的知見の提供(従来型の専門性)を脱皮して、次のステージに進まねばならないようだ。そのひとつの姿が、法や法律、裁判所が求める“今の法的必要性に応えた専門的知見”であろう。鑑定関連法や鑑定基準は、まさにこのニーズに応じるべく改正されなければならない。
 ただ、法や基準の改正は、その動きが遅い。その間にも、社会・経済情勢の急激な変化に伴う法的責任は、刻々と増加している。  

 弊社は、これに対応できるよう、日々研鑽を怠らないつもりである。その取り組みは、この“週刊アクセス”でご披露していく。  来年も、弊社及び本コラムに、ご注目ください。

 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成25年12月30日号・完―  
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本年はご愛読、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
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