②少子高齢化社会と地価

《人口ピラミッド》
国の年齢人口をグラフにまとめた図を「人口ピラミッド」と言いますが、なぜピラミッドというのでしょうか?
それは、戦後まもなく人口統計調査をしたところ、ベビーブームと呼ばれる昭和22~24年の爆発的な人口増を最大数として底辺に、高年齢ほどその数が三角錐のように減少していく様が、まるでピラミッドのようだから・・・。
しかし、2020年のそれは、全くピラミッド型ではなく、団塊世代の71~73歳を最大数として、次に団塊ジュニア世代40~43歳が次の節目となり、後は若年ほどその数が減少していく様は、「釣鐘型」であり、およそピラミッドとは似ても似つかないものです。
さらに30年後の2050年には、団塊ジュニアを最大数として、「西洋風棺桶型」となると予測されています。生産年齢人口層(16~64歳)では、1人で1人の老人と15歳以下の子供1人を養う時代がやってくるのです。
これが少子高齢化問題です。

《人口=需要、限られた土地=供給》
ところで、住宅を買うのは、ある程度資金があり、ローンを組める確かな収入源があること、何より家を買いたいという必要性と願望を持ち合わせている人で、それを最も欲している世代は、概ね28~43歳でこれを第1次取得者(初めて家を買う者)と呼ばれています。
この世代は、まさしく住宅需要者であり、それより高齢の世代は、住宅の買替え層が多く、2次的需要者です。実はこの世代が多いか少ないかは地価上昇に大いに関わっています。
昭和62年~平成2年のバブル時代に、団塊世代は、第1次取得者でいうと40歳前後にありました。また、平成27~30年の大都市を中心とした地価上昇では、団塊ジュニア世代は、やはり40歳前後となっています。
この世代の多くは、大都市を中心とした勤務地を通勤圏とするエリアを中心に住宅取得するため、利便性が高く、優良住宅地域にある住宅地は供給量が限られ、地価上昇を招きます。
一方、それ以外の遠隔地エリアは、人口の減少により、地価下落は止まることを知りません。まさしく、経済原則にいう「需要と供給によって価格が形成」されるのです。

《都心回帰現象》
さらに、東京や大阪などの大都市圏では、子育てが終わり、「終の棲家」を求める2次的取得者は、「都心回帰」として、郊外住宅を転売して、都心のマンションに買い換えて、マンション敷地は地価高騰となっています。
この都心回帰は、この10年間で、大阪市北区、中央区などでは、+30%の人口増となっており、地価上昇に拍車がかかっています。

《地価の堅調なエリアと地価下落し続けるエリア》
さて、これまでの地価のメカニズムを整理し、別途、実証的な分析も踏まえて、概ね次のような結論に達しました。
地価の堅調なエリアとは、全体人口に占める割合の中で、まず、生産年齢人口が多いこと、次に第1次取得者が多いこと、そして、20~40歳程度の女性が多いことが挙げらます。
逆に地価下落し続けるエリアとは、その逆で、人口分布グラフが棺桶型ないし、逆三角形型となっているところである。いわゆる「限界集落」化しているところです。
そしてこれは、市町村単位もさることながら、町丁目単位でもその傾向はよみとれます。
よく、「この先、住宅地は上がりますかね?」等と質問されることがありますが、不動産鑑定士は、将来予測について明確な解答を持ち合わせていません。言えることは、年齢別人口分布状況をその市町村ごとに、さらにできるならば、町丁目単位で周辺地域の同状況をみてみれば、ある程度の傾向はつかめるかもしれないということです。

《土地と人間との関係》
最後に、所得格差が昨今急激に広がっていると社会問題となっていますが、土地利用も、都心の地価の堅調な動きと、限界集落の恒常的な地価下落は、人間と同じように土地もその地価格差が広がっており、勝ち組と負け組、動産と動産というふうに、「土地と人間との関係」は密接に関連し合っていることが、少子高齢化問題を考えた時、顕在化される現象となっています。
以上

(令和元年5月8日執筆)

2019年05月08日